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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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 その日は別段いつもと変わらない朝だった。いつもの様に、冬の寒さで目を覚ます。もうすぐで春先に掛かってくるからきっとあとちょっとすれば、今よりも布団が恋しくなくなるだろう。目が覚めてもなかなか布団から出れないのはこの時期あるあるだろう。


 そんな風にこの寒さに抵抗してると、トントントンと小気味よいまな板をたたく音が耳に入る。小気味いいけど……最近は以前とは違うその包丁の音。


「ん?」


 今日もまたその音は最近、いつも来てもらってるおばあさんの物だと思ってた。けど……この音は……僕は布団をめくって扉を開けた。そして直ぐに階段の所まで来る。そこで足は止まった。そこまでは案外ドタバタと来てしまった……大丈夫だろうか? 僕は一つの扉を見る。


 ガサゴソとは聞こえないし、きっとまだ寝てるだろう。この程度じゃあの人は起きないだろう。いつも疲れてるしね。そして僕はまた料理の音に意識を移す。


 トントン――パタパタ――カチャカチャ――


 と僅かだけど、その音は確かに僕の記憶にあるものだ。そんなのでわかるのかと、思うかもしれないが、何年この音を聞いてきたと思ってるのか。ほかの人との違いなんて一発でわかる。


 僕はなんか緊張してる? 別段、おばあさんが来ても、時々はアイツも来て料理してくれてた。だから緊張することなんかないはずだ。けど……今日はあの日だし。あいつも絶対に忙しいはずだ。こんな所でこんな事……


 僕は音をたてないように階段を下りてた。何やってんだ――と自分でも思うが、仕方ない。階段を降りると、リビングへの扉と、摂理の奴の和室の扉がある。摂理の奴の事だから、休日に入ったことだし、夜通しゲームやってる……なんて事は今日はなさそう。


 僕はリビングの方の扉に手を掛ける。キッチンに近い方の扉もあるが、なんかね。今はこっそりと行ってるからこっちからだ。扉を開けてささっと中へ。ソファーとかの背に隠れて顔をだす。


(やっぱり、日鞠の奴……なんで)


 なんでこの日にあんなことやってるんだ? 毒でも盛る気か? そんな冗談を考える。自分が一番、日鞠がそんな事をしないって知ってるからな。ささっささっ――とちょっとずつキッチンの方へと近づく。けどその時だ。


「何やってるのスオウ。バレバレだよ」


 何故か日鞠の奴は振り向きもしないでそういった。いや、そういう事は実はよくあるんだが……


(カメラ新しく、設置されたか?)


 これは本気である。でも最近はあんまり来なくなったし、その可能性は低いはずだが。


「スオウ事、わかるもん。私とスオウの関係だよ」

「僕は、お前が静かに近づいてもわかんないぞ」

「一心同体だからね、しょうがないね」


 おい――どういうことだよ。けどまあ……よくわからないこんな会話でも別に全然いい。いつもの風景がそこにある。エプロン姿の日鞠の姿が。

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