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「それで本当に再び会長を倒せる? 笑わせるな。あの女が同じやり方で倒せる筈がない」
そういって来たのはやっぱり渋面さんだ。いや、僕は見逃がしてないよ。さっき他の奴らと一緒に喉鳴らしてたじゃん。けどこの人はポーカーフェイスが上手いんだろう。ほぼ顔には出してなかったし、今だって渋い顔を維持したままだ。
流石は大チームのトップだ。それに比べればこのエリアのトップの男女もおっさんも分かりやすすぎると思う。
「ふむ……しかし、とっても興味深いぞよ」
ぞよ? そんな語尾つけてる奴いたか? とか思ったら、なんか変なのいた。いや、ハッキリ言ってもう変なの……としかいえない見た目だ。なんせ体が緑色だし、なんかずんぐりむっくりの体系だし、頬には鰓みたいなのあるし、何故か野球帽被ってるし……服も野球のユニフォームだし……それになによりだ。
(え? なんで……いつから? まさか最初から?)
僕の視界にこの変なのが全く映ってなかったって事が衝撃だ。だって僕の目は自分で言うのもなんだが、かなり優秀な部類に入ると思う。リアルでも最近変な性能になってきてるし、ここでは更に顕著だ。なのに……そんな僕のこの目に映らない? そんな事があり得るのか?
見たところ、あの辺なのは確実に僕の視界に入る位置にいるし、ちゃんとその一団というかチームの為のソファーもあるんだ。
(あそこだけ最初だけ空いてたら違和感があるだろうに……)
それなのに僕はそれを気にしなかった。あれ? くらいは思ってもよさそうな物だろうに、そんな感情すらなかったんだ。僕はちょっと警戒して、近くにいるローレの肩を近づける。するとローレの奴の顔も近づいてくる。
「なあ、あれって最初からあそこにいたか?」
「ああ、なんだ。あんたに使ってたんだ。そういう奴だからね」
ん? ローレの反応を見るに、こいつには最初からアレの存在が分かってた感じだ。
「あいつ見た目通りの陰険な奴だから、初対面のスオウの反応を見て楽しんでるのよ。ほら、あの目を見たらわかるでしょ?」
ひそひそと話してる僕はちらとあの変な生き物の様子を伺う。すると確かに僕を見て何やらにやにやしてる。大きく裂けてる口の端の方が吊り上がってる様に見えるしな。すると僕の視線に気づいたのか、その生き物は椅子の上にたってぺこりと頭を下げてきた。
「お初にお目にかかるぞよ。自分は『アクアマリン』のリーダー『ギョクリ』ぞよ。ちなみにそのアイテムを自分に預けてくれるなら、最も効果的に使って見せるぞよ」
僕はどうも……と一応頭を下げる。この場でちゃんと挨拶してくれた人はこのギョクリという人だけだから、僕的には一気に好感度上がった。いやーやっぱり挨拶って大事だね。あの渋面さんも会社的なチームを率いてるなら、名刺ぐらい渡しても良いだろうにね。
まあいらんけど。