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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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 水分がなくなった泥がモンスターから剥がれ落ちていく。俺の炎が泥の水分を根こそぎ飛ばしたようだ。けどそれだけじゃない。泥を失って現れた狼の体も崩れてく。泥を飛ばしただけじゃない。炎で包んだんだから、泥に守られていようと中は蒸し焼きみたいになってただろう。


 上手くいってよかった。けど今のはそう何回もつかえない。あれが雑魚で何匹も出てくるなんてなったら厄介極まりない。今の俺のスキル構成はまだまだ完成してないから、色々と中途半端だ。強敵と言えるモンスターに通じるかどうか……いや、ようはやりかたなんだけどな。

 レベルという絶対的な差がないLROは発想や想像力で、いくらでも可能性を引き出せるのがプレイヤーを魅了する一つの要因だ。だからこそ、前は取らなかった色々なスキルも今は取ってる。エルフという種族の特性とは合いにくいスキルだって可能性はあるかもしれない。


 まあそんなの既に他の奴が検証とかしてるかもだが……可能性はあるから。


「やりましたねアギト」

「おう!」


 俺はアイリに力強くそう返す。いい所見せときたいしな。ところが――だ。


「うむ、なかなかの手際だったぞ。特にお前だ。俺の側近にしてやろうか?」


 そういうのは情けなく馬から落ちて泥まみれになってる指揮官だ。はっ? こいつ何をアイリに言ってるんだ? 完全に目がやらしいんだが? 下手に目だったせいでアイリの可愛さに気づきやがったか。どうしようもない奴だなこいつ。


 誰がこんな奴を指揮官に任命したんだ? 任命した奴も同罪で無能だろこれ。なんの役にも立ってないぞ。指揮官とかは部隊を導く義務があるのに、こいつは自分の身以外考えてない。どう考えても指揮官の器じゃない。


「遠慮します。私はただの一兵士なので……」

「なにを言う、俺が取り立ててやるぞ! 俺は上り詰めるからついてこい」


 こいつは……どこからそんな自信が出てくるんだ? あれか? こいつにはそれだけ権力があるのか? けどそんな権力ある様にはみえないし、なにより若い。あれか親が権力者でそれを鼻にかけてきたボンボンか? 絶対にそうだ。


 この人の話聞かない感じとか、強引な所とか、そのくせ危機が迫ると何も出来なくなるとかまともに訓練を受けてるとはおもえない。絶対にボンボンだ。こんな奴が上り詰める? あり得ないだろう。もしも、何かの間違いでそんな事になってしまうとしたら、アルテミナスがヤバイ。


 アルテミナスには思い入れがあるからこそ、あの都市にいるわけで、いつかまたアイリを女王へと思ってる。こいつが上に行くような組織なってるのなら……かなりの腐り具合だ。


「すみません、地位には興味ないんです」

「俺が来いと言ってるんだ! 貴様に拒否権なんてない!!」


 そういってアイリに手を伸ばす指揮官。本当にこいつは……どうしようもないアホだな。ぶっ飛ばすぞ。だが流石にそれは不味そうだし、こいつを囮とかにするにしてもこっちが責任を取らされるのは困る。アルテミナスと事を構える気はない。まあ個人で国に目をつけられたってのはあんまり聞かないが、ありえなくもない事だ。そういう国に狙われるってクエストとかミッションとかあってもおかしくないのがLROだ。


 取り合えず俺はアイリに伸ばされた手を取った。


「なんだ貴様! ただの騎士の分際で邪魔をするな!!」


 マジでぶっ飛ばしたいな。さっき俺が敵を仕留めたの見てないのか? ああ、アイリに見惚れてましたか。そうですか。よし殴って気絶させて餌にしよう。ここにいる騎士たちは俺に不利になる様な事は言わないだろう。取り巻きだった様な、こいつお付きの二人の騎士は既にお亡くなりになってる。


 そう思って拳を握り絞めてると、足元の泥が泡と共に膨張しだした。


「うわああああ!? なんだあああ!? どうにかしろおお!!」


 この野郎、俺にまとわりついてくるな。男に抱き着かれる趣味なんてない。これがアイリならこっちから颯爽と抱きしめて守るのに……引きはがしていいよな? このままじゃ事態に対処できない。泥は意思を持ってるかの様に動き、俺達をもら上げて空に打ち上げた。わざわざ泥から出した? 一体なんで? そう思ってると、俺に抱き着いてる指揮官から「ペガッ!?」って変な声が聞こえて一気に体が重くなった。


 なんか一瞬で気絶してるぞこいつ。いや、鎧になんか穿った様な跡がある。そして耳に聞こえるヒュヒュという音。何か飛んできてる? そして周囲からはこの指揮官と同じような声を出す奴が出る。間違いない、俺達鵜空中に放り出したのは逃げ場がない場所にやりたかったからだ。そしてそこでハチの巣にする気。目を凝らせばなんとか見える。


 泥の弾丸が無数に飛んでるのが。泥だってその威力はバカに出来ない。ぞれがまさに無数に面を制圧してくる。避ける術なんてありえない。


「アギト!」


 手を伸ばしてくるアイリ。でもその判断は間違いだ。アイリだけならこれも避けれる。けど、荷物があると別だろう。俺はその手をとらない。自分の身は自分で守る! だからアイリも自分の事だけを考えるんだ! 

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