1550 校内三分の計編 160
「一応聞いといてやるけど……何する気だ?」
僕は直観に従って、身構えながらクリスのやつに一応聞いた。だってゾクッとしたもん。周囲もなんか何かが起きるんじゃ……ってことで、すでにスマホを向けてやがる。てか最初は誰しもが、さりげなく……だったじゃん。
今やもう堂々とだよ。しかも廊下にいるやつとか、摂理ラブ的なハチマキしてない? ここでクリス派の息の根を止める気か?
「そんなのスオウだってわかってるんじゃないデス?」
なんか……うん、なんだろう。クリスのやつは僕の方を見つつ、足を組みなおし、机に腕を載せて、それを支えに手のひらに顎を乗せた。そしてちょっと顔を傾ける。
空いてる右手は箸を持ちつつも口元に手をもっていき、その形のいい唇の口角をわずかに上げて微笑んでる。長いまつげが瞳をちょっと伏し目がちにしつつこっちをみてて……ちょっとこっちを見上げる角度……反則か?
僕じゃなかったらきっと恋に落ちてるだろう。それくらい様になることをやってくる。女の武器をマジでわかってるよ。まあ今までもこうやって女の武器を使ってきたんだろうなってわかる。慣れ感がすごい。
「変なことに協力する気はない」
「摂理の為ですよ。実際、スオウはどっちの味方なんですか? とりあえず票は日鞠に入れるとしても、気持ちの方デス」
「気持ちって……」
そんなことを言われても困るというか……実際、生徒会長って立場に興味なんてないからな。
「スオウの中では生徒会長って日鞠ってイメージなんじゃないですか?」
「それは……まああるかも?」
「それって、日鞠に勝ってほしい……ううん、もう日鞠が負けるわけないって思ってるって事じゃないデスか?」
「う……」
グサッとくることを言ってくる。実際、会長=日鞠だし、それ以外なんて今考えられない。それは事実だ。僕は興味ないとかいいつつ、日鞠が負けることは考えてなかった。
「それはあまりに摂理が可哀そうじゃないですか? 摂理が何のために生徒会長選挙に立候補したか、わかってますよね?」
「うんうん」
おい、秋途テメェはなんで納得してるんだよ。こっちの味方しててくれない!? この机には三人しかいなんだから、こっちが少数派になるじゃん。
それに摂理が生徒会長選挙に立候補した理由って……なんの為っていわれても……
「摂理はスオウが好きです」
「直球だな」
「わかってるでしょ?」
「…………」
否定はしない。僕はべつに鈍感系じゃないし。寧ろ鋭いほうだと思ってる。それに好意事態は普通に感じれるし。それに状況も……ね。なにせ摂理に取ったら僕は囚われてた摂理を救い出したみたいな感じだ。
そうなるとあれじゃん。王道的な……さ。だから下地はあると思ってる。でもまあだからこそってのもあるけどね。
「状況がそうさせただけで、もっと知ると目を覚ますかしれないだろ?」
「そうですね……状況に恋したのかもしれないデス。でも、だからって今、日鞠がスオウのことを好きなのは事実です」
めっちゃ正論をまっすぐにたたきつけて来るクリス。その青い瞳から僕は逃れることができない。