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「つまり俺たちはまだまだ会長って奴をわかってねえって事だな」
真っ先にそういってきたのはやっぱりおっさんだった。聞いた話によると、おっさんも会長と一戦交えたらしいが……この人は一回拳をまじ合わせれば何となく相手の実力を測りそうな……そんなへんな能力を持ってそうだなっておもってたんだけどどうやら違ったようだ。戦闘民族ではなかったのかこの人?
「おっさんは一回戦ったって聞きましたけど?」
「あれは戦っていうか、あしらわれただけだからな。情けねー事だが、あの時は会長の実力を測る事は出来なかった。まさか、それもわかってて……か?」
「それは……」
「まさにそうね」
僕が答えにちょっと迷ってると、直ぐ近くから断定する声が聞こえた。勿論ローレの奴だ。こいつは……
「てかあんた達も全く会った事ない訳じゃないでしょ。それに自分たちが隠してるなら、向こうにだって隠してる力があるって思わないの? そして単純でとってもわかりやすい事を言ってあげるからその耳をかっぽじってよく聞きなさい」
こいつこれだけズバズバいうならさっき僕に言わせることなかったよね? そんな事を考えてると、続きをローレが言う。
「テア・レス・テレスは一位なのよ。一位の隠してる力と、それ以下のあんた達の隠してる力。単純に考えても向こうの方がきっと大きいでしょう。あんた達はそれぞれがそれを出せばどうにかなる……とかおもってるのかもしれないけど、それってこの連合軍の意味がないってわかってる?
その隠してる力も合せないと確実にテア・レス・テレスには負けるわよ? 違う?」
確かにローレの奴はまともな事を言ってる。単純な事実として、テア・レス・テレスは一位のチームなのだ。テア・レス・テレスは隠してる戦力はまだあるだろう。寧ろ、今見せてるのなんて一部にすぎないくらいかもしれない。そもそもテア・レス・テレスの全容ってわかって無いような?
だから自分たちの隠された力で勝てるなんて思うのは確かに驕り以外の何物でもないだろう。
「ちげーねえな。確かにローレのお嬢の言う通りだ。違うかお前たち?」
「ちっ、まあ向こうがデカいの事実だな。確かに俺達はそれぞれ自分のチームに自身がある。だからこそ、信じしてる仲間たちの力に疑いなんてない。でもそれはそいつもその筋肉バカもおなじなんだよな。そしてテア・レス・テレスも」
おお、ようやく本当の意味で手を取り合う気になったのだろうか? 今までは一応手を取り合ってはいるが、一番の手柄はどこがいただくか――がすけてみえてた感じだった。まあおっさんの所はそうじゃないのかもだが、やはり大きなチーム同士が本当の一枚岩になんてなりえない物だろう。
けど危機感がそれを可能にするかもしれない。そう思ってると、渋面さんがメガネをくいッと位置を直してこういった。
「確かに現状我々がテア・レス・テレスと渡り合うにはそれが必要なのかもしれない。ですが、今この場で……とういうわけにはいかない。なぜなら信用できない奴がいるからな」
そういって渋面はローレを見てる。ローレは相当危険視されてるのか……間違ってないな。今も小さく「ちっ」とか言ってるし。けどようやくいい方向に動き出した? かも。