表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
1317/2701

1317

 エリアバトルが終わりを告げた。あと一歩……あと数秒……いや数コンマあれば勝ててたはずだ。でも……それはもしもでしかない。多分僕たちは会長の手の上にいたんだろう。最初から全ては向こうから用意された場所だった。それならあいつなら全ての流れをシュミレーションするくらい出来るだろう。結局僕たちその流れに沿ってしまったって事だろう。


「ここは?」


 僕は戦闘が終わったら戦闘の前に全員が集まってた場所に戻るのかと思ってたが……なんかそんな雰囲気ではない。暗い場所だ。けど暗黒って訳じゃない。何かが流れて行ってる。けどそれも大量って訳じゃない。途切れずに流れてるが、それだけではここを照らすには物足りない……そんな感じの流れ方。明らかにシステム側の領域だと感じる。


「私の手を取ってれば勝てましたよ?」


 そういって暗闇の中通り過ぎる光から浮かび上がる存在がそう言ってくる。そいつは丁度姿が見えるか見えないかくらいの位置で立ち止まった。うっすらとシルエットが浮かび上がる程度の距離感。でも……僕にはその存在が誰なのかわかってる。


「お前は別に連合軍って訳でもないだろ。そもそも……お前の力はズルみたいな物だ」

「それは酷いですよ。存在したときから持ってた力がズルなんて言われるのはショックです。だって誰だって才能って力を持ってるじゃないですか。今のスオウの言葉はそれを否定することですよ? それに私は、才能ほど理不尽じゃない」


 そう言って不気味に笑ってるのがわかる。こいつ……そもそもそれは本当に持ってた力か? 僕にはこいつの存在がどんどん大きくなってるように感じるぞ。


「誰だって才能を比べる。と言うかそうするしかないですよね。何せ社会のシステムはそうなってるんですから。本当に誰とも比べたくなかったら頂点に行くしかない。でもそんなの大半の人達は不可能で、大半の人が限界って奴を知るんです。面白いですよね」

「そこで面白いは変だろ」


 こいつはどこか感覚が狂ってる。そもそもが僕たちと同じ思考回路なんて持ってないからな。ただ人の姿を取ってるだけで、こいつは人という存在じゃない。


「面白いですよ、面白くて大好きですよ。私は、沢山の存在を知りたいんです。そして沢山の心を知りたい。そして、可能性の力を私に組み込むんです。そうしたら、私も人間になれるって思いませんか?」

「僕はそんな頭良くないからな……お前が何を言いたいのかわからない。人間になりたいのか? それは嘘だろ?」


 よくある話しとして、人間じゃない存在が人間になりたいってのはある。けどこいつはどこかそれとは違う気がする。確かにこいつは僕たちに興味津々だ。常にこのLROで運営側と違う方向で暗躍してる。そして今回のエリアバトルだってそうだ。こいつはちょくちょく介入してた。そうやって自分の望む物……こいつの言葉を鵜呑みにするのなら、人間への道を模索してるって事に成る。でも……僕はそれなりにこいつとは付き合い長いからな。こいつがただ人間への憧れがあるなんて思えない。興味はあるだろう。けどそれが憧れなのかというと……こいつは人間を実験動物程度にしか見てない気がするんだよな。


「嘘なんて、どうしてですか? 私は貴方たちの魅せる可能性にいつだって胸を打たれてるのに。まあそれで言えば今回はちょっと残念でしたね。やっぱり可能性領域を開いた人達で本気でやってもらいたいです。その場、用意して良いですか?」

「面倒なのは嫌いだからやめろ」

「ふふ、大丈夫ですよ。きっと楽しくしてみせます。だから、スオウも自分のチームを作ってください。乗っかってるだけじゃ、せっかくの可能性が潰えちゃうかもですよ」

「ローレは……可能性領域を開いてるんじゃないのか? 一つのチームに二人居たって良いだろ」

「それじゃ、私が困ります。プンプン!」

「下手なキャラ付け止めろ」

「ダメですか? まあ不評ならやめましょう」


 そう言って一度くるっと回って背中を向ける。そして頭を傾けてこっちを見てこう言うよ。


「スオウがあのままローレちゃんのチームに居るのなら、残念だけどどうにかしないとならなくなります」

「脅迫か? ローレ自体をどうにかは出来ないだろう? あいつだって可能性領域を開いてる」

「そうですね。可能性領域を開いてる存在は貴重だから、あの子にはこれからも踊って貰う予定。でもスオウには私の予定外で行動して欲しいんですよ。可能性が一番強いんだから私の予想外の事をしてください」


 なんだその一方的な言葉は……それにそれは……ローレの事をまるで操ってるかのような言い草だ。あいつはそんな簡単な奴じゃないだろう。


「あいつはお前に操られるような奴じゃない」

「そうですか? でもそれは、スオウが彼女の事を知らないからですよ。何で彼女の精霊との繋がりはリセットされなかったんでしょうね? 他の全てのプレイヤーはリセットされたというのに」

「お前! いつから!!」

「スオウ、私は一番君の可能性に期待してるんですよ。だからもっとLROに身を入れてください。リアルなんてリアル以上の事なんか起きないですよ」


 そんなことをいって奴は消えていった。そしてそれと同時に僕の体もこの空間から出されるようだ。とりあえずまずはローレだ。あいつが今までないくらい心配になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ