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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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「それで、会長を出し抜くために何するんだ?」

「そんなの決まってるじゃない」


 そう言って一呼吸置くローレ。そしてこういった。


「オルガトを使う」


 その瞬間、何やら生暖かい不穏な風が吹いて、何かの怨嗟の声を聞かせた気がした。あいつはあんなでも闇の精霊である。冥府と現世の管理者であり、死神として広く知られた存在だ。まあオルガトという名前よりも死神という言葉が先行して広まったから、別物と思われてるみたいだが、どうやら死神とオルガトは同一人物らしい。

 そんな設定が書いてあった。


 オルガトは自分の『オリジン』にもいるから、実は四体呼ぶ召喚獣の中にいれて、ずっと半呼び状態ではあった。器用な事をする物だけど、たぶんこいつにしか出来ない。いつでも僕のオリジンの為の処置だ。でも今回はオリジンではないんだろう。

 純粋なオルガトの力を行使するって事だと思う。


「一応それって切り札の一つだろ? いいのか?」


 オリジンなら、既に会長には知られてる訳だし、そっちを使った方がこっちの手を明かさずにすむ。そういう意味で言ったんだが、ローレは首を振る。


「オルガトも切り札の一つでしかないわよ。それに切り札は切らないと意味ないでしょ? 後生大事に隠してて負けたらどうするのよ。それに、私がここでオルガトを使う事で会長は一つ油断するわ。私に切り札の一つを使わせたってね」

「なるほど……切り札もお前に取っては布石か」

「私はあんたと違って手が多いからね。これで高見の見物してる会長を引っ張り出すわよ」

「了解!」


 そういうことなら、否定する理由はない。こいつに取ってはオルガトも手駒の一つでしかない。切り札ではあるが、それが全てではないってうらやましい。僕にはオリジンしかないぞ。まああれもかなりチート性能してるけど。

 でも確かにここらで会長を出張らせないとは思う。だって会長の姿が見えないのは心臓に悪いし。実は最初のステージでは籠があってそこに会長がいる……風に装ってた。実際中にいたのかもしれないが、それではあまりにあいつらしくないとも思うんだよな。

 けど今はその籠も見当たらない。この戦場のどこかに会長は必ずいるはずだけど、僕の目でも見つけられない。向こうも祝福を上手く利用して僕の目から隠れてるんだろう。そこまで姿を現さないのにはきっと意味があるんだろう。

 だからこそ、会長を引きずり出すのには意味がある。そのローレの言葉には賛成だ。


「ちゃんと守ってなさいよ」

「任せろ」


 ローレは何やら高速で呟き出す。その口の速さが尋常じゃない。高速詠唱だろう。しかも音が重なってる。それだけじゃなく、同時に声を出す事もやってる。これでこいつはクソ長ったらしい詠唱を短縮してる。ローレは魔法をぽんぽんと使ってるイメージがあるが、ローレが使ってる魔法は大抵強力な奴ばかりだ。


 それは詠唱の長さがめっちゃ長い魔法ということだ。LROの魔法のリスクは詠唱で、詠唱を省略することは出来ない。前にシルクちゃんはストック魔法を使ってたが、あれもストックするときに事前に詠唱してるからね。このゲームで詠唱は絶対に必要な物で、それをいかに早く正確に言えるかは後衛としての実力に直結する。


 その点で言えば、こいつはまさに最高峰だろう。詠唱か終わると、ローレの背後に大きな門が現れる。それは冥府へと繋がる門だ。


「はあはあ……」

「大丈夫か?」

「意味ないこと言わないで。そんなの嫌い」

「はいはい」


 強がりな奴だ。オルガトは特殊な精霊だ。だからこそ特殊なリスクがある。これもその一つ。今、ローレのHPは一しかない。瀕死である。だからこそ、僕が流れ弾とか、この機にローレを狙う攻撃がないかを警戒してる。


 まあここは戦場からちょっと離れてるし、さっきのローレの攻撃でこっちが攻勢に出てる。だからそうそうこっちに気を向けてる奴は居ないだろうけど、油断は禁物だ。そして重厚な扉が開くと、そこから湿った空気が漏れ出す。けど陽気な声が同時に聞こえてきた。

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