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「凄いねスオウ。けどこっちも完成したよ」
その言葉と共に会長の周りに踊る文字。今までは書いてる物は直ぐに見えてた。当たり前だ。書いてるんだから。けど、今躍ってる文字は分からなかった。いや、書いてたのは知ってた。けどそれは僕の妨害をする為に発動してたスキルとか魔法じゃないのか?
「っつ!? 風帝武装……いや風が!!」
僕のスピードがガクッと落ちた。何故なら僕が纏ってた風が僕から離れて行ってるからだ。いくら掴もうとしても拒否られる。僕の手を避ける様に風たちが逃げていくのがわかる。
「無理だよスオウ。もうスオウに味方してくれる風はいない」
「くっ!」
会長は元から僕から風を取り上げようとしてた。けど僕と風の繋がりは強い。そう簡単にそれを阻む様なコードはかけないと思ってた。それに見えてたコードはそんな代物じゃなかったから、大丈夫だと思ってた。自分では充分に気を付けてた筈だ。
そこに落ち度はなかっただろう。ただ、会長が僕の上を言ってただけ。あいつは僕にはそのコードを見せない様にしながら、ずっとこのコードを書いてたんだろう。そしてそれが今、完成した。多分、この戦いの前から書いてたんだろうが、完成させる為の最終調整が今終わった感じなんだろう。
風帝武装が無くなり、風の塊ももうない。僕は一番の武器を封じられた。この状況でコードによって何だって出来る会長に勝つ? 絶望的だ。今までだって風帝武装と事前に用意した風の塊でなんとか食いついて様な物だ。アイテムももうあまりないし……それに対して会長にはまだまだ引き出しがあるだろう。
それをいくらでも作れる力なんだあのペンは。
(行って……止まっちゃダメ!)
その時、僅かだけど風に背中を押された。フラングランの風の精。彼女との力も切れてる。けどそれは最後の力を振り絞った物だったんだろう。思いは確かに伝わってきた。
(そうだ、止まれない。まだ勢いはある! これが最後だ!!)
風は離れていったが、僕には風帝武装の勢いがついてる。これがなくなった時こそが本当の敗北だ。だから僕はまた負けちゃいない!
(考えろ!!)
僕はまっすぐに走るなか必死に頭を動かす。
「まだ来るんだねスオウ、けどわかってたよ。私に見せてよ。その可能性を」
目の前に壁がシヴァの氷が現れる。僕はフラングランに炎を纏わせて一本を投げた。相性のおかげか、シヴァの氷で強化されてた氷もイフリートの祝福の炎によって砕け散る。僕は更に会長に近づく。その瞬間土が盛り上がろうとするのを氷を纏わせたフラングランを突き刺して地面を凍らせて防いだ。これで僕にはもう武器がない。けど止まる訳にはいかない。
僕は完全に風を手放して全ての札の力を同時に開放した。そしてそれを束ねるんだ! 僅かな瞬間でもいい! 会長に届くその一瞬を!!