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「ふーん」
私の放った四本の矢は会長へと刹那の瞬間に吸い込まれた筈だった。でも実際どうやったか分からないけど、会長は私の攻撃をよけている。
避けられた矢ははるか彼方へと過ぎ去って、その分の力は無駄になる……と誰もが思うだろう。
事実あの会長だってそう思った筈だ。けど私は認めないよ。私は私の攻撃が当たらない事実なんて物を認めない。
「メノウ」
私のその言葉の直後、会長の顔が驚愕に染まった。ようやく、わたし好みの顔になったじゃない。
何が起きてあの会長の顔が崩れたかって? そんなのは簡単な事。ただ、私の放った矢が、魔法陣に再びあると言うことだ。新たに作ったわけじゃない。それを会長も瞬時に気づいたことは流石って褒めてあげる。私はただ、私の魔法が当たらなかったからその事実をなかったことにしただけだ。
『私の攻撃が避けられた――私が魔法を放った――』
その二つの過程を巻き戻しただけに過ぎない。
「いけ」
私は再び矢を放つ。だけど再び避けられた。
(いや、今のは避けたと言うより――)
とりあえずまだ確かじゃない。私は三度、彼方へと過ぎる矢を巻き戻す。
「当たったという事実が出るまでやったげる」
「反則……じゃないですかそれ?」
「お互い様でしょ」
何回も巻き戻してる私もだけど、これを何度も避けてる会長も大概だ。だからお互い様。普通こんなに避けられる物じゃない。勿論会長には何か種がある。その種が何かを暴く気はさらさらない。
ただ私は会長に届くまで、数を増やしてくだけだ。
五回目の矢の発射の後、リルフィンが会長へと爪の刃を放つ。会長は足場を紙で作ってそれをいつの間にか複数仕込んでる用だ。
その間を瞬間移動ばりに行き来してる。だからリルフィンはその足場を狙った。 リルフィンの爪の刃が会長の周囲を駆ける。さらにエアリーロも動いてる。
エアリーロは風を会長の中へと仕込んでた。会長が紙を出したタイミングで服の内側から吹き荒れる風で、紙が大量に宙に舞う。
勿論、これが全部じゃないでしょう。なにせこれは実態として持ってた紙だ。インベントリにもあっておかしくないし、普通はインベントリに入れてる物だ。
だからこれが全部じゃないにせよ、今会長は無防備になった。システムに干渉してる紙を一時的にでもなくしたんだ。
再び私の魔法陣に矢が戻る。
「さあ、どうする?」
私は挑発するようにそう言って矢を放った。会長へと吸い込まれた矢は、対象を消滅せんと大きな爆発を起こした。