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「そうですね。あれは簡単に言うとスオウ――私が最後に相手にしてた彼はHPへの永続的なダメージを負ってたと言うことです」
「なるほどなるぼど、つまり彼は君を斬るよりも早くに、その永続的なHPへのダメージによって先に体力が尽きてしまったと。なんていう間抜けなんだ!! はーはっは!!」
なんだろう、イラッとする。それに周囲の僕を見る視線が痛い。皆が「この間抜け!!」っていってる気がする。
「この間抜け野郎が!!」
あっ、本当に言ってる奴がいた。勿論異世界行き隊のリーダーだ。とりあえず僕は無反応で帰しておこう。あんまり反応するのもね……ただの燃料になりかねないし……
「何か言ったらどうだ!?」
「そうだそうだ」
「HPの管理くらい常識だろうが!!」
「そんな初歩的なことも出来ないとは、残念ですな!!」
五月蠅い。反応しないのを良い事になんかめっちゃ言われてる。けどそこに擁護をしてくれるのは会長だった。
「違うんですよ。それには勿論トリックがあります。彼はスピードに自信があるプレイヤーですからね。きっとこのタイミングで行けばギリギリ間に合う、その計算があったはずです。」
「でも実際は間に合ってないじゃないか。それを間抜けっていうんじゃないのか!? ふぁー!」
このクソ司会者……どうあっても僕を間抜けにしたいらしいな。だからそこにトリックがあるって言ってるじゃん。そこら辺もっと掘り下げろよ。何の為に会長を呼んでるんだって言いたい。ほら、流れてる外野からのコメントも荒れてるぞ。
「ふふ、それは上手く私の改ざんが言ってたという事ですよ。確かにまんまと私の術中にはまってた――と言えば間抜けに見えるかもですけど、あの状況で気づける人はそうそう居ないと思います。私の力は戦闘に向いた物ではないですが、小細工はとっても得意なんですよ」
そう言って会長はペンを取り出して空中に書く動作をする。まあこの時は別に本当に空中に何か書いてるわけではない。本当にただの動作だけだ。
「そういえば君の力もなかなかに謎だけどさ、どうだい? ここでちょっとはそれを明かしてみては? そうしないとその彼の間抜けさは晴れないんじゃないか?」
おっ、あのクソ司会者がここに来てまともな事を言っている。でも……会長の力は祝福によるコードに介入できることが大きい。祝福と元々持ってたあのペンがベストマッチしてるんだ。どういう風に言うんだ? それともやっぱり、手の内は明かせないって事で言わないのか……その場合やっぱり僕が間抜けな奴って事に成る。いや、外野がなんと言おうと良いけどね。祝福って実際、広まったらめっちゃ非難されそうな力じゃん。直接LROの内部をいじってるような物だ。
それが公になるのは不味い気がする。どうするんだ?
「そうですね。私はこの自動書記ヨハネのペンで軽くシステムの表層をいじれます。紙と組み合わせることでプログラム的な事を実行できますね。それによって彼が見えてるHPの減少と実際の減少を乖離させてただけです。そのくらいは簡単ですよ」
「なぁぁるほどおおおおお!! 確かにそれは気付かないのも道理。流石はナンバーワンチームのリーダーアアアアアアアアアア!! やる事がエグいぞおおおおおおおお!! あの沢山の敵を一人で相手にしてる間にそこまで仕込んでたのかああああああああああああ!! 凄い! 凄すぎるぞ会長おおおおおおおおおおおおおお!!」
「いえ、もっと前に仕込んでたんですけどね」
会長のそんな言葉はどうやらあのクソ司会者には届いて無い。ただただ、叫んで会長すげーでなんか強引に終わらせてた。まああれで全員が上手く会長の術中にはまってた……って事に成ったかな? それなら良いな――と僕は思う。