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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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今一度の扉

 僕はLROに帰って来た。共に戦った仲間の元へ。喜んでくれる仲間達と少し離れた場所にはアイツがいる。割と平然としてる様に見える、敵の筈だったアイツ。そんな中、セツリが消えて行ったあの扉が光を放って開きだす。


 風に乗って舞う天扇。蒼天のどこまでも上がっていって一瞬見失ったそれは、手を伸ばしてる誰かの元へと目指して落ちて行ってた。

 ヒラリフワリと不規則に落ちていく天扇を、それでもその人物は迷い無くその手に治めていく。それが誰……なんて野暮な事は言わないでいい。

 その姿は、記憶から風化させるには早すぎる。だってそれは……


「柊……」


 間違いなくその人物。氷のドレスはどこへやら、今は出会ったときと同じ格好をしてる。まあそれでもドレスっぽい事に変わりはないんだけど、もっと驚愕したのはアイツ普通に立ってるんですけど! って事だ。


 傷なんて見あたりもしない……いや、こうやって見てると、アイツと戦ってた事自体が夢の様だったとさえ思えてきそうな程だ。

 だけどまあ……それは間違いなく夢なんかじゃ無かったとこの体が証明してるよ。だってアイツ見ただけで胃が痛い。


 これはきっと死闘の果てのトラウマだな。てか、自分なりにアイツを跡形も無く消したとかって思って、それなりに後悔してた筈だけど、今見たらそうでもない。

 寧ろ、あんな普通に立たれてたら、後悔したことを後悔する。何アイツ……反則にも程があるだろう。確かに僕の攻撃は届いてた筈なのに……一体どんな手を使いやがった?


「スオウ……良かった……ホントに!」

「うおっ」


 起きあがった僕を抱きしめてくるリルレット。その感触は柔らかくて、暖かい……生きてるって事を実感させてくれる様な温もりだ。


「体は大丈夫なのか?」


 続いてそんな事を聞いてきたのは、比較的にクールにしてるヒーラー(男)だ。だけどそう言われてみて気づいたよ。

 あれだけ辛かった僕の体が、今は何ともない。暴走仕掛けてたあの力も完全に無くなってるみたいだ。それに普通に体を起こせたし、腕も足も、感触を確かめる様に動かせる。


「大丈夫……みたいだ」


 僕はそう言って、抱きついてるリルレットの頭を撫でてやる。別に深い意味は無いけど、何となくそうしたかった。自分の為に本気で泣いてくれる女の子を放ってはおけないだろ。

 それにやっぱり、世話になったし。


(あれ?)


 でもここで僕はおかしな事に気づいたぞ。何で……みんなアイツの事を気にしてないんだろう。それはどう考えてもおかしな事だ。

 だってついさっきまで戦っていたんだぞ。それに敵なのはまだ変わってない筈だろ。それなのに、柊がそこに居るのにこれでいいの? って感じだ。

 まあ、今の柊からは敵意って感じは全然……


「お礼は?」

「は?」


 訂正、めっちゃ凄んだ声で言われたよ。めっちゃ敵意むき出しだよ。何アイツ、まだやる気なの? 確かにピンピンしてるように見えるけど、こっちに勝ち目はパーセンテージで表せない程けどさ。


「ちょ、ちょっとアンタね! 幾ら助けてくれたからって、元はアンタのせいなんだから、お礼なんて求めないでよ!

 逆に遜って『これまでの非礼をお許しください』くださいくらい言ってよね!」


 リルレットが涙目で柊を見据えてそんな事を言った。って助けた? アイツが、僕を? 何だかにわかには信じれない発言だ。


「ふん、人間風情がこの私に謝罪を求めると? 甚だおかしな事を言うのねこのチンチクリンは。自分の見窄らしい体じゃ役に立たないって分かってるのかしら?

 それならそうと言いなさいよ。まあどっちにしろ、私は謝る筋合いなんてないのだけどね。元々なんて言い出したら切りがないのよ」


 饒舌な柊は、やっぱ刺々しい感じだ。てかチンチクリンって……見た目はお前の方が子供だろうと言いたい。喋り方がアレだから、大人びて感じるけど、柊は見た目十四くらいだ。

 様は女子中学生だな。それに比べてリルレットは高校生な感じはする。見た感じと感触では、完全にリルレットに軍配は上がってるぞ。

 だけどそんな事を言える分けもなくて、チンチクリン言われたリルレットは結構切れてる?


「チン……チクリンですって? 私はこれでも育って来てるの! 確かにちょっと遅いかな~って自分でも思うけど、アンタに言われたくない!

 どうせ一生チンチクリンの癖して!」


 何、それは柊が人じゃないから成長しないだろうって言いたいのか? てか何かこいつら……


「成長を体でしか見れないなんて、これだから人間は。何貴女? 将来体を売って稼ぎたいの? まあお似合いかもね。貴女は頭も弱そうだし」

「な! 頭は私普通だし! 中の上くらいにはいるもん! それより体を売るとか……そんな卑猥な事考えてるのアンタ? 涼しい顔して、何を妄想してんのよこの変態!」

「変態なんて侵害ね。私はただ、頭も弱い貴女の将来を指してあげただけよ」

「だから弱くないってば!」

「あらそう? もっと真剣に受け取りなさいよ。私が人間風情に為になるアドバイスあげるなんて希よ希。大体中の上って半端なのよ。

 そんな所で満足してるから、貴女モブキャラなのよ。やっぱりあのちっこいのがお似合いよ」

「な……なんの事よ!?」


 何の事なのかはこっちが言いたいな。何の話してんのこいつら? いつの間にこんな仲良くなったんだよ。リルレット以外のみんなはそれなりに警戒してる様だけど、それも最低限って感じ。

 柊はもう、戦う気がないからこんな風に喋ってるのかも知れない。そしてそれをみんなは知ってる? 助けたって言ってたし、そこら辺を聞きたいんだけど……


「だからあのちっこいの居たでしょ? 貴女が執着してたモブリ。私が柱に変えたあの哀れな子よ」

「エイル……そうよ……ずっと確かめたかった! エイルはちゃんと生きてるんでしょうね? 無事なんでしょうね?

 もしもそうじゃなかったら……例えどんな実力差があったとしても、私はアンタを殺す!」


 ある意味ほのぼのしてた筈の空気が一変。リルレットは強い眼差しで柊を睨みつけてる。だけどそれはしょうがなく、当たり前の事。

 事を起こした奴から、哀れな子とか言われたら怒るよそりゃ。それもリルレットはいつもエイルと一緒だった訳だしな。そして無事なのか知りたくて……助けたくて一緒にがんばってきたんだ。


 だけどこの状況でその台詞は……とも思った。こっちは満身創痍なのに、柊はさっきの戦闘を感じさせない位に振る舞ってる。

 今柊に暴れられたら、手のつけようがない。だけどそんな事はない確信があるからリルレットは言ってるのかな? まあでもついつい口に出てしまう事はあるけどな。友達の事だし、バカにされたままじゃいられい事もある。

 だけどやはり、柊は別段暴れ出す事もなく、少し含み笑いをするくらいだった。


「ふふ……本当に、人間はどこからそんな根拠の無い自信を絞り出してくるんでしょうね? 安心しなさい。別に死んだ訳じゃないわよ。

 それにこっちもかなり力を使ったし、道に割く分はもう無いから、今頃はアカウントも復活してるでしょう。まあここには来れないでしょうけどね」

「そっか……エイル……良かったぁ~」


 リルレットが放ってた気迫みたいな物が、柊の言葉を聞いて一瞬で流れて行く様な気がした。でもそれは僕も同じだ。エイルが無事……それは安心できること。

 この、目の前の少女が本当を言ってるとは実際まだ信じれないけど、何となくそれは嘘ではない気がしたんだ。今更嘘を付く必要も無いって言うか、エイルはそれほど柊達にとって価値がある存在じゃないだろう。


 僕は佇んでる柊を見つめる。さっきの会話も、これもそうだけど、やっぱりどうやら戦う気は無いようだ。

 てか道って……ここに来るまでにあった神殿とかか? やっぱりあれは柊達がLRO事態に干渉して付け加えた物。つまりこいつら、どこにだって一瞬でいけるんじゃないか? 

 なんて羨ましい奴ら……LROは広大で、移動手段が乏しいからプレイヤーは大変だってのに、どこまでも裏技を持ってる奴らだ。


「ちょちょっと待てよ。それなら、俺達が死ぬとかそういう事はないって事か?」


 そう言ったのは、仲間内の一人。それは誰もが気にしてた事。みんな追いつめられて立ち上がった口だからな。それはみんなにとってLROがまだゲームであれるのかって事なんだろう。

 誰もが神妙な面持ちで柊をみてる。柊はそんな事どうでも良さそうに、天扇で自身を仰いでるけど、素っ気なくは答えてくれた。


「そうね。というか、私たちは貴方達が言うリアルにまで干渉は出来ないもの。だってそうでしょ? 私達はこの世界の住人なんだもの。

 追い出す事も、取り上げる事も出来るけど、接続を切られたらそれまでね。ログアウトが反応しないのは、こちらで干渉してるだけし、私達にだってね出来ない事はあるのよ。

 だってしょせんは……まあそう言う事よ」


 最後は何だか歯切り悪かったけど、柊の言葉を聞いて、みんながそれぞれに顔を見合わせる。そしてそれぞれに「聞いた?」みたいなアイコンタクトの後に頷きあう面々。

 そしてみんな一斉に


「「「うおっしゃあああああああああああ!!!」」」


 とか叫んでる。まさに魂の叫びという感じだ。突然のそのハイテンションぶりにビクッと肩を揺らしたのは柊だ。だけどリルレットは、僕の顔とみんなを交互にみながら何やらオロオロしてる。


「別にリルレットも喜んでいいよ。僕に気を使う必要なんかない。エイルも無事で、自分も命の危険がないってわかったんだからさ」


 僕は戸惑ってたリルレットにそんな風に言ってやる。多分さ、リルレットは僕の事を考えてくれたんだろう。みんなは命の危険がなくなったって、そこに僕は入ってない。

 それを考えると素直に喜べないって感じかな? そしてそれは図星だったようで、ムギュっとリルレットは可愛らしく口をすぼめてこう言った。


「それは……そうだけど……」


 ゴニョゴニョとまだはっきりしないリルレット。何だまだ足りないのか? てか、僕とみんなじゃいろんな事が違うんだから、悩む事なんて無いのに。


「そもそもさ、僕はもうその覚悟を決めてる訳だし、それを押しつけ様なんて思わない。それに結局、命なんて賭けずに、ただのゲームのままであれるのならそれが一番だしな。

 みんなにはそんな覚悟も、そんな覚悟の理由もないんだし。いらないよ。たまたまそうかも知れなくて、だけどそうじゃ無かったんなら、良いことじゃん。

 みんなはこの短い期間の中で立ってくれたんだし、感謝こそすれ、疎ましくは思わないよ」

「それはそうでしょうよ。スオウはそう言うよ」


 何だかまだ気に入らない事がある様子のリルレット嬢。ええ、何なの? とそろそろ成ってくるんだけど。もっと端的に言った方が良かったかな。


「ええとつまりは……みんなが命を懸けずに済むなら、それに越したこと無いって事で――」

「でも仲間の! ううん友達が一人で命を懸けてるのに……近かった距離が離れた様な気がする。だって……私達にはどう必死になっても、ここでは逃げ道があるんだもん!」


 いきなり大きな声を出したリルレットに、みんなが振り返る。仲間……というより友達……ああ、その観点からの事はそう言えば入れて無かったかも知れない。

 僕は自分的に言えば……を言ってた訳だ。僕はそうでも、相手は違う。そんなのどこの世界でも当たり前だろうにさ。


「私達は仲間でしょう? 友達でしょう? 心配するよ。気遣うよ……だってそれが当たり前だもん」


 瞳が妙に潤んでる様に見えるリルレット。そんな彼女だからか、その言葉は素直に胸に響く物がある。実際はそう何度もあったりしてる訳でもなく、リアルでの付き合いなんて皆無だし、夢の様なLROでの繋がりだけ。


 だけどここの冒険は、リアルよりも強く人を引きつける。そう思える物だ。そして思いこみでも、一時は命を互いに賭けて戦ったんだ。それはもう信頼という絆が築かれるレベルの物だろう。

 でないと、命を晒して戦えないし、そんな背を預けるなんて出来やしないんだ。周りのみんなはリルレットの言葉を聞いて、やっぱり同じ様な視線を向けて来る。今気づいたような「ああそっか」それが聞こえる様な目。


 悪いことをしてばつが悪い感じ。別にみんなは悪い事なんてしてないのにさ。それが当然で当たり前。少なくとも、僕はそう思ってる。

 だけどみんなは違う様だ。仲間だからこそ、そう成ってしまってる。一人の為に、誰もが思いやりを持てるのは良いことだ。


 それが世界中で余すことなく出来るのなら、世界から戦争なんて言葉は消えるんだろう。だけどこれは間違い。みんなの思いやりは嬉しい……だけどその気持ちで十分だ。

 悲しみや辛さ、苦労や困難……それを乗り越えるための思いやりは大歓迎だけどさ、喜びや歓喜とかの幸せを噛みしめなくなる様に成ることはダメだろ。

 それも自分のせいでなんて耐えられない。


「スオウ……えっと、あのすまな……」

「謝るなよ。そんな言葉間違ってる。んな場面でもないし。気にするな……はまあ無理なんだろう。だけどさ――」


 僕はみんなを見回して、最後にリルレットを見た。そして笑顔で言ってやろう。最高の仲間達に。


「――笑っていいよ。喜んでくれよ。僕はそれが見たくて、自分のせいでみんなが喜べないのは嫌なんだよ。気持ちはありがたく受け取るよ。

 だけどさ、その喜びを噛みしめる権利は、頑張ったみんなにあるんだ。だからおもいっきり喜んでいい筈だろ」

「スオウ……」


 何だか気恥ずかしいな。自分で口に出して何だけどさ。リルレットの頭をこねながら、僕はそれでも笑顔を作る。

だけどまだ気難しい顔をするリルレットに僕は更に、その手を柔らかな頬へ伸ばす。


「にゅま!?」


 変な声を出したリルレット。それもその筈……だってリルレットの頬は僕の指によって伸ばされてるからだ。


「にゃにゃにゃにゃ……にゃにしゅんの~!!」


 柔らかな頬を引っ張り引っ張りしながらでも喋るリルレットの声はおかしな事に成ってた。


「ぷっ……はははははは!!」


 自分でやっておいて何だけど、笑っちゃたのはどうだろうと自分でも思う。だけどさ、グリグリしてると楽しく成ってきてしまったんだ。


「むにゃにゃにゃにゃ……いい加減にしなさぁ~い!!」


 バチンと思い切り頭を振って僕の手を放れるリルレットの頬。そして赤く成った頬を更に紅潮させて怒ってる。


「もう! ふざけないでよね。私は真剣なんだよ!」

「僕も真剣だよ」


 真顔で言うと、不意に顔を背けてしまった。そしてポツポツとか弱い声で、何か言ってる。


「嘘……ふざけてた。笑ってたもん」

「いや、あれはリルレットが可愛かったからだよ」

「っつ!! かかかかかかか、可愛い!?」


 ボンっと頭から湯気を出して沸騰気味のリルレット。何だか反応が面白いからからかいがいがあるね。実際本当に可愛かったけどさ。

 まあでも、この位にしておこう。元々かいたいからあんな事やった訳じゃないし。だから僕は、地面につけた腕に体を預けてこう言った。カラッとした笑顔でね。


「ああ、そう言う顔が側にある方がずっといい。思い合うのは良いことだけど、一人の為にみんなが辛気臭くなってどうするよ。

 僕は例え死ぬときが来たって、笑って死んでやる……そう決めてるから、周りは楽しい方がいいんだ。その方がよっぽど……救われる」


 そしてハハっと笑う。すると少しの沈黙を置いて、リルレットは瞳に溜まってのだろう涙を拭って顔を向けた。


「救われる……か。そうだね、一緒に悲しんであげる事も大事だけど、楽しくするのも大事だね。スオウは心からそれを望んでるんだし……なら私も、笑ってあげる。へへ」


 ニヘラ~とだらしない笑顔って感じだけど、別にウケを狙った訳じゃあるまい。だけどそんな彼女の笑顔がこの空気を包んでいく。

 そして次第にみんなにも笑顔が戻る。得難い喜びを、噛みしめないのは損だ。それも今のこの状況は貴重だろう。人生でそう何度もある訳じゃない。


 命を懸けた戦いを乗り越えた果ての喜びってさ。まあ、その戦った相手がすぐそこに居るってのはどうかと思うけど。

 彼らがここまで喜びを露わにしたんだ。今までのLROではきっと感じ得なかった何かがあったんだろう。


 青い空と、咲き誇る花畑の広がる中で、みんながようやく思い思いに喜びを噛みしめる。それは自然な事で、やっぱりこうでなくちゃと思える。


「やっぱり……人間ってわからないわね」


 不意にそう言ったのは、今までのやりとりをずっと黙って見てた柊だ。


「他人の為に思いやったり我慢したり、面倒じゃない?」

「そうかもね。でも基本、人間って面倒なもんだよ。めんどくさい付き合いや、そういう社会で生きてんだ。

 だけどそれを本当に面倒と思うかは心次第。だってそこには絶対に楽しさとかもあるんだから。どこを大きく捉えるか……それで面倒な事も幸福とかに変わるんだ。みんなそれぞれ折り合いつけて生きてるよ。

 それにさ、僕から見たらお前達も、僕らと同じ事してる様にみえるけどな」


 僕の言葉に、柊は僅かに眉根を寄せる。人間と同じ何て嫌なんだろう。


「どこら辺がかしら?」


 少し口調を強めてそう言う柊。やっぱり機嫌が悪くなってる。だけど僕は臆せず言うよ。


「一緒だろ。お前達だってセツリを思って行動してる。そこら辺はきっと何も変わらないんじゃ無いか?」


 そう、一緒だよ。みんなが僕を思ってくれた事も、柊達がセツリを思ってる事も……変わらない。大切だから、それを考えてしまう。

 そんな難儀なもんなんだ。


「い、一緒にしないでくれる。私達があの子を思う気持ちはもっと大きいもの。そう……それが存在意義って位に」


 少し声が萎んだ柊。今の自分の立場とかが嫌なのかなって思う様な仕草。実際はわからない、なんと無くだけどね。


「嫌いなのかセツリが?」


 何とはなしにそんな事を聞いた。だけど今度はもっと強い目で睨まれた。


「そんな訳ない! 私達はあの子の絶対的な味方だもの。嫌いになんてなれないわ」


 なれないって……まるで本当は嫌いみたいな言い方だな。でもそれだと、疑問が一つ。


「なあ、お前が僕を助けたんだよな? どうしてだ? 僕は敵だろ。セツリをLROから連れだそうとしてる」

「そうね……貴方は敵よ。だけど今回は私の負けだから。許せないじゃない? 勝ち逃げなんて。プライド的に。貴方は私の手で殺してあげるの」


 柊の瞳は情熱的に燃えている様に見えた。あんまり嬉しく無いけどね。それに勝った実感も今と成っては……


「貴方は勝ったわよ。こう見えても私もフラフラなの。中はボロボロ……こんな屈辱初めてよ。本当なら今直ぐ殺したいけど、それが無理だから時を待つわ。きっともうすぐだし。そう、きっとね」


 柊は湖に鎮座する巨大な扉を見つめる。あれはセツリが去っていた物だ。意味深な言葉と柊の視線……それは何を語ってる?


「どういう事だ? それにやっぱそういう風には……」

「私も大概反則だけど、あれも大概反則よ。でも私は倒させない。だってそれじゃ意味が分からないもの」


 意味? 柊の言ってる事がよく分からない。すると大きな音を立てて扉が開きだした。黄金の光が溢れだしてる。


「それと多様しない事ね。私だからあの力の影響で崩壊仕掛けてた君自身のコードを初期化出来たけど、次はないわよ」


 そこまで……どんな執念だよ。だけどまあ……


「さんきゅ、助かった」


 そう言うと柊は「バカ?」とか言う。そして開いた扉は驚くべき吸引力で、柊共々僕達までも吸い込んだ。

 第百五十四話です。

 昨日の敵は今日の友……だけどまあ、柊はそこまで行ってないですけど。さてスオウ達はどうなるのか!? それは次回で分かるでしょう。

 てな訳で次は水曜日にあげます。それではまた~。

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