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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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無言の剣

俺の前に突き付けられた選択はどっちも最悪な未来へ繋がってる。それを選ぶしかないだなんて……俺にはどうしていいのか分からない。こんな事に正しい答えがあるのかどうか。いや、きっと無いんだろう。

 けれど選ばない訳にいかない。握られたのは仲間の命で……そこに痛みが有るのなら、俺に無視なんて出来ないんだ。どう転んでも最悪なら、俺はそれらをひっくり返す行動をするしかない。


「相変わらず貴方は性格が悪い」

「はっは、これ以上巻き返される訳には行かないだろう。それとも君達ウンディーネは何も得ずに海へ帰って良いのかい? 

 これは戦争だよ。しかもゲームでのね。罪悪感など必要ない。使える物は使って、貶めていく楽しさを味わいたいとは思わないかい?」


 雷が猛々しく鳴り響き、豪雨が肌に刺さる中、俺は最悪な人種を目の当たりにしてる。人とウンディーネ連合の結構偉い奴何だろうけど……こいつガイエンよりねじ曲がってるな。

 ゲームだから。そういう風に割り切るってか、切り捨てる様な考え方……俺はどうも気に入らない。まあこう言う奴らは結構居るけどな。


 流石にここまであからさまじゃないが、犯罪者ギルドの奴らなんて大抵、ゲームだからやりたい放題だぜキャッホ~てな感じだ。

 別に逮捕される訳じゃないし、ここはリアルとは違うって事が理性やモラルとかのたがを緩くしてるのかもしれない。


 まあ勿論大抵はちゃんと常識的だけど、人間性がより強く出てる奴も居るって事だ。ウンディーネの人の方は、性格きつそうだけど真っ直ぐな感じだからな。


「思いませんね。私達は貴方の趣味に付き合う為に同盟を組んだ訳じゃない。別に主戦力の彼はここで倒すだけでいいではないか。

 むざむざ逃がす事など無い。その上で奴らの本隊を叩けば良いだけの事だろう。今の我らは負けはしない」


 凄い自信でウンディーネの人が言い切った。まあ確かに今のこの天候はウンディーネに完全有利を与えてる。それに何かこの人……武士って感じだ。


「相変わらず君は堅いな。それに私はただ趣味趣向で言った訳じゃないんだよ。向こう側の戦場での支え。初めての騎士である彼が乱心したとなれば随分な同様が広がると思わないかい?」

「だから我らはそんな動揺なんて無くても勝てると言ってる」


 二人の間の空気は雨でも流され切れない位に何だかピリピリしてる。てかウンディーネの方が一方的に隣の奴を嫌ってる感じだな。

 人の方はそれを面白がってるのか、性格の悪さがにじみでてる。


「私はこの戦争に勝たなきゃいけない責任が有るんだよ。その為には一パーセントでも確率をあげる。そこに汚いもクソも関係なんてない。

 それは私の信念でね」

「ふん、幾ら確率を計算しようと、絶対などこの世にはあり得ないぞ」

「それも重々承知してるさ」


 そう言って浅い笑みを浮かべて肩を竦める動作をする性根が悪そうな人間。だけどウンディーネの人の方は引いたみたいだ。

 てかあの浅い笑いの時には既にこっちに踏み出してきててきっと見てない。彼女は俺の前に立つとどこかへ合図を出した。すると俺を包んでた水泡が弾ける。


「けはっがほ!」

「何だ? 息は出来た筈なのに苦しかったか?」


 ……その言葉に両手両足を付いて空気を求めてた自分が情けなくなる。息できたのかよ。だけどそんなの実際、息が続かなくてもうダメだって思った時に初めて気付くもんだろ。


(恥ずかしくない、恥ずかしくない)


 そう言い聞かせる。すると目の前に剣が突きつけられた。細身で綺麗な装飾がされた剣だ。そしてその剣を握るウンディーネが俺にあの言葉を突きつける。


「で? お前はどちらを選ぶ? 仲間の為に仲間を傷つけるか、僅かな仲間と共にここで果てるかだ。まあどちらにしてもアイツの楽しみに成るだけだろうがな」


 そう言って僅かに後ろ向くウンディーネ。その先にはあの性格の悪い奴がニヤニヤしながらこっちを見てる。確かにアイツはどっちでも実はいいんだろうな。

 この戦争に勝ちたいってのは本当だろうけど、その手段はきっと二重三重に用意してるはずだ。その一つを思いつきで転がそうとしてるだけ。アイツはきっと、高見に居る気でいるんだろう。


「俺は……」


 どっちを選んでも最悪。こんな選択があるかよ。どうにも出来ないことで、どちらかを絶対に選ばなきゃ行けないとしてもこれは……


「言っとくが、お前が感じたように苦しめる事が出来る。お前が見捨てた仲間は水死……HPの続く限りの苦しみ。助けを求める仲間の声に、けれどお前は届けない。

 お前の大切さ加減を天秤にかけて決めるといい」

「そんなの!!」


 そんなの……比べる事なのかよ。沢山の仲間を犠牲にも、僅かだけど必要以上に慕ってくれるこいつらを犠牲にもしたくない。

 でもそれは今や出来ない事。どちらかという選択。俺にとって一番はアイリだけど、だからってこいつらを見捨てたり他を傷つけたりした自分をアイリは許してくれるだろうか。


 アイツが守ろうとしてるのはこの国と、そしてこいつら全員なんだ。でも……そう分かってても、逃れられない選択が今目の前にある。


「じゃあ……全部が同じ位大切なら……どうしたらいいんだ?」

「それは、何も大切で無い事と同義だ。人は必ず優劣や順位をつける。順位を隠さず、天秤を傾けろ。その他大勢なら気が楽じゃないか?」

「――っつ!?」


 その他大勢……その言葉が俺の本心を実は付いてたかもしれない。俺はアイリとは違うんだ。アイリはみんなが大切でも、俺はアイリが大切で・・そしたら実際、後はその他大勢でしかないと思う。

 仲間意識とかが無いとは言わないけど、元々自分の部隊なんていらないと言ってた訳だしな。俺の天秤は実はずっと傾いていて、幾らその他大勢が乗ってもそれが変わることはない。

 でもそれじゃ誰の期待にも応えられない。幾ら考えても良い結果に繋がらない。


 頭を上げる事までも億劫に成ってきた。雨がそれを許さないってか……でも僅かに顔を上げると、そこには捕まったゼブラ達が見えた。

 何かを叫んでる様に見えるが、こちらまで音は伝わらない。でも「助けて」とかを言ってる訳ではなさそうだ。そんな目を誰一人してない。

 言う成れば「自分達の事は気にするな!」って感じの瞳に見える。


「元気が良い奴らだな。なかなか決めれないのならちょと手伝ってやろう。ほら、ちょちょいっとやってくれよ」


 そう言ったのはゼブラ達を見上げて嬉しそうにしてるあの野郎。するとウンディーネの人は嘆息して腕を上げた。


「「「がっぼぼぼぼぼ!!」」」


 その瞬間大量の泡が全員の口から吹き出てる。きっと俺が受けたあの苦しみを受けてるんだろう。


「早く決めないとあの苦しみが続くことになる。私もこういうのは好かないんだ。だが奴はこういう性格だからな。

 さっきは誰もが同じくらい大切なら誰も大切な物など居ないと言ったが……だけどお前のその他大勢と奴のその他大勢は違うだろう。

 奴は道具だが、お前は違いそうな顔をしてる。だがな逃げられないんだ。覚悟を決めて選べ」


 ウンディーネのその言葉は、俺がちゃんと軍のみんなを仲間と思ってるって認めてくれたって事なのだろうか。それかただ単に、アイツが嫌いだからすこしはマシと思われたって事?

 でもどちらにしてもやっぱり彼女は敵だった。でもそう……仲間だから選べないんだ。


「んな事言ったって……どうすれば良いかなんて全然わかんねーよ!!」


 俺はそう叫ぶしかなかった。アイツ等の苦しむ顔も見たくないけど、だからって他の奴らの苦しむ顔を見たいわけじゃない。堂々巡りなんだよ。

 どっちがより最悪じゃなくて、どっちも最悪。最終的にこの侵略戦に勝つことを考えたら、俺達が犠牲に成ることが一番何だろうけど……それを何故か選べない。

 だってあんなに苦しそうなんだ。それを見てるとどうしても一歩を踏めない。俺がここで暴れ出して、倒されるとゼブラ達に人質としての価値が無くなる。


 ガイエンは関係無しに突撃掛けてくるだろし、それなら人質なんていらないはず。用済みになったこいつらはこの水泡の中で苦しみ抜いてHPが尽きるのを待つしかないなんて残酷過ぎる。

 雨が冷たい……この幻想の体の芯までも冷やすように底冷えがする。


「俺は……」

「ん? 何だ? 聞こえないぞ」


 俺は地面の土を握りしめる。どっちかを選ばなくちゃ行けないんなら……俺は目の前の光景を無視なんて出来ない。これ以上考えても答えなんて出ないんなら、俺は俺を慕ってくれてる奴らを守りたい。


「俺は……何やればいいんだ?」

「それは私達の言うことに従うって事でいいんだな?」


 そんなウンディーネの言葉に俺は頷く。するとソイツの指示で直ぐにゼブラ達は苦しみから解放された。まあまだ水泡の中だけど。

 それは仕方ない事。すると今度はあのいけ好かない奴がこちらに歩み寄って来る。


「賢い選択をありがとう。流石はあのカーテナの持ち主が選んだ騎士だ。へりくだる姿が素敵だよ」

「…………」


 やっぱこいつはムカつく。いちいち感に障ること言いやがって。さっさと本題を言えよ。このままムカつき度が上がると気が変わって思わず攻撃しそうだ。


「あらら、騎士様は無言を貫き通すっぽいよ」

「当然だろう。貴様の喋りにこの不機嫌な時に付き合って居られるか。努々隙は見せるなよ。あまり挑発し過ぎるとこの距離でも奴は来るぞ」

「だからそこは君に任せてるんじゃないか。私は潰すのは好きだが、潰されるのは嫌いだからね」


 ウンディーネの人は心底面倒そうに奴と会話してる。だけどまさに奴が言うとおり、ウンディーネの人は相当出来そうだ。それに何か見抜かれてるし。

 結局、感情に任せた行動なんて上手く行くわけ無いって事か。


「さて、それでは君にやって欲しいことなんだが……もう分かってるだろう。用は君が味方相手に大暴れをしてくれればいいんだ。

 そう……その信頼と羨望を叩き崩すくらいのね。後、君達の指令官を孤立させて欲しいね。君じゃ倒せないだろうけど、それだけで十分。後はこちらでやれる。

 さあ、それでは彼らの為に頑張ってくれたまえ」


 奴は底意地の悪そうな顔で俺を見下ろしてる。その後ろには人質としてのゼブラ達。水泡の中で何かを必死に叫んでるけど……悪い、もう決めたんだ。

 だから俺は立ち上がり背中を向けた。


「約束だ。それだけしたら必ずそいつ等を解放しろ」

「ああ、勿論。約束は大切だがらな」

「アンタじゃ無く、俺はそこのウンディーネに言ってんだ。少なくとも約束を破る様な奴じゃなさそうだからな」


 どうもこの人間野郎からは信用なんて言葉が思い浮かばない。だからウンディーネへ。武士だからな。そして俺の期待通りの言葉をくれる。


「承知した。確かにコイツに約束など無意味だからな。我らはそれを良く知ってる」

「ははは、こりゃ痛い事を言われたな。まあいいさ、彼らの事は君に任せるよ。どの道、この作戦の後ではエルフは生き残れないだろうからね。

 さて絶対的有利を確信に変えようじゃないか」


 生き残れない……か。確かにもしも俺がこれからやることではそうなる可能性が高い。やっぱりこの選択は間違いかも知れない。

 昨日ガイエンの奴が言ってたっけ。その誰かを助けるために負けるよりも、その誰かを見捨ててでも勝つことに意味があると何とか。

 そっちの方が犠牲に成った奴らも気持ち的に楽だろうって……アイツ等もやっぱりそうなのだろうか。確かに自分達のせいでこの戦いに負けるのはきっと嫌だろう。


 けど……助けるの俺で、見捨てられないのも俺だ。苦しまずに逝けるのなら、ガイエンの言ったことをやれたかも知れない。

 ただのゲームとして割り切れたかも。けれど苦しんで苦しんで逝くなら話は別だ。俺にはどうしてもそれを選ぶことは出来ない。

 きっとガイエンからしたら「自覚が足りない」とか「それはただのお前の自己満足でしかない」とか言われるんだろうが、無理なんだ。

 その時、俺の踏み出し掛けた足が止まる。何故なら重要な事に気付いたからだ。


「所で……俺達の本隊はどこだ? 言っとくがな、俺達はそれを探してここまで来たんだ!」


 何となく恥ずかしさを誤魔化す為に偉そうに言ってみた。だけど後ろの二人は冷静だ。


「なるほど、ここまで来たのはそういう事か。けれど安心しろ。お前達の本隊は我らの目が監視してる。この雨に阻まれない我らウンディーネの海の瞳がな」

「まあそういう事だ。迷い無くおもいっきりやってくれ。その方がこっちもやりやすいからね」


 海の瞳ね。そういうスキルの名前か? それともデフォルトでウンディーネはそういう目をしてるって事なのか? だけどまさか本隊が常に監視されてたとはな。まあ普段ならこちらもそういう事はやるけど、この天候じゃそれが出来るのはウンディーネだけだろう。

 周りさえも良く見えない豪雨の中、奇襲なんてされたら堪らない。しかもそれが仲間からなら……十分な混乱物だ。しかもそれが俺ってのが更になんだ。

 すると一人のウンディーネが俺の元に寄ってきた。


「彼女は案内役だ。それで君の念願だった本隊までたどり着ける。まあ今も念願かは知らないが、変な考えにはいたるなよ。

 我らウンディーネは今の状況ならある通信手段がある。君は我らの手のひらに居ることを忘れるな」

「忘れるかよ……」


 こんな最悪な気分の事何てそうそう忘れられる訳がない。リアルに戻ってからも鬱になりそうな位だっての。


「ではでは言ってきます。スズラ様」

「ええ、慎重に。くれぐれも他のエルフの部隊と遭遇しないように」

「大丈夫、奴らの目には何も見えてませんから!」


 妙にテンションの高いウンディーネが付けられたな。それにあの武士っぽいウンディーネは『スズラ』と言うのか。何だか大物っぽいから覚えておこう。

 このままで実際終わる気はないからな。アイリが望んでるのは全アルテミナスエリアの奪還だ。それにはどこも落とせないんだ。


 俺はまだまだ諦めない。この選択の先を考えるだけ考えたけど行き着く先はどれも最悪。けれど俺は……誰もが大切なら、誰もを守れる奴に成らなきゃ行けないんだ。

 そのためにアイリがくれた力だろ。ゼブラ達も助けて、この戦いにも勝つ……そんな未来をまだ諦めない。

 だから俺は必死に水泡の中から叫び続けてるゼブラ達に最後に振り向いてこう言った。


「必ず助ける」


 聞こえてたのかは分からないけど、その一言を残して俺は雨の中を再びひた走る。




「ああ、アギト様! 心配してたんですよ。この雨の中フィールドをさまよってるんじゃないかって。あれ? そういえば他は……」


 その瞬間、きっと彼は何が起きたのか理解なんて出来なかっただろう。そしてどうして、こんな事をされたのかを知る由もない。

 俺だって……どうしてこんな事をと歯を喰い閉めずにはいられない。けれどやるしかないんだ。あのウンディーネは見てる。

 あの瞳はこの雨の中でもはっきりと俺を捉えてる筈だから。



 俺が無言で振り抜いた大剣で彼は宙に浮いてる。そして同時に弾いた無数の雨粒が周りの人達にまで当たって、僅かに視界を奪ってた。

 ドシャっと後方に彼が落ちた時には既に、俺は再び大剣を大きく振り被る。


「なっ!? にを……アギ」


 エルフの本隊、その端が大きな爆発で包まれる。さっきので今度は四・五人は一気に吹っ飛ばされたかな。


「敵襲か!? ってアギト様? これは……一体?」


 俺はそれに応えない。次々とこちらに注目と戦力が集まってくるが、誰もが俺を見て動きを止める。それはそうだろう。だってこれは信じられな事。

 でも……これが事実なんだ!! 俺の大剣は赤い光を帯びる。それはスキルの光で……攻撃の現れ。


「「アギト様!!」」


 そんな必死な叫びを無視して、俺は次々に目の前の絶え間ないエルフの面々に攻撃をし続ける。叫ぶことも無く、ただ心で謝りながら。



 剣を振るう度に衝撃波が起こり、無数のエルフが宙に飛んでいく。この豪雨さえも地面に落ちる事を許されない力の支配。剣を振っている間、俺に雨が当たることは無かったんだ。

 それほど凄まじくて……だから迷いがあるみんなの攻撃何てかすりもせずにねじ伏せられた。けれど攻撃は一度も届いてないのに俺は痛かった。

 みんなの攻撃を受けた瞳が雨が届かないか、やけにはっきりと見えるんだ。その瞳が俺に言っている。


「何で?」「どうして?」「仲間なのに!」


 一振りする度に……まとわりつくそんな想いが、やけにこの大剣を重くしてる。結局ここまで来ても何一つ良い手は浮かばなかった。

 どっちも掴み取るなんて端から不可能な事だったのかも知れない。それにどの道……俺はやってしまった。何も策がないまま、俺はみんなを傷つけてるんだ。

 こんなのやけくそと変わらない。最悪な結果が一歩ずつ確実に近づいてる。けれどそれを俺は止められない。もの凄くはっきりと感じる。


 あの目を。あの瞳が俺を見てると。それはもう恐怖だ。ここで止まったらゼブラ達が苦しむ。だけどそれ以上に俺は数多くの仲間達を傷つけてるこの矛盾。

 このままじゃ俺のせいで全滅させられるんだ。きっとこの混乱が頂点に達したくらいで、奴らは攻めてくる。そうしたら今のエルフ側に対抗なんて出来ないだろう。


 何てたって俺のせいで陣形が滅茶苦茶。更に頭は混乱しててその上、敵の一斉攻撃なんて理解する前にやられるかも知れない。

 俺の頭は完全な袋小路にはまってた。


(どうすれば……誰か誰か誰か誰か誰か誰か!!)


 そんな事を考えながら無言で仲間達を吹き飛ばしてる。でも今の俺はナイト・オブ・ウォーカーと加護の相乗効果中。ハッキリ言って全員が本気に成らないと止まりそうもない。


「はぁはぁはぁはぁ」


 無我夢中で爆進してきたから息が辛い。結構進んできたな。周りは流石に、無闇に突っ込まない様に成ってた。距離を開けて様子を伺う感じ。

 剣を振るうのを止めると、途端に雨の音が再び周囲を満たしてく。そして視界までも雨で染まって。だけどそれがいいのかも。

 誰か分からずに叩けるのなら……もうそっちの方が気が楽だ。


(あ……だけどこれを振ったらまた見えるのか)


 そう思いながら、自身が握る大剣を見つめる。自分の罪を見つめろ、目を背けるなとでも言いたいのかこの力は。するとその時、雨の向こうで青い光が瞬いた。

 その瞬間、とっさに盾を前へ。すると降りしきる雨を真っ直ぐに貫いて、凄まじい衝撃が盾から腕へと伝わって来た。


「――づあ!!」


 俺の体が押し戻される。後ろにはこれまで吹き飛ばした面々が倒れてたり、起きあがろうとしてたり。だけど基本屍るいるいの状態だ。

 誰も死んでは居ないけどそれ所かHPが減っても無いだろう。だけど俺は、混乱させないと行けないんだ!


 俺は踏ん張って勢いを止めて、すぐさま剣を振り被る。地面の弾ける衝撃と、高速を越える音の波動が周囲に広がる。だけど手応えは無かった。

 でも感覚で誰かは分かる。あの迷いのない攻撃……容赦のなさ……そんな攻撃を俺に繰り出す奴は一人しかいない。


「ようやく戻ってきたと思えば……どういうつもりだ貴様。これ以上厄介事を増やすな」


 それは間違いなくガイエンだ。青い髪を雨に濡らして、奴がそこにいる。コイツは確か、吹っ飛ばさなくちゃだったよな。

 ガイエンがこの戦いの作戦総指揮やってるからな。ガイエンを吹き飛ばすか……それは何だか、やりやすそうだ。俺は無言のままガイエンに向かう。


「ふん、言葉も忘れて犬畜生に落ちたかアギト! なら私が直々に思い出させてやる。これ以上貴様の好き勝手にさせるわけには行かないからな!!」


 俺の攻撃をかわして、ガイエンの長剣が迫って来る。けれどその程度だ。俺はきっと勝てるだろう。その先に何も無くても。

第百十三話です。

 マジでヤバい! だってセラ達が頑張ってるもん!! セラ達が上手く行ったらアギトが目覚めない訳にはいかないんだし……それまでに過去編終わるだろうか? いや、終わらせるしかないんだって感じ。ここまで来たらあと少しだし……多分。頭の中ではそんな長くないはずなんだけど、だけどやります! そしてみんなで反撃の狼煙をあげるんだ。

 てな訳で次回は木曜日に上げます。ではでは!

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