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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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追いかける事

 氷の牢獄を抜ける為に僕はイクシードを発動させる。いつだって頼るのはこの力。だけどその深淵はこんなものじゃないんだ。普通の状態で発動させるイクシードは『乱舞』を模して効率化したに過ぎない代物。

 まだまだ上がイクシードにはある。だけどそれがどういう力か、僕も分からない。ただのイクシード……それだけで事足りればいいのだけど。


『イクシード』それは僕の力。『イクシード』それは勇気を表す、力強い言葉。想いを通すため、誰かを救うために宿った優しい力。

 どんな時でも最短で送り届けてくれる風と、敵を寄せ付けない雷撃。この二つが揃えばどんな盾でもきっと切り裂ける。

 『絶対に負けない』そのための進化した力……それが『イクシード』だから。



 湖の水、全てを氷に変えるほどの技。しかもそれだけじゃなく、空気中に含まれる水分まで結晶化出来ぶつけれる。

 周りはもう氷の世界……だけど、僅かに風が流れ出してた。風はどんな小さな道でも教えてくれる。そして新たに宿った雷は、その道を青白い光と共に走ってく。


 それはまずは僕の周りから……けど次第にもっと広い範囲へと移って、氷を脆く弱くしてくんだ。僕を覆い付くす氷に変化は見れないかもだけど、もう十分。それを風達が教えてくれる。

 ここからは一気に行こう。拳に力を込めてセラ・シルフィングが纏う風を大きくする。その風で体の自由を奪う氷を砕き、更に両側にぶっ刺した。


 そしてこの僅かな空間で風と雷が発生しあう。イクシードには制限時間があるからな……この牢はこの一撃で崩して見せる。

 左右のシルフィングから風のうねりが発生して、突き刺した刀身から氷を一直線に砕いていく。それは下準備のおかげの事。

 内側から砕かれた氷には大きな亀裂が無数に入る事だろう。そしてその亀裂にはもう一つの力が走るんだ。


「いっけえええええ!!」


 風のうねりを追うように走り出す雷撃。けど雷撃達は氷という媒体へ、枝分かれして流れていく。すると一気にビキっと言う音と共に、この空間からでもわかるほどの亀裂が無数に入る。

 この氷を満たしていく雷撃達は、きっと地上までその勢いを絶やすことは無いだろう。何本もの雷の柱が砕けた氷の隙間から吹き出してる。そして最後の仕上げだ。

 シルフィングを振ってこの氷共を完全に砕く。


「うおおおおおおおおおおおおお!!」


 両の腕を上へ向かって移動させる。それによって更に大きく崩れていく氷の空間。これはある意味、一種の世界の崩壊の様な光景だ。

 青白く光る雷撃が砕けて行く、氷を幻想的に照らしてた。そして顔の前で腕をクロスすると同時に、風と雷撃が道を示す。


「スオウ!」


 するとその穴から差し伸べられる手が一つ。それはリルレットだ。僕はその手を取って、崩れ行く氷の牢獄から脱出した。



 ズズズ~ン、と地響きが成っていた。冷気が凄い事になってる氷の上は、何だかドライアイスから出るような白い煙が地面を這っている。

 そして中身から壊された柊の氷は元の高さから数メートル沈下してる。砕けた氷の分、そうなったんだろう。特に僕たちが居るところは一段低く成ってる感じ。


 まあ破壊の中心部分だし、こんな物なんだろう。表面にも亀裂が沢山入っていて思惑通りだけど、外に出た今と成っては危ないな。


「スオウ……」

「助かった。リルレットが呼びかけてくれなかったら危なかったよ」


 繋いだ手から震えが伝わってくるリルレットにそう伝えて振り返る。するとそこには白い雪の様な物が舞い落ちる扇子を手にした柊がこっちを見てた。


「それがイクシード……風と雷のシンフォニーが力強い意志を奏でてる様ね」


 パチンと再び扇子を閉じる柊。その瞬間身構えたけど、別に何が起きる訳でも無かった。雲は晴れたけど、湖の氷がいきなり水に戻るなんてことは無かったんだ。

 どうやら、やっぱり何か変わってるらしいなあの扇子。色も紙のデザインも骨組みも変わってるし、その力も今まではとは違う。


 けどどっちにしろ凄まじい。これだけ大きな湖を凍らせるって……普通の氷結魔法じゃ絶対に無理だろ。本当に何しても、例外な奴。


「それは誉めてるのか? まあどうでもいいけど、こうなったらグズグズなんてしてられない。案内して貰う。セツリの所まで!」


 僕はセラ・シルフィングを柊に向ける。風の唸りが柊の顔の横を通って氷に穴をあける。けどそんな事奴は気にもとめてない。


「諦めが悪いわね。あの子は君を捨てたのよ。私たちを選んでくれた。大丈夫。私達はあの子を傷つけたりしない。君と違ってね」


 顔の横で開かれた扇子。それを俺の風にわざわざ当てた? すると信じられない事に、うねる風が凍りだした。そして直ぐに刀身にまで氷はたどり着く。


「ちっ、雷放!」


 そう叫ぶとセラ・シルフィングから放たれる雷撃。流石に雷撃まで凍らせる事は出来ない。風の氷も雷撃よって砕いて扇子が届かない位置まで移動させる。

 太陽が照りつけても溶けない氷……けど異様にこの湖の場所はキラキラしてる。氷の表面がじゃなくて、大気中がって事だ。


「確かに僕はセツリを傷つけたかも知れない。だけど拒絶されたからって、簡単に見捨てられる訳ない! 帰るべき世界がアイツにはあるんだ!」

「そうだとしても、あの子がそれを望んでないのは確か。決めるのはセツリで、そしてもう決めたのよ。往生際が悪いわよ」


 そう言うと柊は扇子を振りかぶる様な態勢を取る。そして無数に光る大気中の粒? 振った腕と共に、扇子から流れ出る冷たい空気。


(待てよ……確かさっき、空中で作った氷を湖に落としてもいた。この光ってるのもそれだとしたら……まずい!)


 冷気と共にこちらに流れてくる小さな光達。僕はシルフィングを振って風の盾を形成する。流れに乗ってきてるだけなら、これで十分な筈だ。


「往生際が悪くたって、僕はセツリを追いかける。アイツは生きることはきっと望んでる筈だから!」

「あんな無駄な世界で、生きることに何の意味があるの?

 こっちを現実にすればいいのよ。ここならあの子は自由なんだからね」


 風と冷気が丁度間でぶつかる。けどシルフィングにはそれだけじゃない力がある。それにこの手のぶつかり合いは手慣れてるんだ!

 冷気を切り裂き、僕は柊へ直接攻撃を仕掛ける。無駄な世界? LROを現実に? そんなの全部認めない。だってそれは荒唐無稽な話だろ。


 LROは一つの世界であっても、現実には成り得ない。成り得る筈がない。僕は柊の懐でシルフィングを一線する。完全に対応仕切れてなかった柊に、それはクリーンヒットだ。

 けど二刀流の神髄はここで終わらない事。多重連続攻撃でHPを削り切る! そう思ってもう一方も振ってたときだ。


 ピキパキ……そんな音が耳に届いたのは。音の出所はさっき僕が切り裂いた場所。そこがヒビ割れてる? 服諸とも? 

 その時、目の前の柊が色を失っていく。いや、透明に成って行ってるっていうか……これは、氷!? 分身か!!


「ちっ、無駄な世界なんかじゃない。アイツはあそこで生まれて育ったんだ。そんな世界を無駄とかいうな!」

「でも、何もくれなかったじゃない。あの世界はあの子から全てを奪うだけ……そんな世界に何故止まらなくちゃいけないの?

 そんな辛さを背負い続けろと、スオウは言うんだ」


 周りが何だか眩しい。これは小さな小さな氷のつぶて。それらがもう周りに展開してる。これは誘い込まれたって事か。

 一端離れようと後ろに一歩を踏む。けどすると僅かに触れたつぶてが一気にソフトボール位に成った。すると連鎖反応の様にビギビギビギィィと続いてく。一歩を踏んだ足があっと言う間に氷に覆われた。


 柊達は、何もセツリに与えなかった世界から解放しようとしてるのか。けど僕は、あんな世界でも与えれる物があると思ってる。

 それに一番大事な物をくれてる筈だ。『命』って言う何にも変えられない物を。


「っつ……僕はただ、早すぎるって言ってんだ! 結論づけるのがさ。世界が奪ったとか、背負い続けるとか、確かに辛かった事は分かるけど、それで世界を否定するのは逃げてるだけだ!!


 お前達が用意してるのはただの逃げ道。けど、もうそれだってセツリは一杯一杯なんだよ!」

 僕は氷付けになった足を無理矢理動かして、シルフィングを真後ろへ振る。踏ん張りも効かずに、さらには勢い

余って滑って転ぶ事に成っても、強引に振り切った。さっき斬ったのが分身なら、本体はこっちと当たりをつけて見たけど……どうやら外れみたいだ。

 感触はあったけど、転びながら目に入った光景は砕けた氷の固まりだけ。さっきと同じだ。


「いってぇぇ! くそ……どこ行きやがった?」


 立ち上がることも難しい状況。シルフィングを支えにそれを試みるけど、こんなんじゃ戦闘どころじゃない。柊が撤退とか考えられないから、必ず攻撃が来るだろうに……これじゃあただの的だ。


「スオウ! ちょっとジッとしてなさい。私達が周囲警戒してるから、その足治して貰いなさい」


 そんな言葉と共に、僕を無理矢理地面に押しつけたのはリルレットだ。そして僕を庇う様にみんなが周囲を固める。


「みんな……」

「そんなんじゃまともに戦えないでしょ? それにスオウは一人じゃない。忘れないでよね。さっきから一人で奴と戦っちゃって……私だって柊には用があるんだから」


 あ、そっか。リルレットだってここでじっとなんかしてられる筈がない。だって奴は……柊はエイルを柱に変えた奴の筈だ。

 エイルを元に戻す為にも奴には負けられないんだ。それにさっきから本当に自分だけで焦りすぎてたのかも……


「ごめん。助かる」

「分かればよろしい。詠唱が終わるまで動かないでよ」

「へいへい」


 進み出てくれたヒーラーが僕の足に杖を向けて治療魔法を唱えてくれてる。魔法の事はよく知らないけど、これは『凍結』って言う状態異常の一種だよな。

 なら直せない筈も無いって訳だ。

 けどそんなとき、僕たちを白い煙が包んでく。それに混じってるこの光の粒はきっと……


「不味い。柊の攻撃だ! この煙晴らさないと!」


 僕はシルフィングを握りしめる。一気に視界が包まれて行くほどの煙……いや冷気。これを晴らすにはイクシードを発動してる、僕がやらなきゃ。


「動かないで! 大丈夫、もっと我々を信じてください」


 そう言ったのは僕を囲んでる中の一人。杖を持ったその人は確か……ソーサラーだ。彼は詠唱を直ぐに開始した。そして杖を空へ掲げてこう叫ぶ。


「フレイムウォール!!」


 その瞬間、ドーナツ型した炎が空から一気に降り注ぐ。僕たちに当たらない空間を作って、飛来したみたいだ。


「奴が今使ってるのは氷。なら風よりもこちらも方が効果適でしょう」

「はは、そうだな。でもスゴいな。この炎の結界」


 燃えたぎる炎が自分達の身を守ってくれてる様だ。確かに風と雷のセラ・シルフィングよりも、こっちが効果的だろう。

 これだけ熱気が漂ってたら、冷気なんて居られないしあの小さな氷の粒なんて一瞬で溶け筈。チーム戦ってのをそういえば忘れてた。


 自分に足りない物を補える事が集団戦の強み何だよな。それに大抵僕達は何かが足りない物だ。全部揃えてる人間なんか一人もいないだろう。

 だからこうやって助け合って手を取り合って、出来る事に全力をだす。長所と長所を補完すれば、どんな状況だって切り抜けれる。


「ディザイアス!」


 そんな言葉が、杖を向けていたヒーラーから叫ばれた。すると黄色い光が凍った足に絡みつき、徐々に締め付けて来る。

 けど痛みはない。でも確実に氷にはヒビが入ってた。そしてついには氷だけが脆くも崩れさっていく。


「やった」

「治療完了です」


 僕は立ち上がり、足の感触を確かめる。トントンと地面を叩き、軽くジャンプ。問題ないな。


「ありがとう、これでおもいっきり動ける」

「いえいえ、我らヒーラーは前衛のバックアップが役目ですから。てか貴方達がやられると、何にも出来ないんで代わりに頑張ってって感じですよ。死ぬ気で……あはは」


 何だかこの人も結構面白い人だな。持ちつ持たれつを言いたいんだろうけど、何かおかしいぞ。


「よし、スオウも回復したことだし、そろそろ打って出よう!」

「それはいいけどさ。柊の奴はどこにいるかわかんないぞ。姿眩ましてるし……それに何でリルレットがリーダーやってるわけ?」


 別に僕がやりたいわけでも無いし、出来れば遠慮したいところだけど、それでもリルレットって……


「なななんでよ! 何か問題でも?」

「いや、だってリルレット……一番弱いじゃん」

「ぬあぁぁ!!?」


 ズガーンと面食らってるリルレット。まあそれこそ言いたく無かったことだけど、多分事実だと思うんだ。だってセラやテッケンさん達が集めたこの人達、かなりの熟練者揃いだし。

 リルレットとエイルって流れだし……


「そそそそんな事ないもん! 少なくとも一番じゃありません。だってスオウがいます~。初めてまだ一ヶ月も経ってない君だけには言われたくないな~」


 うぐ……まあ確かに経験不足なのは認めるさ。でもこの戦いの目的の大きな一つにはセツリの救出があったわけで、それなら自分は重要なポジションを占めると主張しよう。てか


「リルレットが僕より強いって……イクシード舐めるなよ」

「柊に軽くあしらわれてたじゃん」

「ぐっ……」


 リルレットの言葉に直ぐに続かない。確かに端から見たらそう見えたかも知れない。けどあれだって結構イクシードだったからって事大きい。

 実は奮闘してたんです。それに実際、こんな物じゃない筈なんだ……今のイクシード。いや『乱舞』はさ。


「イクシードの本当の力はこんな物じゃない。まだやったこと無いけど分かるんだ。イクシードは乱舞を効率化するためだけのシステムじゃないんだよ。

 だから、まだまだやれるんだ」

「なら、出し惜しみなんてしてる場合? スオウはセツリちゃんを、私はエイルを助けたいんだよ! 半端な力じゃ柊は倒せないってみんな感じてる。

 それでも立ち向かうのは諦めたくないから……スオウならってみんな思ってる。そしてそんな切り札あるんなら尚更だよ」


 リルレットにそう言われて僕は自身で握るセラ・シルフィングへと目を向ける。まあ確かに、切り札を温存して負けるとか愚の骨頂何だけど、イクシードのさらに上の力って今の僕にはなかなか想像できないんだよ。

 てか何となく思うんだ。こうやってジッとセラ・シルフィングを見つめてるとさ。


「まあ、リルレットの言うことも分かるよ。頼りにされるのも……って何かさっき言ってた事と矛盾してるけど、嬉しい。

 けど、今じゃないんだ。そう言ってる。切り札だからって出し惜しみする気はないけど、これを使うときは本当にもう駄目だって思ったとき。

 全てを出し尽くしたときだよ。まだまだ僕達にはやれる事がある。みんなおかげでそう気づいたよ」


 そう言って僕はリルレットを始め、全員を見渡す。するとみんな複雑そうな表情の後に思い思いに答えてくれる。手を挙げたり頷いたり笑ったりして。


「まあ、上手くやれる事に越したことは無いんだし、結局使い所はスオウ次第って事よね。同じ様なのが後数人居るらしいし、切り札は早々見せないのがいいのかも知れない。

 けど覚えておいてよ。負けたら何にも成らないんだからね! スオウはセツリちゃんを取り返せない、私もエイルがどうなったか分からない。

 それが最悪何だから、もしもの時は迷わず使ってね」


 真剣なリルレットの表情。今までも割と真剣だったけど、今まで一番強い瞳をしてる。自分が巻き込んだこと、後悔してるのかも知れない。

 僕達に協力するって決めたのはリルレットだったから、そのせいでエイルは……ってさ。強く歩きだしても、心の隅にはきっとずっとそんな想いが有るはずだ。

 それこそ、この戦いが終わるまで。


「了解。そのつもりだよ。もうこれ以上誰も死なせたりしない。したくない……だからその時は迷わず引き金を引くさ」

「うん」


 僕とリルレットはお互いの気持ちを再確認するように拳を突き出す。そして拳を軽くぶつからせて完了だ。


「だけど、我々は死ぬ訳じゃ……てそうじゃないのか。それじゃあ宜しく頼むとしか言えないな。プレッシャーを与える様だけど」


 そう言ったのはヒーラーの彼だ。そうここに居る誰もが既に死にリスクを背負ってる。まだ確証はないけど、でもそんな確証欲しくもないな。

 だからそれを想定して、そうならない様に頑張るしかないんだ。


「それで良いんですよ。僕が脅してみんなを引き留めた様な物だし。それでもここまで協力してるんだから、守ります。

 もう誰も、エイルの様な柱にはさせない」

「当然……そうじゃなくちゃ困る」


 何か顔色の悪い人が弱々しく……てか不安気にそう言った。みんな本当は怖い筈だからな。無理もない。一応仮説でエイルは大丈夫って事にしてるけど、それはあくまで推測でしかない。

 そしてここじゃエイルの無事を確かめる方法も無いわけで、推測は推測の域を出ることはない。だからこそ僕が前線であり続けなきゃ駄目なんだ。

 守れる事を示さなきゃ、みんなまた恐怖に足が竦むかも知れない。そうなったら本当に終わりだ。


「まずは柊の奴を見つけないとな。そうしなきゃ攻撃のしようがない」


 僕の言葉にみんなが顔を強ばらせて考え込む。そこが一番の問題だからな。見つけられなきゃこちら側から攻撃出来ない。

 なのに向こうは出来るなんて不利過ぎる条件だ。そう言えば、柊は汚れるのとかを嫌ってたな。攻撃スタイルも直接触れるタイプの物じゃないし、そもそも僕達とかかわる事自体が嫌そうだ。


 だから触れるなんて論外って事で……そういう性格が戦闘に出てるってことか? でもそれなら、最悪もう姿を見せないんじゃないか?

 汚れるの嫌みたいだし、固有のスキルまで持ってる奴だ。自分が一番やり易い戦闘が出来る様にしてるんじゃ……それは考えたくないけど、考えざる得ない事だ。


「でもこの湖のどこかには居るはずだよね。あ……っていうかちょっと待ってよ。わざわざ奴が作り出したこの場所で戦う事無いんじゃないの?」

「まあ確かにそうなんだけど、どこに行ったって同じ気がするな。この大量の水をこんな簡単に氷に出来る技だ。何処だって凍らせる事が出来るだろ?」

「それは……確かにそうだね」


 つまりは僕達は奴が用意したフィールドでしか戦闘が出来ない。不利なのは当然かも。でも今まで不利じゃなかった戦いがあったか怪しい位。

 だから今回もきっとやれるさ。みんなと一緒なら。面子は違うけど、既にここまで色々ぶつかって来たんだ。おかげでお互いがそれなりには分かってるだろう。


 それに柊のせいで、ただの協力者以上の関係性だしな。みんなが生きるために必死になってる。そしてやることが合わされば、きっともっと強くなれる。


「そろそろ準備はいい? こんな炎で、私の理を歪める天扇を防げる何て思ってた……分けないよね」

「――っつ、柊!!」


 突如炎で守られた空間に響いた奴の声。今まで実は何やってたとか知りたくない感じだな。こんな炎、壁にさえなってないと言われたんだ。

 それなのに何もしなかったのはそっちの準備があったから……理を歪める……その言葉にふさわしく、炎が氷に変わっていく。

 そして周囲に再び小さなつぶてが現れる。


「くっそ、もう一度!!」

「駄目だ、同じ程度じゃもう意味なんて無い。氷を砕いて脱出するぞ!!」


 僕はソーサラーを制して、シルフィングを振るう。砕け散る炎の氷。その中から一斉に飛び出す。白い煙が床一面に蔓延してる。

 氷が落ちた衝撃でそれなりに舞い上がり、再び落ちゆく煙の中で、僕達は柊の姿を確認した。だけどそれは、今までの柊とは格好が違ってた。

第百二十話です。

 過熱化して行くバトルバトルバトルです。柊は規格外の力で攻め立ててきます。だけどこれからはきっとそんなのばっかり。けどスオウは一度だって負けるわけにはいかないのです。

 色んな事を経て、通じ合った仲間とならきっと乗り越えられる。それを信じて進みます。

 では次回は木曜日に上げます。ではでは。

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