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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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転生

 俺がやられても諦めないでいてくれた仲間達。その思いが、今と言う瞬間を繋げてくれる。俺に与えられたもう一度だけのチャンス。それを結果に繋げる為に、俺は今再び、あの戦場へと舞い戻る。


 あの日の映像が泡となって消えていく。暗い場所で俺はずっと漂ってた。上も下もない、空も大地も無い、そんな真っ暗な世界。

 LROの世界なのどうかも分からない。夢……まさに夢の中で夢を見てる感覚だ。さっきまでは見上げた場所に消え行く前の過去が映ってた訳だし、何なんだろうって感じ。

 そんな中、暗闇の中で自分と同じ様な人達が漂ってるのに気づいた。いや、違うな……アレは


「俺?」


 同じ格好同じ背丈でどうみてもアレは自分自身にしか見えない。それに上にも下にもいやがる。無数の自分……なんだこれは?

 すると一人の自分が側に漂ってきて何やら言い出した。


「もう、一年位前の事だろ」


 それはさっきの過去の事か? 確かにもう一年位経つだろうな。そして今度こそはと思った筈だった。けど……この状況はさ。

 漂う中で拳を握りしめる。実際どうやってこうなったのか曖昧だ。あの瞬間……あの渦に自分が飲み込まれてどうなったのか、実は良く分からない。


 だが決して良いようには成ってない……そんな気はしてる。でも、ただ戦場に倒れさせるだけじゃなくあんな物見せるだなんて、LROも結構キツい事してくれる。


(そうなんだよな……きっと俺は……負け……)

「――だけど、ずっと後悔してた」


 心の声に被ってきたその言葉に俺は思わずハッとする。誰が言ったんだ? 俺は周りを見たけどそれを確認する事は出来ない。

 てか、確認する必要があるのかだ……だって、こいつら全員俺なんだから。すると至る所声が聞こえ出す。


「そうそう、だから指輪を置いてきたんだ」

「でも無責任って意味じゃあれも結構酷だったよな」

「しょうがないだろ。俺だって一杯一杯だったんだ!」

「本当に全部捨てるつもりだったなら指輪も捨てるべきだった」

「でもそれだけは……俺にとって無くしたくない出会いだったんだ」

「でも捨てた。いや、指輪を残したんだから逃げ出したが正解か。放って置いたとも言えるな」

「それなのに随分俺って都合がいい。逃げ出した癖に待ってて欲しいんだから。それに最初は戻ってくる事なんか考えてもいなかっただろ」


 次々と至る所からあがる自分の声。それはどれも全部自分の思いその物だ。だけどだからこそ、辛い物がある。耳を塞ぎたく成るような事ばかり言いやがってる。


「やめろよ……そんなの分かってる。俺が無責任に自分の望みを押しつけた。思ってもなかったのに、そんな日を夢見てだ!

 何がその意味だ! そんなの逃げた俺には望む資格すらなかったのに……」


 そうなんだ望む資格すら無かった。だけどアイリは「待ってた」って言ってくれたっけ。それにコレもずっと付けていてくれた。

 俺はポケットの中から一つの指輪を取り出した。それは揃いのあの指輪。でも……俺は遅いからいつだってダメなんだ。


「確かに資格は無かったと思うな。俺は本当にダメダメだった。それなのに縛ろうとするなんて……」

「仕方ないだろ。忘れられたく無かったんだ!」

「ダメダメだな~」

「ああ、俺ってダメダメだぁ~」


 大きな合唱に成って自分を卑下する俺達。間違っちゃいないけど、これだけ大勢の自分が一斉に肩を落とすのは複雑な気分だ。

 けどそんな暗い気分の中、俺の中の誰かがポツリと言った。


「でも……戻って来たんだよな俺は」


 その言葉は不思議と大きくも小さくも聞こえた。そしてあまねく俺達全員はハッとした筈だ。暗闇の中で頭が上がるのが幾つも見えた。


「ああ、戻ってこれた。今度こそはって思ってさ」

「だけど一回逃げちゃったな。指輪も今度こそ捨てられた。これで終わりなんだと思った」

「だけどあの頃とは違ってた」

「あの頃とは違う繋がりの仲間が俺にはいる。上下関係とか尊敬とかで俺を見ない仲間。でも前のみんなが悪い訳じゃない。俺が弱かったのが悪いんだ」

「ああ、弱い俺が悪かった。でもあいつ等は弱い俺も知ってるから、楽だったんだ。それにリアルにはもっとデタラメな奴がいるし……ほんと、アイツ等の小芝居には笑ったな」

「確かに、何だよあのヒーローショウ。けど、本当の気持ちが聞けた」

「行く決意が出来たよな。これ以上放さない為に」

「けれど、またこの様って……」


 再び暗い空気が広がる気配。本当に何やってるんだ俺って感じだもんな。終わってしまったのかも知れない事を考えるとどうしても……するとその時、どこかの俺が意外な事を口にする。


「おいおい、何言ってんだ俺達。俺は確かに一人で戦ってたけど、あの場に居たのは俺達だけじゃないぜ」

「だな、頼りに成る奴らが居たはずだぜ!」

「そうだぜ、でも気づかないのはそれを届けさせ無い心があるからかもな。どうなんだよみんな! 俺達は諦めちまうのか?」

「もう痛いのも苦しいのも投げ出すか? まあそしたら次はきっと無いだろうけどな。約束も守れない。指輪も主人の所には戻らない」


 俺は自分が言ってる事なのに、そいつ等の言ってる事が分からなかった。でも何となくは感じる物がある。暖かい何かが目の前に有るような……無いような。

 すると俺と同じような俺がポツリポツリと声を上げる。


「そんなの……ダメに決まってる。今度こそって思ったんだよ俺は!!」

「ああ、なんか分からないけどまだやれるのなら、槍は置かない!」

「何回も迷って、躓いた。けどその度に今回は立ち上がってこれた……なら今度もきっと、諦めるには早いって事なんだろう」


 そんな前向きな事を言う俺が、何故か光を放って消えていく。そして俺の中に戻っていくんだ。何が起こってるのか、よく分からない。

 だが、次々と覚悟を語った俺達は光と成って俺の元へ集ってきてた。そしてそれは次第に真っ暗だった空間を照らす程の光に成っている。

 俺が俺の中に入ってくる度に、何だか力強い心が増していく……そんな感じがしてた。それはまるで命が戻っていく様な……


「で、俺はどうなんだよ? 最後は俺だ。その前に俺自身の思いを聞かせろ」


 目の前に居る俺は俺だ。なのに答えを求めるのか? きっと分かってると思う。だけど俺がそれを望むのなら、一つに成る前に聞かせるのも良いのかも知れないな。

 体が光る俺達はきっと、迷って迷って、だから出てきた物なんだと今なら思う。だから最後の奴は、迷いの無い言葉をこうやって求めてるんだ。


 俺はいつの間にか立っている。二本の足で力強く、みんが照らしてくれた空間にさ。目の前には俺の顔……気持ち悪いなんて今更だ。

 だから少し笑いながら目を閉じた。思い浮かべるのは仲間達の顔だ。


 今回の作戦に協力してくれたみんな。エイルにリルレット。シルクにテッケン。ノウイにセラ。セツリにスオウ……そしてアイリ。

 そう言えば、スオウの奴は上手く行ってるんだろか? けど大丈夫だな。アイツこそ、諦めたりしない奴だ。だから互いに信じてやってる訳だし……最近は随分と情けない姿アイツに見せてたし、これ以上はダメだよな。


 アイリ……もう一度、この指輪を受け取ってくれるだろうか? 全てが終わったら、俺はもう一度……そう決意して瞳を開く。

 そして真っ直ぐに見つめるは自分自身だ。


「俺は……弱い自分にも、間違いだしたガイエンにも勝つ!! 今度こそ俺が止めなきゃいけないんだ。あの時、止められなかったからこそ今!!

 アイリは当然に助ける! そしてガイエンも……出来れば助けたいんだ。それがどういう事かは分からないし、アイツは求めても居ないのかもしれないけどさ。

 でも……やっぱり分かったんだ。過去を見て――」


 するとこの時、光俺が拳を突き出して来た。ニカッと笑ってさ。だから俺もその拳に拳を合わせて、最後の言葉を紡ぐ。


「――アイツも俺の友達だってさ。憎らしくてムカつくけど、アイツがいたから出来た事も沢山ある。最初の望みを、アイリに叶えさせてやれたしな!」


 それからの諸々の苦労なんて二の次だ。あの時のあの望みがアイリの願いだったんだからな。それにアレで暗くなってたアルテミナスを照らせた。

 それだけで十分だ。俺は同じ様な笑顔を目の前の自分に返す。すると最後の一人も体の内に入っていった。また一つ枝葉が広がり、それに伴って一回り自分が自分である感覚が強くなる。


 暗くどんよりとしてた空間は今はない。自分の気持ちの持ちようなのかどうかは分からないが、沢山の自分のおかげでこの空間は照らされた。

 胸に手を置くと熱い何かを感じる気がする。それは全身を巡り巡ってるんだろう。あの日の迷いも後悔も……終わらせる為にもう一度俺は向き合うんだ。


 アルテミナスに入ってずっとそれを思ってた筈だったけど、それと向き合える迷いが晴れたのは今の様な感じだな。


「そろそろ行くか」


 俺はそう呟いて上を見る。するとこの空間のかなり上の方で一際輝く何かが見える。それは実際、止まってる訳じゃなくその場で無限を描く様に動いてた。

 まるでこっちに来たいのに来れない……みたいな感じ。それを見つめてると自分自身の中から声がする。


(アレが何か、一つに成ったんだからわかるだろ? 届かなかった声が届いてる筈だ)


 そんな事を自分自身の誰かが言う。まあきっと最後のアイツ何だろうけど……でも実は、確かに届いてた。アレは仲間の伸ばした手だってさ。

 俺はやっぱりと言うか、実際敗れたんだろう。だけどそれでも仲間達が頑張ってもう一度チャンスをくれてるんだ。引っ張り上げようと、実はずっとしてくれてた。


 それを無意識で拒否してたのは俺だ。蘇生魔法を拒否するなんて今まで無かったから知らなかったけど、それが出来ない訳じゃないんだな。

 だが、やっぱりその必要はないってわかった。まだ自分で終わらせる事なんか出来やしない。きっと仲間達が必死に作ってくれた最後の光……これは試合後のロスタイムみたいな物なのかも知れない。


 でも、そこで起きる奇跡だってあるわけで……全てのチャンスは結局、自分次第なんだよな。そしてチャンスは掴まないと始まらない。チャンスは結果じゃないからな。

 俺は天に手をかざす。


「降りてきてくれ、みんなの思いを受け取るからさ」


 すると八の数字を描いてた光が直上で動きを止めた。そして手のひらの分だけ開いた様な隙間から光が射し込んでくる。暖かく力強い光……力強すぎて、まるでみんなが俺をひっぱたいてるかのよう。

 まあ、誰にも文句は言えないけどな。だが目が覚めるよ。チャンスはありがたく受け取った。後は今度こそ最高の望む結果を掴むんだ!

 俺は戻ろう。あの戦場へ。仲間が居て、友が待つ……大切な人を取り戻し、そしてアイツを打ち負かす為に。




「ぐああああああああああ!!」


 喉の奥から裂ける様なそんな悲鳴が耳を打つ。赤い炎が視界の至る所で揺らめいて、熱い熱気がこのタゼホ全体を覆ってた。

 そんな中、ドサッと何かが落ちる音が聞こえた。それは悲鳴が聞こえた場所からだ。


「ふふははははははは!! さあ残り何人だ? さっさと始末して本命に行きたいんだがな」

「それならば、我々にお任せ頂ければガイエン様はそちらに迎えるのでは?」

「まあ、確かにそうなんだが――」


 あの悲鳴は私達の仲間が奴らに殺された声。これでもう半数近くが犠牲に成ったことになる。けど、それでもここでやられる訳には行かないの。

 彼が、アギト様が目を覚ましてくれるまで、私達はみっともなくても逃げる事しかできない。だけどそれでもこの小さい村から出ることも叶わなかった。


 情けない……このままじゃじり貧だ。そんな事を考えてると、不自然な所で切られた言葉。そして通りへと黒い影が伸びてくるのが見える。

 そして次いで姿を現した化け物は、真っ直ぐのこちらを見ていた。燃え盛る建築物の塀の内側、更に植物で身を潜めてた筈の私達の方を迷い無くだ。


「――ネズミ狩り程度の時間はあるさ」


 悪寒が全身を貫いた。


「っつ!! 逃げて!!」


 その瞬間、後ろで炎に巻かれてた建物をも巻き込んで周囲が砕けた。何が……何て今更過ぎて口にも出せない。これは間違いなくカーテナの力。

 私達は幾百の瓦礫と共に吹き飛ばされた。


「くっ……けほっこほ」


 焦げ臭い香りと、抉られた地面の粉が周囲に待って喉がザラザラする。崩れさった建物の炎は、あの衝撃で消え去って白い煙を瓦礫から立ち上らせてる。

 脆くも形を失っていく、建物の燃え尽きてた部分。その炭の破片が風に乗って向かう先から変なシルエットが見えてくる。複数の足音を引き連れて。


(やばい……)


 まだ全員が捕まる訳にはいかない。でもみんながどうなったのか分からない。あの攻撃でバラバラに吹き飛ばされたみたい。


「さあて、次はどうしてみせる? まあ幾ら待ったところでアイツは目を覚ましはしないだろうがな。そして目を覚ました所でどうにもならんよ。

 結局はもう一度殺すだけだ」


 そんなガイエンの無情な言葉が煙の向こうから聞こえてくる。確かにアギト様が再び目を覚ましたからって今のアイツに勝てる見込みは低い。

 そんな事分かってる。カーテナを持ち、姿形まで変わってしまったガイエンを倒す何て本当なら不可能にも思える事。それは誰もがそう思うから私達は待ってるのよ。


 だってアギト様だけが本気で倒そうとしてるから、だから最初から諦めてる私達なんかじゃ駄目なの。私達は自分達じゃ勝てないって思ってるもの……そんな私達にはチャンスも奇跡も起こり得ない。

 だってそうでしょ……そういうのはいつだって信じる先にあるものだもの。私は拳を握りしめて立ち上がる。


(今度は私の番かな)


 どうして圧倒的に不利な私達が未だに生きて居られるのか……それは犠牲に成っていった仲間が居るから。彼らはみんな信じてた。

 絶対にアギト様が目を覚ますって。そして自分達の犠牲を無駄にはしないって。出入り口も固められて、上回る数での捜索。


 見つかる度に、あるいはその前に視線を拡散させる時とか囮になってくれた。そしてしばらくすると、同じ様な叫びがタゼホに響くんだ。

 辛かった……だけど、その思いを無駄になんか出来ない。そしてその役目がようやく私にまで回ってきたってだけよ。


 どうやらこの煙でまだみんな見つかって無いようだし、一番悪いクジを引いたのが私でまだよかったくらい。アギト様を担いでる方へ行かれたり、一人での戦闘がキツいシルク様の方じゃなくてね。


「誰かはわからんがまた一人……いい加減にすがりつくのはみっともないぞ。教えてやろうか? アイツにはそんな価値はないとな」


 ガイエンがこちらを向いてるのがわかる。そしてゆっくりと腕を上げるのもシルエットだけで十分に見えた。


「いい加減飽きても来たし、そろそろ終わらせよう。無駄な抵抗を無駄なままにな」


 それはつまり、もう逃がす事はしないって事かな。後ろの方に居るはずの親衛隊も動き出した音が聞こえてくる。他にも周りに居るのは確実なんだから、探しに行こうとしてるって所かな。

 だけどそれは困ることだよ。行かせる訳には行かない。ガイエンはきっと私を一撃で決めようとしてる筈。でも、そうはいかない!


 私は振り卸されてる腕へ向かって、速攻で組んだ弓から矢を放つ。操れるこの矢は、どこにだって百発百中なんだから。


 矢は煙を貫いてシルエットへ向かう。そして霞む腕へ向かって突き進んだ。肝心な場所が動いてるせいでよく見えない何て最悪だ。だけどそこは、今まで聖典で鍛えた感覚で補う。

 遠隔操作系の武器は自身でも周囲を認識出来る様に成ってる。だからこそ、多くなるほどに情報量が多すぎて操るのが難しく成るんだもの。


 だけど私なら、この程度の操作は朝飯前。例え私自身の目で捉えられなくても、武器が私に教えてくれる。

 次の瞬間、私が地面にめり込んでるか、立ってられてるか……それだけだもの。私は目を閉じて感覚を放たれた矢へ。


 猛スピードで過ぎていく視界。風を切る音までもがハッキリと聞こえる。そしてここでなら・・ほら分かる。ガイエンの腕の動きが。

 矢はあり得ない軌道で腕を貫く位置へ移動する。そして……


「ぬぐっ!?」


 余りにも薄い反応。だけど確実に腕一本を貫いた。そして予想外に自分達の主が傷つけられた事で同様が走る親衛隊。

 ガイエンにあまり効いてはいないようだけど、取りあえず親衛隊の動きが止められたのなら上出来かな。私もちゃんと立ってるしね。

 だけどこの一撃で誰かは知られたみたい。


「この矢……セラか。本当にお前だけは惜しいよ」

「それは光栄だけど、余裕ぶらない事ね――ってそれは無理よね。あんたって前から自信だけは持ってたもの!」


 いつだってちょっと上から周りをみてる節があった。だから最初会ったときから、ガイエンだけは好きになれなかったのよ。


「ふ、今や誰にも文句さえ言われぬ力がこの手にあるがっ――!?」


 言葉と共に貫かれた側と反対の腕を振ろうとしたガイエン。だけどそれは叶わなかった。何故なら、私の攻撃はし喋ってる間にも続いてたから。


 腕を貫通した矢は周囲を回ってもう一度、今度は貫くんじゃなく、矢尻から伸びてる光の糸みたいなので、もう一方を巻き込んで上方へ引き上げたんだ。

 これで両腕は振れない。つまりカーテナは使えない。


「言っとくけどね! きっと次のアギト様は違うわ。だって三度も同じ敵に負ける人じゃないもの。私達はいつまでだって信じてる。

 アンタを倒すって心に決めてるあの人の思いを!」


 そう叫んだ瞬間、私は腕を振って小さなボールを手へ落とした。そしてそれらをガイエン向かって勢い良く投げつける。

 だけど直撃する前に奴の足下から伸びた影に邪魔された。


「ふん、こんな物で私が倒せるとでも思ったか?」

「まさか、言ったでしょ? アンタを倒すのは私達じゃない、アギト様だって。だからこれでいいの!」


 そう叫んだ直後、小さなボールはその場でピンク色の煙をまき散らして弾けていく。するとガイエンの周りの親衛隊が次々と倒れてく。けど流石にガイエンには効果が無いみたい。


「睡眠薬か何かか。結局は時間稼ぎ。だがなセラ。こちらも言ってるだろ。稼ぐ時間に意味などないと! 私一人でも、お前達もアギトも十分に捻り潰せるさ!!」


 その瞬間、ガイエンは強引に光の糸を引きちぎった。そしてその時、腕を振った衝撃で周りの煙が晴らされた。


「セラちゃん!」


 晴れた煙の向こうにシルク様達の姿。向こうはそれなりに固まって吹き飛んだ様だ。でもあれは不味い。このタイミングでの位置バレは致命的。

 カーテナは視界に捉えただけで広範囲を潰せる。


「逃げ――っつ!!」


 間に合わない……そう思った。だから私は走り出した。一番近い私しかいない。手元で暗器を組み替えて剣の形にしていく。

 ガイエンはもう、口元をつり上げて向こうを見てた。振り上げられる腕。私はとっさに剣を止めて形状を更に変えて放り投げた。


 その形は手裏剣。それは奴の腕を切り裂いた。だけどもう片方を防ぐ術は私にはない。体が思ってもない方へ飛んでいく。

 あらがえない力……やっぱり圧倒的。


(私はここまでの様です……だけど……アギト様なら……)


 燃え盛る炎が見える。それか次の攻撃が先かもしれない。どちらにしても戦力は削れたよね。なら良くやったで良いかな?


「良くやった……だが、まだ逝くなよセラ」


 あれ? おかしな夢見てる。私は今、力強い腕に受け止められた。そして霞む視界に炎の様な赤い髪が見える。

 第百三十一話です。

 遂にとうとうもう一度、二人は邂逅します。きっとこれが二人の最後のぶつかり合いでしょう。役者は揃いつつある。ラストに向けてこのまま一気に駆け抜けます! 皆さんが納得出来て驚ける様な事が書けますように願っててください!

 てな訳で、次回は土曜日に上げます。ではまたです。

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