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「うっわ……」
僕は思わずそんな声が出てしまう。だって、見上げてるもん。ようやくついたらしい、こいつらのアジトはなんと高級マンションみたいな場所だった。てか色々と電車とか乗り継いで、結局、近くの駅まで戻ってきたんだが? あれか? 僕には常に監視が色々な国の奴らでもついてて、そいつらを振り払う為に……とか言わないよね? めっちゃ怖いんだが……
「お前な……ここ最寄り駅から二つくらいなんですけど?」
「スオウには色々と虫がついてるデスからね」
ニコッとそういうクリス。おいおい、やっぱりなんかいるのかよ。マジで? いや、薄々知ってたけど……なにせ僕の目はおかしなことになってるし……不自然なやつっていやでも視界に入る。実際、普通ならきっと気づきようがないと思う。
だってクリスたちはその道のプロフェッショナルなわけで、僕は素人だ。この目が無かったらそんな自分がプロフェッショナルに気づくわけがないんだ。でもわかる。わかってしまう。なんか自分が怖い。
(可能性領域……)
そんなものが本当にあって、自分がそれを開いてるのだとしたら……これだけで済むのかな? なんて不安もある。そもそもが可能性領域がなんなのか……
「さ、いきましょう」
そう言ってクリスが僕の腕を引っ張る。ここまで来てなんだが、本当に入っていいのだろうか? そこらのファミレスとかまで出張ってきてもらう方が安全では? 流石に無関係の一般人がいる場所ではこいつらもおかしなことは出来ない筈だし……だって見てよこのエントランス……なんかキラキラしてるよ。
ホテルか? と思う豪華さだ。まあホテルほどにだだっ広くはない。けどなんか簡易的にくつろぐようなスペースはあるし、なんか綺麗なお姉さんが、二人位カウンターかなんかわからない様な所に立ってる。なにあれ? コンセルジュってやつか?
床はきっと大理石かなんかなんだろうな……、天井からはシャンデリアか光をもたらしてるし……自分的にはこんな共有スペースに部屋に使ってもらう方がいいだろうと思うけど、きっと部屋は完璧に豪華なんだろう。それにお金持ちは見栄えを気にするだろうし、こういうまず目に入る場所がみすぼらしいと、なんか舐められそうだよね。だからか。
エレベーターも僕が知ってる様な、簡素な箱ではなかった。なんか壁とかもしっかり装飾されてて、ボタンなんてタッチパネルだった。液晶にはエレベーターガールが絵で表示されてたよ。それが必要な機能かは置いといて流石高級マンションだと思った。
ついでにここにはプールとかジムとか、なんとBBQスペースなんかもあるらしい。ヤバイな……やっぱり付くのは最上階? とか思ってたが、そうではなかった。まあそれでも十分、高層だし、扉が開くとさらになんか豪華だった。まずは鷲の様な置物が出迎えるし、空中を歩いてるかの様な外が一望できる通路。
秘密組織の潜伏先としてどうなの? と思うけどね。なんかあんまり扉がないな……とか思ってたら、どうやらこの階、この広さで三部屋しかないらしい……もう頭がついてけないよ。しかも全部、クリスの仲間たちが使ってるらしい。おい……それもう実質、この階支配してるじゃん。どうやら、この階に来た時から、既にこいつらの懐の中だったらしい。
そしてある一つの前でクリスが立ちどまった。
「緊張する必要ないデスよ。私達はスオウと仲良くしたいだけデスからね」
これ以上胡散臭い言葉があるだろうか? というセリフをクリスが吐いて扉を開く。するとそこにはクリスをさらにグラマラスにした様なお姉さんが小指を唇にあてて、なめる様にこっちをみてた。
(食われる!!)
真っ先にそう思った。