1466 校内三分の計編 126
バカラバカラ……バカラバカラ……
と軽快な音を立ててでっかい馬は進む。その速さはなかなかにあって、僕達が合わせて五人くらい乗って、更にその荷台もかなりの大きさなのに、馬はラクラクと引いている。思った以上にパワフルみたいだ。まあけど、自分で走るほうが速いけどね。せっかくの珍しい状態なのに、今の僕にはこの状況を楽しむ余裕がない。なにせ、全てはコードに見えてるからだ。てかこの馬がずっと走り続けられる理由がわかったぞ。
はっきり言って、かなり酷い事をしてる。このLROでは馬だって相当リアルだ。スタミナあるし、水とか上げないといけないし、ちゃんと心を通じ合わせないと、上手く操る……なんて事はできない。それだけリアルだから、実際に飼う人も育てる人もいて、なんか意識高い系の人たちの間では、LROでの乗馬クラブなんてのもある……とかなんとか。そこら辺は僕の住む世界とはかなり違うからね。縁がなくてまったくわからない。
でもまことしやかに聞いたことくらいはある。まあそれだけLROの馬はリアルって事だ。だからこそ面倒だけど、愛着だって湧く。けどそういう面倒さがあったから足にしてもいまいち使いづらさがあった。だからこそ今ここでテア・レス・テレスが提案してるヴァレル・ワンが注目を浴びてるんだよね。確かにゲートはあるけど、ゲートがあるのは基本人が住むところだ。モンスターは人里離れたところにいるし、貴重なやつ、アイテムなんかは秘境とか呼ばれるところにあるわけで……そこまで行く手段は大変だったわけだ。それを解決し得るヴァレル・ワンが注目されて期待されるのも当然か。そしてそれを盗むなんて蛮行にでたやつを皆で叩くのも……ね。
(この馬、なんか装備されてて、それで強制的に回復させられてるんだな。しかも……)
僕は馬の足回り部分を見る。たぶんだけど、何かついてる。コードで見てるからわからないが、間違いない。普通の視界なら、なんだろう……機械みたいなのがあるのかな? それはわからない。とりあえずそれがどうやら、足を強制的に動かしてる臭いぞ。ようはこの馬……強制的に動かされてる。走らされてるんだ。そして疲れて来たら強制的に回復役を投与する装置なのか、なんなのか知らないが、それによって長距離走行を無理矢理実現してるって感じだ。
「この馬……大丈夫ですか?」
「ああ、心配なんてないさ。この大きさだぞ。そこらの馬とは馬力も体力も桁違いだ。なにせ混血種だからな」
「混血種?」
「ただの馬では無いって事だ。こいつは伝説上の馬との混血らしい」
なるほど、LROはファンタジー世界だ。伝説的な馬……有名なのはユニコーンとかもいるらしい。だからそういう馬との混血種なら、たしかに特別な力をもっててもおかしくない。でも僕は疑ってるけどね。本当にそんな凄い馬なら、コイツラがこんな事をするをするだろうか? 怪しい。コードを見ると、色々と弄った形跡が見える。たぶんだけど、此の馬、生まれた時から、いろんな魔法や薬でドーピング付にされた馬ではないだろうか? それで体を大きくして、馬の意思を封じ込め、ただの移動手段とした……ちゃとしたブリーダーが知ったらガチギレしそうな馬だ。てか動物愛護団体もガチ切れするだろう。
でもここはLROでそんな団体の鑑賞はうけない。ゲームなんだからと、残酷な事を気軽する奴らが居たっておかしくない。こいつらはやっぱりそういう……そんな事を思いながらもどんどんと馬はレスティアを離れていく。