1561 校内三分の計編 171
(よし、今のうちだな)
僕はそんなことを想って、窓を見る。ここは二階だが、二階程度なら、僕なら下りれる。廊下側にはすでに人がいっぱいでそちら側から逃げることは不可能だし、なら窓から逃げるしかない。でも問題は生徒会の奴らだった。
さすがにこいつらの前で窓から飛び降りたら、この場は逃げられても、そのあとがね。生徒会からは結局逃げられないからね。学校をやめない限り。そしてやめるなんてことはできない。だってせめて高卒では居たい。昨今は学力至上主義も色々と社会の変化によってそこまででもなくなっては来てるが……高卒は大前提じゃん。そこはたぶん変わらない。
そして生徒会というのは、その高校の最高権力者集団なのだ!
いや、この学校だけだと思うけどね。普通は生徒よりも教師の方が立場的にはどうあっても上だ。寧ろ逆転なんかしたらそれこそ学校崩壊みたいな? この学校がなんとか奇跡的なバランスを保ってるだけで、異常なんだよ。
「どこ行くデススオウ?」
この野郎……クリスの奴が僕の怪しい動きに気づきやがった。目ざとい……さすが女狐だな。てかさっきのキス……めっちゃバズってるぞ。学校のSNSでの反応がやばいことになってる。僕がクリスに膝枕されてるのもやばかったけど、勢いはさっきのキスの方があるな。
まあ間近で見てたけど、かなりエロかったしな。離れるときとか、唇の間に糸引いてたし……普段は小生意気な生徒会の彼女がめっちゃ女の顔になってたし。
あの子結構かわいいとは思うが、普段は権力を笠にガミガミうるさいからね。本人にはそんなつもりはなく、ただの正義感なんだと思うが、言われてるほうはうざったいって思うじゃん。
そういうただのうるさい存在って印象だけだった彼女が、さっきのクリスとのキスで女になってたのである。みんなたぶんこれから彼女を見る目が変わるんじゃないだろうか?
まああの子、結構鈍そうだから気づかなそうな気もするけど。
「大丈夫ですか? もう一度やりますデス?」
「や……やりません。もう二度と……」
あれ? なんかクリスにからかわれてる彼女めっちゃ可愛い。多分僕以外にはも同じように思ってる奴はいっぱいいるだろう。
「そうですか、残念デス」
「キスで、ごまかされませんよ! こんなことして……なんのつもりですか? あなたは生徒会選挙に立候補してるんでしょう。貴方なら会長のライバルになれるって思ってたのに……幻滅しました」
「まだ摂理がいますよ?」
「彼女は確かに要旨はぴか一ですね。でもそれだけで、我らの会長は揺るぎませんよ」
「不思議デス。貴女は日鞠に苦戦してほしいんデス?」
まあ確かにクリスが疑問に思うのもわかる。彼女はクリスは認めてるけど、どうやら摂理の事は認めてない。会長の……日鞠のライバルにはなりえないといってる。でもクリスなら……ってそれはつまりは日鞠に苦戦してほしいみたいだ。
「私は……ただ、会長に楽しんでもらいたいだけです。あの方は本当に凄くて、なんだって出来て、ずっと先を歩いてる。でもだから刺激とか足りないんじゃないかって……会長が会長じゃなくなるなんて、微塵も思ってないですけど、でもただの予定調和で進むなんて面白くもないでしょう?」
「そうですね、面白くないのはいけないデス」
そういってうんうん頷くクリス。こいつ……マジで僕を巻き込まないなら勝手にやれって思うんだけど……もうがっつり巻き込まれてるんだよね。