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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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理不尽な世界の自分

 何かを得る事を、私は一度も許されないのだろうか。ずっとずっとそうだった。私は初めから『与えられぬ者』だった。でもだからこそ、頑張って努力して掴もうといつだってしてきたさ!!

 だけどいつだって立ち塞がった。『与えられた者』共は、その価値を知らずに横から掴み取って行く。理不尽を振りかざす!!

 そんな世界なら諦めたって良いだろう。だからこそ、生まれたばかりの世界で私は、横から攫われた全ての物を掴みたかったんだ。

 炎の渦の中・・私の力が流れていく。燃え去られていく。掴める筈だった未来と共にだ。

(どうして……)

 どうして、私の手のひらからは何もかもがこぼれて行ってしまうのだろう。努力もしたし、計画も綿密だった。世界の誰もが言う、頑張ることを私はしてきた筈だ。

 それでも誰もが思い描く未来を掴める訳はないと分かってる。だけど思えてならない……世界にはあらかじめ、掴める者とそうでない者が決められてるんじゃないかと。

 そして私はいつだって掴めない側へと追いやられていく。私の手にはいつだって何も残らない。空しさと、世界に対する憎しみ以外は……



 人は生まれた時から理不尽と言う物がつきまとう。それは幾ら追い払おうとしても付いてくる。私の家はなんて事はない、ありふれたサラリーマン家庭だ。

 生きては行けるし、たまには贅沢も出来る位の家。だけどそれが、他人に頭を下げて買える物だとは幼い私は知らなかった。


 多分、幸せを幸せと感じれたのはそんな幼い時だけだ。それは私が無駄に頭が良かったせいかも知れない。そんな私に両親は喜んだが、私はもう小学生の時点で思ってた。

 この両親が両親である限り、この程度の人生しか送れないんじゃないかと。それもきっと私が周りより少しばかり頭が良く回る程度で、有名な私立の学校に入れさせられたのが原因だ。


 そこでもトップは取れたが、だけど私立だからこそ、持たざる物と持つ物が、同じ庭に集まってしまうんだ。私立だから当然金持ちの奴らは沢山いる、だけど有名な学校だからこそ、子供に期待する親は頑張り過ぎてでもそこに通わせようとしてる人だっているんだ。


 自分が持てなかった物を持たせたい……それは親として当然の心理なのかも知れない……でもそこで私達は見てしまう。持たざる側の私達と持つ側の奴らの違いをだ。

 トップをとり続けた私はまだいい方、だけど中には勉強に付いていくのやっとの奴もいる。普通なら投げ出してもいいと思うが、親の頑張りを知ってる彼らは投げ出さない。


 子供心にも期待に添えようと言う思いがあったんだろう。だけど同じ位置に居る持つ側の奴らはどうだ? 何も心配する物がない彼らは焦らない、頑張らない。

 その内、その差は確実に開いていく……そう思ってて、確かにそうなった。彼らは頑張った分だけ成績を伸ばしたし、自分も一度もトップを譲らなかった。


 私も彼らに協力して時々勉強とか見てたし、その頃は努力はやった分だけ実を結ぶと信じれた。確かにテストの結果はそうだったからだ。

 でもそんなある日で、小学校生活も四年目に成った頃ある日突然、私が勉強を見てた一人が学校をやめた。それは本当に突然で、納得出来なかった私は先生に詰め寄った。


 だけど帰ってくる言葉は「家庭の事情」と言うありふれた言葉。それさえ言っとけば、子供は「仕方ないんだろうな」とか思ってしまうと思ってる体だ。

 でも家庭の事情なんて信じられなかった。いや、家庭の事情がじゃなく、何で辞める事に成ったのかがだ。だって彼は言っていた。


「このまま頑張れば、僕も十位以内に入れたりするかもしれないよね? ううん絶対そう出来る! だって僕達には君が付いてるんだもん。

 それに頑張ってたら良いこともあったんだ。僕が頑張ってるからって、お父さんも頑張ったんだって。そしたらショウシン? で偉く成れるんだって。

 お給料も上がるから、心配しなくても大丈夫って」


 そんな風に、満面の笑みで言っていた。家庭の事情で辞めるなんて起こり得ない事だ。本当は彼のお父さんの話は嘘で、実はかなり家計が苦しくて学費を数ヶ月分滞納してるとかでもない限り……それか、昇進に伴っての栄転で遠くに転校とか……でもそれなら最後の挨拶位あるはずだ。


 結局子供の私にはどうしようもなくて、何もわからない事だった。でも彼が転校して数日後、その理由を私は思わぬ形で知った。

 昼休みの教室……騒がしいそこで、教卓に腰を下ろした奴とその他数名、そいつ等が周りを気にすることなく話してた。


「なあなあ、今頃アイツどうしてるかな?」

「アイツって? あ~あ、少し前に辞めちゃったリストラさせられた親父の息子か。それにしても、傑作だったよな。まさかいきなり席が一つ空くんだから」

「そうだな、何だか教室が広く成った感じがするよな。てか、元から居なかったみたいな」

「「「ぎゃははははははははは!!」」」


 耳にこびりつくヘドロの様なそんな会話はまだ続く。


「だけどまさかいきなり辞めるとはな。学費払える蓄えも無かったのかよ? 場違いな所にやってんなよって話だよな」

「そうそう、それにアイツもアイツだよ。ちょっと俺達より成績が良いからって何が『頑張れば結果も付いてくるんだよ』だ! 

 俺達の人生は約束されてんだよ。貧乏人と違ってさ。まあ結局、頑張りだけじゃどうにも成らない格差がアイツもこれでわかっただろ。

 家の子会社勤務風情のガキが出しゃばるから、ちょとした人生勉強だよ」

「はははは、確かに。でもこれでおもいっきり頑張れるんじゃね~の? 地面を這い蹲る様にさ。それがアイツにはお似合いだったろ。

 それに頑張る事が好きだったみたいだし、良いことしてるね~」

「いや~そうか? 俺って良い奴?」

「「「ははははははははははははは」」」


 発せられる言葉が、これだけ不快だと思ったのは初めてだった。ベチャベチャベチャと薄汚れた言葉が地面に落ちる音が聞こえる様だった。


(アイツは何も悪くない……それなのにコイツ等が!!)


 沸き立つ感情。だけどそれは私だけじゃ無かった。一緒に頑張ってた友達と呼べる奴が、その会話を聞いて大きく叫んだ。

 最大限の怒りを表した彼の言葉に、教室中が静まりかえる。


「何だよ! 別に悪いことなんかしてないぞ! アイツが悪いんだ! 貧乏人の癖に、俺達を見下ろすから! 殴って見ろよ! お前も辞めさせてやる!!」


 震える声でそんな事を言うバカな奴。そんなのは今の彼には逆効果でしかない。怒り心頭の彼は歯を喰い締めて、拳を作って駆けだした。


「このバカ野郎おおおおおおお!!」


 だけどそこで私が彼の腕を取った。


「ダメだ」


 そう言って。彼は必死に抵抗したけど、私は必死に諭した。確かにこんなバカ、殴れる物なら殴り飛ばしたい。だけどそれで、また一人理不尽に去らなきゃ行けなく成るのは嫌だった。

 だから私は、今の話をありのまま、先生に伝えて彼を戻して貰おう……そう言った。この時の私はまだ、世界は正しい行いで回ってる……そう思ってたから、何も悪くない彼がこのままで良い分けないと誰もが言ってくれる。そう思ったんだ。


 だけど実際は違った。世界は正しいことで回ってなんて無かった。どうしようもない理不尽と、その外に居る金持ち共と権力者、そしてそれに頭が上がらない大人で回ってた。

 真実をありのままに伝えたのに、先生の答えは実に簡素で、それはどの先生に言っても同じだった。ここの大人は誰もが何かを諦めてる……そう感じた。


「だから無理なのよ。家庭の事情にまで私達教師は口を挟めない。学校が間違って退学にしたのなら取り消す事だって出来るかもしれないけど、通わせられない親に息子さんを通わせてくださいなんて言える訳ないのよ」

「なんで! それなら、あのバカの親を呼んでそんな間違ったリストラを取り消させれば良いじゃないですか!」

「あのね。そんな事でリストラなんてされる訳ないでしょ? 仮にそうだとしても、会社の意向を私達が変える事なんて出来ないのよ。

 言いたくはないけど、ただ必要ないって判断されただけかも知れないでしょ?」

「そんな訳ない! 彼はお父さんが昇進するって言ってました! それなのにいきなりリストラなんて、絶対に変じゃないですか!

 先生だって知ってるでしょ? あの親バカな親! 運動会でも文化祭でも、自分の子供が目立たせたいからって、周りに賄賂をばらまくアホですよ!!

 みんな知ってます。アイツの言葉でリストラしたっておかしくない!! そんなのおかしいって、先生なら言えるでしょ!」


 先生は偉い人で、正しい事を教える人……だからそれが普通の筈。でも先生も社会の一部で、一人の人。それが私立の教師とも成ると、公立とは違った感じで社会に寄ってるらしい。

 だから私の言葉に、流石にイライラしてきた先生はこう言った。


「あ~もう! 幾らアホだってね、あの家はこの学校の大きな支援先なの! そんな事言おう物なら、学校が潰れちゃうかも知れないの!

 君はこの学校を潰してでも、あの子を戻してあげたいの? その頃には無くなってるかも知れないし、そんなわがままのせいで他のみんなまで大変な事に成っちゃうかも知れないの!!

 君はそんな責任が取れるの!? それに、彼が好きだったこの学校を潰したりしたら、可哀想でしょ? 思い出が沢山あるんだから」


 後半は何だかいきなり教師風に言われた。あたかも彼の為と話をすげ替えられて。でもそれでも、責任とか潰れるとか言われたら子供心に怖くなる。

 その時初めて、目に見えない力って奴を感じた気がした。だけどまだ、一つだけは譲れない物がある。僕は頭を撫でる女教師に問いかける。


「じゃあせめて、アイツ等には何か罰があるんですよね。そうじゃないと、理不尽過ぎる!! 頑張ってたのに、こんな風に終わらされて、頑張らないアイツ等が得をするなんて、それじゃあ頑張ることに意味なんて無いじゃないですか!」


 それは子供の私の必死な訴えで心の叫びだった。だけど返ってきた教師の言葉は、それを受け止めてるとは思えない物だった。


「わかったわ、それじゃあ後で彼らを呼びだして聞いてみましょう。そして本当にそんな事が会ったと認めてくれたら、私も厳しい態度で望みます。

 それで良いかな?」

「そんなの認める訳無い!」


 バカでもわかる事だ。アイツ等は普段バカだけど、ずる賢さは筋金入りだ。だけど教師は流すように、「大丈夫大丈夫、私は子供達を信じてるもの」と言って私は帰された。

 だけど案の定、アイツ等は叱られる事さえ無かった様だ。数日経っても謝る事すらしなかったし、教師もその話は一切しなかった。


 結局教師は、あの時感じた力に負けたんだ。いや、そもそも戦う気なんて無かった。職員室の誰一人。あの場に居た全員が既にその力に屈服してる人達だったんだ。

 悔しかった……アイツ等は悠々と学校生活を送り、消された彼は、どうなってるのか分からない。でもきっと大変だろう。


 自分の無力さを痛感して、でもだからどうにか成りたいと思った。理不尽にあらがうには力が必要だ。そして屈しない為にも力が必要。

 私はあんな大人に成りたくないと思った。どうにも出来なかった彼の為に変えよう……そう決心して、まずは生徒会長を目指す事にした。

 子供が掴める最初の権力と力だから。そしてそれでも、この学校を少しでも変えれるかも知れない、そう願って。それは無知な子供の儚い夢。小学生の生徒会長なんて、責任感を養う位の物だろうに。



 小学生五年目の冬、最終学年である六年時の生徒会長選挙はこの時期にある。この学校は六年生しか生徒会長には成れず、立候補もその時から。

 だけど役員は、その時の会長が選ぶ方針でそれには五年生までが入れた。だから私は生徒会長に売り込んで頑張ったんだ。


 確かにお遊び感はあったけど、それでも私は真面目にやった。それにやっぱり役員をやってると、会長には成りやすい。

 それに別に対立候補も居なかったし、これは確実視出来た事。私は成績優秀で有名でもあったしだ。でもここでも持つ側の奴らがしゃしゃり出て来た。


 目当ては生徒会長と言う珀。この学校はエレベータ式じゃないし、中学受験の為に楽をしたい奴らが推薦って物に目を付けたんだ。

 生徒会長やってれば、それが取れる確率は高くなる。そんなアホ共が複数立候補してきて、そしてある日私に言った。


「なあなあ、生徒会長なんて面倒なんだけど、受験は更に面倒なんだよ。お前はずっとはトップなんだし、そっちで推薦取れるんだろ?

 なら俺達に譲ってくれよ」


 腰を低くすると言うことを知らないバカは、態度がデカい。小学生らしいふてぶてしさとでも言えるが、こいつらは見てるだけでムカムカする。

 なるべく相手をしないようにしてたのに……だけどこんな奴に譲る気なんか元々ない。


「自分は真面目に考えて生徒会長に成ろうとしてるんだ。それに受験に焦るのはお前達の怠慢だろ。んな理由の君達に譲る職じゃないな。

 せいぜい頑張る事を知るといい。アイツの様に……」


 そう言って、私は宣戦布告をしてやった。挫折や敗北を味合わえばいいんだ。この時の私はまだ、自分は特別だから望んだ物を掴む力があると確信してた。

 それに自分以上に適任者はいない。自分が落ちる理由なんて無かった。だけど少しして、担任に言われた。それとなくだ。


「会長は実際大変なのよ。成績が落ちちゃったりしたら困るだろうし、私的には君には勉強の方をもっと頑張って貰いたいなぁ~なんて……どうかしら?

 考えてくれない?」


 それはどう考えてもあの力が見え隠れする言葉。ようは立候補を取り消さないかって言ってた。私は一応「考えておきます」とだけ言ってその場を去った。

 下手に反論して泣きつかれても困るからな。そして答えを伝えないまま、生徒会長選挙は迫る。するとその時期から校門前に何かを配る大人達の姿があった。

 それはパーティーの招待状? でもこんな場所で手当たり次第に小学生を狙うなんて怪しすぎる。


「おじさん達、小学校の前でこんな事してたら警察呼ばれるますよ」


 僕がそう言うと、その人達は爽やかな笑顔でこう言った。


「大丈夫、先生方の許可は取ってあるからね」


 許可が取ってある? じゃあこの怪しいパーティーも認可されてるって事だろう。その時、この端にかかれてる名前を見つけて納得する。

 それはあのバカな奴らの一人の名前。主催……って書いてある。用はこれは票取りパーティーか。お誕生日会が名目だけど、それは体のいい言い訳だ。


 けれど問題は、それを教師が許可したことだろう。本人が配らないのは立候補者だからで、この人達は部下か何か? 親が勝手にしたことで通す気らしい。

 でもそれでも、正しい事を通す事をしてれば人の心を動かせる……小学生の自分はまだ、そう信じてた。けれどそんな願いは儚く散った。


 生徒会長選挙の日、立候補者の演説の後の投票結果は、人は他人の価値を何を与えてくれるかで決めてる事を知った。

 パーティーで買収された大多数の生徒の票はあのバカに流れてたからだ。そして私は知っている。生徒達が言ってた。お土産と共に、「選挙よろしく~」と言ってた事を。


 そんな物で吊られる奴らが大多数……それも元から持ってる奴らが絶対に有利じゃないか。私にはそんな事が出来る分けない。

 現実は漫画や小説、映画の様に心をくみ取りはしないと知った。誰もが餌を与える奴らに尻尾を振る、バカばっかりだ。


「不正だ!」


 そう訴えても誰も相手にはしてくれない。誰もが分かってて、でも誰もが目を瞑り耳を貸さない。また私の前にあの力があるようだった。

 結局は何も変えられなく、一矢も報えず小学生時代は終わった。



 中学校は推薦でまたも有名な進学校に進んだ。そこは人生を勝ち組と負け組に分けた考えを押しつける様な場所だった。

 時間割はなんと十時間。朝にマイナスとゼロが加わり、六時間目の後に、プラスと補修が加わるそんな所。だけど授業に出て、成績さえ良ければ、後は校則なんて有って無いような物だった。


 有名だが、勝ち組を目指す学校だけ有って金持ちが集まる訳じゃないから、ああ言う金に物を言わせた奴は居ない。

 でも有る程度の奴らは居るわけで、それが成績も上位なら厄介にもなる。ストレスはかなり貯まるし、それは成績の下位グループへと向けられるんだ。

 社会の縮図を詰め込んだ様な学校……それはやはり気に入らない事だらけ。だけど誰もそんな様子には目を向けない。


 それは教師でさえも。勉強と授業に誰もが追われてた。私はそんな中、一人孤立して時々止める位はしてた。成績も上位だったし、人を寄せ付けない雰囲気を出してたせいか、一目置かれる存在に……でもだからって何が出来た訳でもない。


 あの日からずっと、自分の無力さと他人の移り気にイライラしてた。知ってる奴らはいいけど、小学校時の友人は全員別々で、また一からと成るとあの出来事のせいで誰かを信じる何て出来なくなってた。


 割り切れば良いんだろうけど、この学校ではそもそも話す機会が早々無い。白い無機質の校舎に、物がない教室。休み時間でもペンの音が止まないそこでは友情は育まれない。

 体育祭も文化祭も形式だけで盛り上がらないし、修学旅行なんて修学合宿なんて呼ばれてる。誰もが通過点としか考えない三年間は、荒んだ物で埋め尽くされて終わった。



 新たなる始まりは春。高校はあの荒んだ中学での勉強が実を結んで、有名な所に合格出来た。両親から離れての寮生活。

 初めての恋に、本当の挫折。そんな事が訪れる事に成る青春時代……その始まりは本当の天才との出会いから。私は自分が秀才だと思ってた。


 それだけで周りとは違うとも感じてた。だけどそれでもこの学校での入学試験では中盤位。秀才と天才の違いは努力では埋まらない物が有ると私は知る。

 あれだけだ……あれだけ毎日毎日、何かに追われる様に勉強してもこの位。もしかしたらそれ以上に勉強をしてただけかも知れないが、それでも私が居た中学から合格出来たのは数人だ。

 ここは努力を続けて来た秀才と、何かを持った天才が残酷にも集まって来たような場所。


 桜の花びらが舞い散った入学式から数日後、私には気になる生徒が居た。入学直後の変なクラスの緊張感の中、彼は一番の異彩を放ってた。

 まずいつも遅刻する。そして眠たそうな目で授業を聞いて、昼休みには学校からまた出ていく。そして放課後に成る頃に戻ってくる。


 それでも教師は何も言わない。そして誰も彼のそんな行動を追求しない。先生達は事情を知ってるんだろう。そして私たち生徒は、彼が入学式で代表を務めた事を見てるので、特別なんだと思うことが出来てた。

 別に嫌みな訳でもないし……まあそれだけで私は嫌な目で見てた訳だが。


 この学校は有名だと言っても、あの中学時代のソレとは全然違ってた。傍目に見れば授業が難しいだけの、普通の学校だ。

 休み時間になればガヤガヤするし、部活も幅広く生徒と教師とのコミュニケーションも取れてる。別に私はその輪にはなかなか入れないが、それでも殺伐とする空気の中に居続けるよりは大分ましだった。


 それに人恋しく成ってたのかも知れない……あんな中学生活のせいで。だからある日の放課後、この学校にある伝説の木の下に行ってみた。

 それは少し前に聞いたこの学校の言い伝え。そんな事を信じるバカが、この学校にも入るのかと思ったらそこにはリボンを持って登ってる奴が居た。


 でもなんだか……そんな事に必死になれる彼女に私は惹かれた。直後に私に気付いた彼女は落ちて、文句言われたけど、その後「責任とって」と言われて私は校舎の端の部屋へ連れられた。

 そしてそこで私は出会う。出会って居たけど出会ってしまった。本当の天才『桜矢 当夜』という人物に。

 第百四十七話です。

 まさかここで彼が出てくるとはって感じだけど、繋がりとは意外な所にあるものです。だけどそんなに掘り下げはしません。次でガイエンの過去は終わる予定です。

 このタイミングでダラダラとは出来ないですから。まあ本当はこの一回で終わらせる予定だったんだんですけど、これでも長くなったのです。さあ高校での出会いの後に何が有ったのか……ちなみにガイエンは今や大人なので、大学・社会人編とあるけどそこら辺は簡潔に行きたいです。

 ご了承を。てな訳で次回は水曜日に上げます。ではでは。

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