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「何を! 何をやってる貴様あああああああああああああああああ!!」
「さっさと倒れろよおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
男色艦隊のリーダーと異世界行き隊のリーダーが会長……というか会長の残骸とも言う感じになってるその体に刃を通していく。すると会長はそんな二人の激情さえも涼しい顔をしてこういうよ。
「お二人はなかなか特殊でした。流石です。敬服します。ですが、柱となってください」
次の瞬間、二人のリーダーはこの場から忽然と姿を消した。その衝撃はなかなかだった。どんどん消えていく仲間が居る中でも……それでも皆が恐れずに攻撃を続けれたのは勿論後方の熱い支援もそうだけど、やっぱり前線で……最前線で戦い続けてるあの二人がいたからだ。それに二人はリーダー。それぞれのチームの奴らは自分たちのリーダーが消えた事で不安にならないわけ無い。でも――
「止まるな! プッシュプッシュプッシュだ!!」
更にバフが掛かる。アンブレイクカンパニーのリーダーも会長の仕掛けはわかってないだろうけど、もう押し込むしかないって考えなんだろう。なにせ向こうはもう会長一人だ。既に十数人なってしまったといっても、それでも数では圧倒的。
私はアンブレイクカンパニーのリーダーによって強化された魔法攻撃力を乗せて魔法を放つ。
「ん?」
私の魔法が当たる直後、初めて会長が動いた。いやそれは当たり前の行動と言えばそうだ。いままで其れさえしなかったのがおかしい。なにせ私達は全てをかけて攻撃してる。絶対に一人で裁ける事が出来る訳無い攻撃の量。実際会長はただそれらを受け入れていた。
でも今、はじめて避けた。
「避けた! 奴の種は切れたに違いない! 畳みかけるんだ!!」
アンブレイクカンパニーのリーダーがそう声を出す。けど次に会長に攻撃を届かせた奴の攻撃は会長の体に食い込んだが、さっきと同じようになんでもない顔してる。会長の体を確かに傷つけてはいるが、そこには余裕しかない。
(もしかして……私だけなの?)
そういう疑問が沸く。でも私も何回も攻撃は当ててる筈だ。今更避ける? 私は派手さを犠牲に正確性と追従性が高い魔法を選択してくりだす。
「づっ……」
『ローレ、無理しすぎです』
「まあ、ここまでヤル気はなかったんだけど……しょうがないじゃん。弱い奴らが頑張ってるんだしね。一応付き合ってあげるわよ。今は仲間……なんだもん」
私は頭痛を気合いで押さえ込む。並列高速詠唱に遅滞魔法。そしてそれらを更に同時に制御しての魔法の行使。全て脳を限界まで使う様な事だ。元々、めっちゃ疲れるからあんまり長くなんてしたくない。けど、私だけ早々にリタイアなんてできないじゃん。
会長がやってくれたら言い訳も出来るけど、私と会長には距離がある。そして前衛達の壁。まあ、もう殆ど前衛と呼べる奴らもいないけど。今前衛に出てるのは元は後衛に居た奴らだ。ギョクリが大量のMP回復役を用意しては居るけど、魔法の行使は其れとこれとは別だ。
確かにMPを回復すれば何度だって挑戦は出来る。なにせMPを失うのは魔法の発動を失敗したときだけ。詠唱をミスしたときだけだからだ。でも……詠唱は頭を使う。めっちゃ使う。頭がもう無理と言い出すと、MPが幾らあっても失敗しかしなくなる。そうなると……ね。
ここにいる皆、もう普段からは考えられない位魔法を使ってきた。確かにボス戦とかでは長く戦う時はあるけど、新しくなったLROしか経験してないと、それはエリアバトルでしか経験してないって事になる。皆、まだまだ経験が足りてない。もう大体の後衛が魔法を使えない状態。一人だけ、初心者っぽい子だけが頑張ってるが……あれじゃあ、焼け石に水だ。
「これで……後は五人」
消えていく会長の周りのプレイヤー達。それを見て、アンブレイクカンパニーのリーダーが周囲に出してたウインドウを消した。
「どうやら、会長が警戒してるのは貴様の魔法らしい。私が奴を抑えて見せる。まだ、撃てるだろうな?」
「誰に物を言ってるのよ?」
「自分もやるぞよ!」
「わ……私も!」
アンブレイクカンパニーのリーダーは打って出るようだ。そしてそれに残った皆も続く。私はどうあっても魔法を当てないといけない。それで倒せるかなんかわからないのに……それでも誰も諦めないのなら……私が決め手上げようじゃない。