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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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「なんでお前いる訳?」


 そんな事を言いたかったわけじゃないが、口から出るのはなぜかそっけない言葉。本当はもっと素直になりたいと思ってても、高校生という年頃は心と言葉が乖離してしまうんだ。だから声に出した瞬間、後悔してしまう。けど……


「今日はこの時間がどうしても必要だったんだよ。私達がただのスオウと日鞠でいられるこの時間が欲しかったの」


 そういう日鞠は、どこまでも素直な奴だった。僕の様にひねくれた事なんか言わない。そしてその言葉にもなんとなく納得した。だって今日は合同チームと、今現在エリアバトルの覇者となってるテア・レス・テレスの対決の最終戦だ。


 向こうの世界に行けば、今日は敵。前もそうだったけど、その時は明確には日鞠の奴を助けるのが目的だった。だから敵だったけど、味方だったんだ。でも今日は違う。今日は明確な敵同士だ。自分が日鞠に……日鞠が僕に敵対する。


 そんな事を思ったことなんかない。それはきっとお互いに同じだろう。


「スオウなら、一番に来てくれるって思ってた」


 そう言ってエプロン姿の日鞠が近づいてくる。めっちゃ近い。それこそ……互いにちょっと動くだけでふれあいそうな……そんな距離だ。


「スオウ、ドキドキしてる?」

「何が? 今更お前にそんな事――」


 顔を背けてそんな事をいってたら、頬になんか触れた。柔らかい何か……それに日鞠のにおいが香った。僕はその事実を確かめたくて直ぐに日鞠の方を向いたが、既に日鞠は背を向けて料理に戻ってた。

 いやいや、この人速すぎない? LROの僕もびっくりの速さだと思うんだが? 


「今……」


 日鞠の背中越しに、僕はそうつぶやく。けど、「キスした?」なんて気恥ずかしくて言葉にならない。てかもしもそれで違うとか言われたら、恥ずか死ぬじゃん。いや、確実にしたと思うよ。あの感触は間違いないと思う。確信がある。


 日鞠は口紅とかしてないから、跡が残ってるなんて事はないだろう。けどきっとリップとかはしてるよね? ぷるるんとしてるし……あれが頬に当たったと思うと……下手に触れない。なんか消えそうで……


「スオウ早いからちょっと時間かかるかも」

「…………手伝う」

「うん」


 結局それからは二人で朝食の準備をした。まあ僕は食器とかを並べるとかの役目だし、サラダの野菜を無造作に盛り付けたりするだけだ。料理と呼べる部分は全部日鞠がやった。


「やっぱりちょっとなまってるね」

「そうか? 手際いいけどな」


 何だって出来る奴だから日鞠の最低限の基準が高すぎる。十分だぞ。十分な朝食だ。まあ朝食にしてはなんか両多いけどね。


「今日は長くなるかもだし、昼入れられないかもでしょ。だから朝にいっぱい食べないと」

「そうだな」

「うん、お互い頑張ろうね」


 無邪気にそういう日鞠。けど、その言葉には自分たちが負けるなんて想像は一ミリも感じない。だからそんな日鞠に僕は言ってやるよ。


「負けないぞ」

「…………うん、私達も負けない」


 そんな事をいう裏で、僕たちはその手を力強くつないでた。

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