百分の一秒を斬る剣
沢山の出来事を超えて僕はここに立っている。引く訳にも、負ける訳にもいかない場所。通さなくちゃいけない想いが、この胸にはくすぶってた。決着の時……全ての雷撃を解放した僕は、残り十秒で絶え間ない雷光の輝きを輝きを発し続ける。
「もう、タイムアウトじゃないかしら? 今からじゃ何をしても私は倒せないわよ。そうでしょ?」
真っ白な雪が風に流れて落ちていってる。周りは氷が突き出した風景が広範囲に続いてる。厚い雲が空を覆ってて、足りない日光がもったいないと感じてる。
きっと……光が一杯に降り注ぐと、最初この場所に来たときとはまた違った綺麗な景色が見れれるのに。想像してみるだけで、素敵な光景だ。
光を受けた氷達は、きっとこれでもかって位キラキラ輝くだろう。空は真っ青な青で……僕達は光の大海の中にいるんだ。
(うん……良い感じだ)
瞼の裏に浮かぶそんな光景をイメージして、僕は暗い空の下で一際強く輝く柊を見据えた。きっとそんな光景がこれから出来る……そう今は完全に信じれる。
そのイメージを確固たる物にして、僕は柊に言葉を返す。
「そうでもないさ。出来る出来ないかじゃなく、僕はやる。なんとしてでも……残り百分の一秒に成ったって諦めたりしないさ」
「あっそ。でもどうやって? 君は思うように進めない。それに私には使い勝手のいいのがいるわ」
どこまでも余裕の表情の柊。たとえ避雷針の役目をしてた柱が潰されようとも、それは決して揺るがない。まあ、普通に考えれば、この時間で柊クラスの敵を倒す手段なんて有るわけ無いし、前例も何も無いだろう。
幾らシステムの裏側でこの世界の何もかもが分かったとして、この時間でのノーダメージの相手を逆転するなんてデータはきっとない。
全てに基づいて、柊はその余裕を崩さない。でもさ、それでもここまで粘ってきたんだ。何度もダメだと思う瞬間があった。その度に、運や仲間に助けられて来た。
紙一重で繋いできたここまでの時間、無駄になんてする訳には行かない。厚い壁が有るのも分かってる。今、柊の前には、あいつを守る様に分身共が前を固めてる。確かに使い勝手は良いよなあの分身。
そして柊はそんな完璧な布陣の先で、不適に僕にこう言った。
「でも……もしも本当にその力を信じれるのなら、見せてみなさい。そして一矢位報いてみなさい。その程度は許してあげる。
シクラが言ってた人が持つ何か……そんな物がもし、君に有ったらだけど」
本当に、どこまでも人を見下す奴。でも別に、それならそれで良いさ。今ここで示せばいい、人の力って奴をさ。柊のお望み通りにだ。
「何かなんか知らない。でも……見せてやるよ柊! お前達が見下してる、人の力って奴を!! みんなぁ!!」
僕は叫んだ。するとその瞬間、下から何かが僕の立つ周囲に上がってきた。それは武器……みんなが愛用してるそれぞれの武器だ。
剣に斧にナギナタに弓や杖……それらの武器が声に答える様にここにある。
(ああ、やっぱり……ちゃんと分かっててくれた)
そんな思いを心に加えて、僕はその武器達が落ちていこうとする前に、この肉体におもいっきり力を込める。
「うあぁぁぁぁああぁぁぁああああああぁぁぁああ!!」
すると通常時は時折、パチパチする程度のスパークが明らかに激しく成っていく。自身の体から青い来電が伸びるのが見える程だ。
体事態をもっと強く、激しく沸き立たせる。そして天を突かんばかりの叫びと共に僕は宣言する。
「フルバァァァストオオオオオオ!!」
その瞬間、雷撃が周囲を満たした。どこにも『フルバースト』何て書いちゃ「なかった。だけど自分でそう思う。
これは一度だけの全エネルギーを賭けた行い。だからフルバーストが一番あってるだろう。さあ、そしてこれで準備は万端だ。
周囲に放たれた雷撃は今や、みんなの武器と繋がってる。普通なら落ちていく筈だった武器達は、僕の周囲で僕の発した雷を纏ってその場に浮いていた。
そして僕自身も、その雷帯の中心できっと変わってる。僕は今感じてる。自分の存在がとても曖昧で危うく成ってるって事を。
不思議な感覚……ずっと傍にあった気もするけど、まるで世界と解け合う様な……自然と同じ。
「随分眩しく成ったものね。それがその力の真髄?」
「ああ、多分な。自分自身の『完全雷化』って所だよ」
僕達はそんな僅かな言葉をかわして押し黙った。きっと感じてるからだ。次の言葉で始まる事を。『完全雷化』か、今までは腕とシルフィング以外は雷を纏ってる感じだったけど今はそれとは全然違う。
体も服も防具も、全てが雷で輪郭を表されてるだけみたいな感じ。でも逆に、全てが雷化したからか、今まで見えて無かった両腕の先とシルフィングの形はハッキリと見えた。
周囲で発せられるスパークに雪が巻き込まれて、キラキラと散っていく。僕は再び見えるように成った拳を握り締めて、シルフィングにこう伝えた。
(行くぞ、相棒)
するとシルフィングの流星が雷の中でも一際輝く様に見えだした。それはきっとコイツの答え。譲れない先手の宣言。一秒が果てしなく感じるこの瞬間だけど、だけど残りはもう五秒位しかない。
僕は右腕を空に掲げる。
「活目してろよ柊! 今の僕はさらに速い!!」
その瞬間、僕の周りで浮いていた武器が次々に消えていく。そして次に現れる場所は、柊を中心とした周囲。そこを円で囲む様に展開させた。
「ふん、結局は遠距離から決めるつもり? それなら君も変わらないわ。それにこんな見え透いた物なんて、直ぐにでも落とせ――」
止まる柊の声……そして見える確かな衝撃。その瞬間、雷光は二線に弾け視線を向けた柊の分身が一体、目の前で砕け落ちていく。
何が起こったのか、賢いアイツなら分かるだろう。
「これで……後三体!」
「――っつ!? 散れ!!」
その瞬間、三体の分身共が一斉に羽を羽ばたかせて動き出す。だけど今の僕のからしたら、その翼の一つ一つが手に取るように分かる。
膝を曲げて力を込める。そして掴んだ杖から飛び出した。
「遅い!!」
雷光が曇天の空に線を引く。その一瞬で十分だ。僕は真っ直ぐに進むだけ……そこにある着地点である武器を目指して。
そしてそれは誰にも何にも阻むことは出来ない。その道を塞ぐのなら、この両の流星の剣で叩き斬るだけだ。そしてその交差点で一際大きく鳴り響く雷の音と雷撃の光。
もげた翼は儚い欠片と成りながら地表を目指すその途中で消え去っていく。だけどまだ!!
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
続けざまに二度の雷鳴と閃光。空しいニ体の不気味な声が落ちて行く。これで四体全ての分身は葬った。残りは親玉……柊ただ一人。
これ程とは思ってなかったんだろう。柊の額から一筋の滴が流れた。だけどそのプライドか意地を崩す事ない柊。そこら辺は流石、安っぽい奴じゃない。
「シクラが言うことが少しは分かった……少しだけ、私も人に興味が出てきたわ。やっぱりその手で決める気なのね。でも……それはそうで無くちゃいけないわ」
何を言ってるのかイマイチよく分からない。追いつめられてそれなりに動揺してるのかも知れないな。外に出さないだけで。
だけど実際……追いつめられてるのは柊だけじゃない。それは僕も一緒だ。刹那で打てる一線がある……けれど、それももう限られてるんだ!
だから、今はただ前へ!
「僕はこの奇跡を! この両の剣を信じてる!! そして力を貸してくれたみんなの武器は道。それを僕に示してくれてる!!
迷いも何も無く突き進めるこの道は、全てがお前へと繋がってるんだ!! それを打ち砕くのが僕が応えれる事!
みんなの願いと想いを背負って……僕はお前を叩き斬る!!」
青い雷光が弾ける。その瞬間、柊の翼が大きく外側に動く。だけどもげるまでは行かなかった。流石に本体に残っただけあって頑丈だ。
だけど斬った場所は、音を立てながら翼から羽が落ちていた。効いてはいる。それは確実……だけど時間を置けばあの翼は再生する。
今も既に地面全体が光り、そこからエネルギーでも供給してるのか、氷の翼は復元を始めてる。
「させるかぁ!!」
僕は更に攻撃を続ける……だけど柊はその翼を堅く畳み、防御に専念してる。確かにそれが一番、今の僕がやってほしく無いことだった。
もう何秒と無いんだ……ここであの力で防御されたら一番不味い。
(なら……もっとだ……)
歯を食い締めて更に続けざまに飛び出した。縦に横に、切り刻む。その度に氷の欠片が剥がれて行く。でもこの程度じゃ直ぐに復元されていく。
(まだ足りない……もっと……もっと……)
秒針が一つ進むより速く僕は飛ぶ。風や音を越えて剣を振るう……そして目の前で弾け飛ぶ氷の欠片の数さえも数えられる程に、一つの事に頭が支配されていく。
(もっと……もっともっと……)
空に絶え間無い雷光が光続け、重なって行く雷音は大地を震わせだしてた。だけど僕には、柊と言う一点しか見えてない。
(もっともっともっともっともっともっともっともっと! まだまだいける!!)
一を十に、十を百に、百を千に、千を万に!! 次第にセラ・シルフィングの剣線は途切れることなく繋がっていく。
柊を囲う周りの武器で雷光が弾け、その線の全ては一カ所に集中してる。そしてそこでは更に激しい雷のうねりと衝突が繰り返されてる。
青い雷光が砕けていく氷の欠片を照らしてる。光を受けて輝くそんな氷の欠片は、次第に多く周囲に舞っていく。それは確かにその瞬間へ近づいてる証だ。
そして雷速の剣がついに大きな亀裂を翼に与える。右と左……交互に感じる感触が手応えに変わった。耳に届く、大きな氷の亀裂。
それには流石の柊も「あり得ない」……そんな顔をしてる。だけどこれが今起きてるリアルだ!! リルレットの剣を蹴って、僕は柊の真っ正面からその乱撃を打ち込もう!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああ!!」
瞬きをするよりも速く振られる剣は、その一瞬に百を越える残撃の後を残してる。そして柊の片翼が雷に晒された様に弾け砕ける。
だけど、僕の刹那はまだ終わってない。その瞬間、さらに残った片翼がもがれる。晒されるのは柊自身の姿。最後の力と時間に願い、僕は雷光輝くセラ・シルフィングをその体へと向ける。
「行っけえええええええ! スオウ!!」
「そこだぁあああああああああああ!!」
「決めろおおおおおおおおおおおおお!!」
耳に届くそんな声。きっと見えても居ないだろうに……だけどその言葉は、出し切ってた筈の心と体を僅かに持ち直させる。
削り切らないといけない奴のHP。その為の最後の力!!
何回か、気のせいと思うような光が空に上がった。雷線は幾重にも尾を引いて柊を貫いてる。青い雷放はその瞬間に始まった。
瞳をあけてられない位の光が広がる。そして次の瞬間、幾重にも重なりあった雷撃が臨界を越えて空に昇り、するとさらに激し過ぎる爆発音と衝撃波がこの空間を埋め尽くす。
渓谷を成してた氷は全てが吹き飛ばされて行き、地面に積もった雪を再び舞い上がらせる。世界は白で包まれた。そんな中、残り滓と成った雷撃が自身の最後の一絞りの如く空気中にスパークを放ちながら消えていく。
(防ぎようのない攻撃……だったはずだ)
柊は解放された巨大な雷撃と共に昇っていった。どうなったのか最後まで確認も出来なかった。でも……あれはその筈だ。
今まで僕の力で浮いてた周囲の武器が落ちていく。この奇跡はもう終わり……全ての力が淡い夢だったかの様に儚く散っていく。
残ったたった一のHP。それは確かな勝利を示してる筈……だけどその一じゃ、この体をどうする事も出来そうにない。
腕も……足も……体の全て何もかもが動かせない。シルフィングを握り続ける事も出来なくて、この真っ白な世界をただ落ちていくだけ。
曖昧だった体も、今や実体を取り戻しつつあって、吹き上がった雪の粉の冷たさが僕にも分かる。僅かに視線だけ向けても、迫る地面さえ見えない……もしかしたら次の瞬間にはドガアアンと地面に突き刺さるかも知れない。
そう言えば、柊を倒す事に夢中でその後の事まで考えて無かったな。この奇跡もどうせなら、僕が地面に足を付くその瞬間まで持ってくれれば良い物を。
けれど既にもう奇跡は消えて行ってる。でもこの奇跡があったからこそ……今僕は生きてられてる。戦う事も出来た。
そして掴み取れたのなら……僕は感謝するべきなんだ。この奇跡にさ。体から消えてくこの奇跡にちゃんと言葉を贈ろう。
きついし重いけど……何にだって言葉にしないと伝わらない事があるし、それに口に出すことで僕は実感したかったんだ。
ちゃんと倒せた事を。シルフィングを振るってた最後の方は曖昧だから。夢中で……夢中過ぎて、確かに有った筈の事なのに、そこだけ夢みたいな……だからちゃんと口にしたかった。
やれたんだ……そう思いたいから。震える腕を真っ白な中に突き出す。重いし、楽じゃない。だけど掲げたのはそこが奇跡の最後の部分だからだ。
この腕が終われば、この力を感じる事もないんだろう。だからその前に……
「ありがとう、助かったよ奇跡」
真っ白に染まる空間に、青い雷撃が儚く昇る。そして昇った先で、白い中で散っていった。白と青のコントラストは結構綺麗な最後を僕の目に見せてくれた。
それはもしかしたら、奇跡が送ってくれた最後の夢みたいなものなのと勝手に思った。「ありがとう」の言葉に応えてくれた証。
儚く散る様は、「ごめん」と言ってる様にも見えたけど、そんなのは全然いいんだ。ここまでで十分……最後くらいは自分の、自分達の足で立つさ。
大丈夫だろ……だってほら、何かが聞こえてくる。
「「「スオウォォォォ!!」」」
それは間違いなくみんなの声だ。この視界でちゃんとこっちに向かってるのかは微妙だけど、ちゃんと足音は近付いて来てる。
ああそっか、きっとさっきの雷撃だ。あれがみんなにこの場所を示してくれたんだ。最後の最後まで、本当に心配症な奇跡だったな。
だけど助かる……自分達の足でとか言ったのに助けられたのは示しが付かないけど、ちゃんと受け取ったよこの贈り物。
その瞬間、僕の背中に暖かな感触が伝わった。そして一斉に伸びてくる腕。それらが上空から落ちてきた僕を受け止める。
だけど流石に耐えられずに、みんなして地面に倒れ込んだ。冷たい氷の上だけど、そんなの全然気にならない。感じる人の温もりが暖かい。
それに何だからムニュッととっても柔らかいし……
「ス、スオウ!! そこは……ああ……」
何だか焦った様なリルレットの声。でもそれもその筈だ。だって僕が感じた柔らかな感触……それはリルレットの二つの控えめな膨らみだったんだ。
真っ赤な顔で僕を見つめるリルレット。僕も次第に赤く成る顔をどうにも出来ずに止まった。でも取り合えず、手を恐る恐るどけて謝った。
「ごめん……」
「えっと……あの……お粗末な物でごめんなさい」
変な空気だ。てかお粗末な物って……決してそんな事は無かったような……って何考えてんだ僕は! でも男としてちゃんとフォローした方がいいのではと思わなくもない。
気にしちゃ悪いし、黙ってるとお粗末だと認めた様じゃないか? だけどこれ以上、胸の事を話すのも場違いだしこの空気じゃハードルが高い。
誰か! と思ってると、その時更に下に倒れてる奴らから声が聞こえた。
「何やってるんだよ君達は。折り重なってるんだから、退いてくれると嬉しいんだが……一番下の彼が圧迫死しそうだよ」
「うあわあっわぁ!」
「ごご、ごめんなさい!」
僕とリルレットは急いで降り――ようとしたら、僕はその場に転げるように成った。今度は本当に冷たい地面が背中に当たってる。
するとそんな僕の様子を見て、心配するリルレットが覗いてくる。その向こうではみんなが「イテテ……」とか言いながら立ち上がってた。
そんな様子を見てたら、「やったんだ」そう思えてきた。あれから誰も失わずにやれたんだよ。それはとても嬉しいこと。妙にテンションが上がってきた感じ。
だからかな?
「だ……大丈夫?」
そう言ってまだ少し頬を染めてるリルレットと自然と目が合うと、少しの間を置いて何だか吹き出した。
「ははは、はは……」
「え? ええ? はは……あははははは。あれ? 何で私まで……でも……あはははは」
僕に釣られてリルレットも笑い出す。何がおかしいのか良くわかんないけど、取り合えず笑ってしまう。緊張の糸が切れたせいかな?
「暢気なもんだな」
「良いじゃないか。自分も今はおもいっきり笑いたい気分に成ってきた。そら、わはははははははははは」
「ふふ、確かに何だかそんな気分かも」
「ああ」
そんな僕達を見てたみんなもどうやら笑いたい気分らしい。そしてみんながそれぞれ視線を交わすと、健闘を称える様に笑顔がこぼれて、笑いが生まれてく。
それは今までにも何度か見た、本当に気持ちの良い瞬間の顔を誰もがしてた。それぞれが、それぞれに出きる事を精一杯やった……そして掴んだこの勝利。嬉しく無いわけがない。
鳴り止まない僕達の笑い声。涙が出ても、声が涸れても続きそう……そう思える程だ。だけどその時、仰向けに倒れてる僕には真っ先に見えた。
濃く張っていた白い雪達が晴れていく。上空まで上がってたのが再び近くまで落ちて来たのかも知れない。そしてそんな晴れゆく空からは、恋い焦がれる程に望んだ光が少しずつ線と成って降り注いでくる。
そしてその光の一つは丁度僕達の真上だ。キラキラと周囲に満ちる雪の結晶と暖かな光が混在してる。薄まって来た白の先には、青い空が覗いてる。
そう言えば雷撃があの厚かった雲も一気に吹き飛ばしてたから……ようやくそれが届いて来たって事か。
「あ……」
降り注ぐ光は、みんなの視界にも入る。そしてその光景に笑い声が止まった。
「スオウ!」
輝く顔でこちらに手を伸ばすリルレット。まあ、上しか見れないの何だし……何だけど、体を動かすのが一苦労だ。
「スオウ? 体が……ほら、ちゃんと支えてあげる」
そう言ってリルレットが僕の体を起こしてくれる。なんか情けないが、今はしょうがない。素直にリルレットの優しさに感謝だ。
そして目の前に広がった光景は正しくファンタジー……そう呼べるものだと思う。
「ねえ、凄い綺麗だね」
「ああ……」
リルレットの言葉にそんな声しか返せない。だけど言葉を失ってるのはみんなも同じだ。それだけの物が僕達の居る場所には広がってる。
蒼い空から降り注ぐ幾つもの光、まだ薄く広がる白い結晶はそんな光を反射して眩しい位に光ってる。そして自分達のついてるこの地は平淡になっていて、そこには空の蒼と広がる白い結晶も映してて、もう一つ空が有るようだ。
遠くに見える地面と木々の輪郭がここを大地とわからせていて、でもそれを覆ってるこの白い結晶がどこまでも幻想的に思わせてくれる。
そして気付くと周りには僕達の武器が、この氷の地面に突き刺さってる。それもまたいかにもって感じだ。この感動はただこの景色に出会ったからじゃない……僕達が掴み取った物が有るからこそ得られたもの。
きっといつまで経っても色褪せない思い出にこの景色はなる。みんなきっとそうだろう。表情がそう言ってるよ。すると何だかカシャカシャ聞こえだした。
誰かがスクリーンショットを撮り出したらしい。確かにその手が有ったか……でもいいや、僕はこの景色と思いを誰よりも強く心に残す……それだけで。
第百四十八話です。
遂に決着。最後はやっぱり、みんなの力があってこそです。がっちりとはまった雷化の強さは想像以上の物だったのです。柊がどうなったかはまた次で。でもこっちもこれで終わりではないのですよ。
てな訳で、次回は金曜日に上げます。ではでは。