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「「「おおお!!」」」
ざわっと周囲が沸き立ちました。どうやら男色艦隊とか呼ばれてる黒い鎧の集団がテア・レス・テレスの防衛線を突破したみたいデス。これを好機と男色艦隊の側から、こちらの戦力がテア・レス・テレスの陣へと襲い掛かる。中央部分がようやくちょっと薄くなる。行き詰まりを感じてたんですよね。よかったデス。
「ん?」
そういえば、反対側は戦線としては膠着してるデス。それなのに、男色艦隊側は勢い込んで攻め込んでる。つまりは戦線が伸びてるって事デス。私の周りのプレイヤーが薄くなったのがその証拠。今、こちら側の戦力は、男色艦隊に続き、一斉に攻勢に出てます。
「奴らもこの状況では中央を攻撃してる場合ではないようだな」
「ああ、チルチルちゃん、ここなら安心だ」
「そうだな、だからちょっとだけ――」
こっちへの遠距離攻撃が止まってる? 確かにテア・レス・テレスは大変になっただろうけど、それは直ちに中心近くにいた奴らにまで影響を及ぼすほどだろうか? こっちでも先急いでない奴らはまだ中央にいて、気を張ってるデス。まあこっちは頭が複数いる感じデスからね。流石に二百人を一人で管理はできません。だからそれは当然だけど……一応ここだってまだ警戒してる。
こっちからだって中央に攻め込むって実は出来る筈デス。けど、押し込まれて結構詰まってるテア・レス・テレスにそれをやると自殺しに行くような物でしょう。それこそスオウとかのスピードに自信がある奴らがひっかきまわしなくれないと難しい。
けどこっちもただ眺めてる訳じゃないみたいデス。中央に残ってる魔法部隊が一斉に詠唱を始めてる。向こうからの攻撃がやんだから、どうやら合唱魔法を打ち込む気のようです。まあそれはそうだよね。だって出来るなら、大規模魔法を叩き込みたくなるだろう。向こうの姿はみえてて、そしておあつらえ向きに固まってるんデス。これは絶好のチャンスでしょう。
「あっ」
私はそんな声を出してしまった。それはテア・レス・テレスがこちらの伸びた戦線を突いたからだ。男色艦隊の後方を分断する様に、さっきまで中央を襲ってた攻撃が降り注ぐ。それに慌てて足を止めるこちら側のプレイヤー達。そしてそこにテア・レス・テレスの部隊が飛び移った。それは数十人くらいだ。そこまで多くはない。けどその内の一人が男色艦隊の後方に降り立った瞬間に、こちら側に障壁を展開させる。それはこの足場の端から端までを網羅するものだった。
「前線を分断する気か!!」
男色艦隊は強い。けど、だからって前と後ろから囲まれたらやられるのは時間の問題デス。それをよしとするわけない。ほぼ完成してた合唱魔法をその障壁と張ってる奴に向ける様に支持を出しる人がいる。あの障壁がなくなれば、寧ろテア・レス・テレスの部隊を挟み込んで沈めるチャンスがめぐってくる。
だからこそ、術者か私達を分断してるあの障壁さえどうにか出来ればいいデス。合唱魔法は大きな炎が渦巻く業火。確かに炎なら固まってる所に落とせばそれはそれは凄惨な事になりえますからね。効果範囲とかを思っての選択だったんだと思うデス。
もしかしたらこれだけで飛び込んできたテア・レス・テレスの奴らを堕とせるかもしれない。そんな思いで合唱魔法が奴らの所へと着弾するのを見てたデス。けどその炎というか業火が、障壁に触れると同時に、左右に広がっていくデス。なくなってはいないし、勢いだってあります。こっちにその熱が伝わってくるくらいには熱い。けど、当たらないと直接の影響はないのは当然デス。
「無理ですよ。この壁には会長の加護を承りました。貴方方では壊すことは不可能です」
そう言って丁寧にお辞儀する彼女は……まさか生徒会の誰か……なのですか? そういって更に背まで向ける彼女は味方と共に男色艦隊とそれに付随してたプレイヤーを背後から襲っていきます。むむ……これはヤバイですよ。