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「そ、そんな事で?」
「そんな事だと……」
ギロリと睨まれて私はちょっと怖じ気づく――態度を演じるデス。なにせチルチルちゃんは気の弱い女の子ですからね。けど意思が強い子って設定もあります。だからここで引きはしません。なにせこのままじゃスオウがヤバい。今はまだなんとか風を集めて直撃を防いでるみたいですけど、あれだけの波状攻撃……一人で耐えるなんて不可能。
「ご、ごめんなさい……けど……お願いします……助けてください!」
「わかんないな。あいつに何か弱みでも握られてるわけ?」
「はい?」
いや、寧ろ弱みがほしいのはこっちというか……なんて本心は言わないです。ちゃんと表情をつくって困った様な表情を作ります。この人が何を言ってるのかわからない……的な。
「なんで……ですか? 私達は仲間の筈ですよね? それにあの人とあのちっちゃな子は大きな戦力じゃ……ないんですか?」
「そうだな」
「なら助けるべきですよ!」
ここで私は思いきって大きな声を出す。だって早くこの人を動かさないとスオウがヤバい。この人なら、こんなんでも大手チームを率いるトップだ。その戦闘能力はお墨付き。それは私も確認してる。ならどうにか出来る筈。だから早く動いてください。
「ふん、ここでやられるなら、そんな戦力ならはなから当てになんかしないっつーの」
「そんな……」
どうやらこの人は意地でも助ける気はないようだ。けど……
「あの悪魔と、組んでる奴だ。そう簡単にやられはしねーだろ。こっちはこっちで忙しいんだよ。それに心配なら、ここからお前が回復魔法でもやってろ。俺の作戦にはお前は組み込んでないからな、勝手にやってていいぜ」
「私は……まだ、全然弱くて……)
「バカいってんな。本当に助けたいならこの世界は答えてくれるぜ」
なんかイケメンだからか、やけに今の言葉が様になってた。中身はただのオタクだとわかってても、ああいうのでコロッと逝く女がいるんだろうって思った。それだけ言うと彼は彼の戦場に戻っていく。ここも戦闘してるんだよね。確かに下手に力を浪費するなんて事はできないですか……でもスオウとあの子がいれば、ここを一気に効力も出来ると思う。
でも流石にそれを考えてない訳ない……か。スオウ達がこっちに参戦すると、スオウ達を狙ってる戦力をこっちの戦場に入り乱れてしまうでしょう。だから……かな? だからまずはスオウ達には彼らを追ってる戦力を自力で排除してほしいのかもしれない。
「光よ――」
私はとりあえず回復魔法の詠唱をします。それを何度も繰り返してスオウに届ける。けど、こんなの意味ないって自分でもわかってる。だって私はまだまだ始めたばかり。回復魔法も初級のやつしかしらない。どう考えても打ち込まれてる攻撃に対して、私の回復魔法では物足りないデス。そのとき、気付いた。スオウを倒そうとしてる奴らが何人かが合唱魔法を使おうとしてる。
決めに来てる。流石に摩耗した風ではきっとあれは防げない。風で防ぎにくい、質量攻撃しようとしてるみたいデス。なにせ営利にとがった巨岩を作り上げて、更にそれに回転を加えてます。
どうにかしてあの攻撃を止めないと! 私はそう思ってファイヤーボールを飛ばす。一応このくらいは覚えてる。けど、そんなの何の意味もなかった。スオウの斜め上から放たれたそれは勢いよく向かっていく。
「逃げてええええええええええ!!」
そう叫ぶしか私には出来ない。でもそんな状況で、私は彼の穏やかな顔をみた。まるでここで終わるなんて微塵も思ってない顔だ。