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マストの先端部分にあるやけに輝くその物体。パラボラアンテナの様にも見えるそれがきっとエアリーロに当たった攻撃を出した奴だとみて僕は突っ込む。危ないのは優先的に処理しないといけない。
「つっ!?」
かなり近づいたところで、カッ――と強烈な光が目に入る。その光に僕の視界は埋め尽くされた。そして続けて鈍い痛みが走る。さっきエアリーロを貫いた攻撃だろう。その攻撃が足や腕、体を貫く……
(一気に数カ所……)
どうやらいくつも攻撃を同時に出してる? 収束させて放つ的な物かと思ったが、拡散も出来るのかも。バランスを崩した僕は甲板に落ちる。水の中じゃなくてある意味よかった。
「これって……」
僕はインベントリから出した回復薬を飲みながら周囲を見る。船に人の気配はない。全てがオートで動いてる感じがある。でも誰もいないなんてあるだろうか? あるとしたらその狙いはなにか……
「いや、まずはこれを」
僕はそういってマストに向かって構える。ある意味甲板に落ちられたのはよかった。だって個々なら、あのアンテナの様な攻撃も大砲も届かない。届かないというか、当たりようがないというか。なにせ銃口の反対にいるような物だ。放たれた銃弾が曲線でも描いて戻ってこない限り、僕には当たりようが無いんだよね。
「せい!!」
僕はフラングランを気合い入れて振り抜いた。手応えはあった。けど……
「壊れない?」
確かに斬った感触はあった。けどマストは倒れない。僕は何度かやってみるけど結局倒す事は出来ない。いや、ちゃんと斬れてる。けど、倒れる前に修復してるように見える。検証の為に他の所、床とかを斬ったりしてみる。大砲も斬ってみる。甲板の周囲にも配備されてるそれは自動で狙いを定めて自動で撃ってる。
その動きは一糸乱れぬ動きでちょっと気持ち悪い。実際、甲板にある大砲は土台の部分から回転してルから、僕の事を狙おうと思えば狙えそうだが、自信で船体を傷つける可能性があるからなのか、こっちを狙う事はない。
「やっぱりだめか……」
大砲も床も同じだ。自動で修復する。これ、もっといっぱいあったらかなり厄介だったんじゃないか? そう思いつつ、内部へと続く扉を見る。そして空で大変そうなエアリーロ。するとエアリーロからローレが降りてきた。ただまっすぐに落ちてきてるだけだから、的になり放題だけど、自身の周囲に障壁を貼ったローレに攻撃は通らない。そして何事もなかったように甲板に降り立った。
「エアリーロはいいのか?」
「風の密度を上げたから、あんな失態はもうないわよ」
どうやらエアリーロは囮として空で誘導してくれるらしい。
「ほら」
そう言ってくいくいと顎を動かすローレ。それは僕に開けろって事か? 確かに何か罠があるかもしれないからな。自分ではやりたがらないよな。色々と言いたいことはあるが、ここで口論してても始まらないし、僕はローレに従って内部に続く扉に手を掛けた。