1109
フラングランが真っ先に遅滞してる範囲に触れる。その瞬間に僕は施したコードが発動する。風が流れて道を成す。その流れは会長へとつづいてる。僕には正直、この遅滞空間を解除できるコードを直ぐに書くなんて事は出来ない。それに上手く隠蔽してる会長からコードを読み取る事もできなかった。
あいつは僕よりもコードに精通してるのはわかってた事。コードの扱いではどうしても会長には届かない。僕よりも一歩……いや、二・三歩は先に行ってる。けどこっちだって祝福の力自体の相性は僕に分がある。結局会長は感覚的な部分は何も掴んでないし、あいつは全てをコードに、そのペンに頼ってる。それが強さであり、そして弱さ。便利さであり、そして不便さだ。
予め撒いておいた風からの情報で対応策くらいは出来る。それこそ世界を巻き込む時魔法クラスはどうにもできない物がある。けどそれはリアルの時間とリンクする事になって事実上使用不可となってる。出来るのは範囲を絞って体感時間を操作するみたいな感じだ。厳密には本当に時間を操ってる訳じゃない。
システムが動きに齟齬を作り出してるんだ。その齟齬を完全に取りはらうコードは流石に無理だ。速攻で出来るものじゃない。けど風は流れてるから……その風は完全に僕の……僕というシステムの領域だ。なら対抗できる。フラングランの道だけを完全に風で示す。
僕は風に乗ったフラングランを手放した。だってそうしないと、僕の体はこの遅滞空間の影響受けるからね。そうなると僕が足手まといになる。大丈夫、後は風が運んでくれる。
「甘いよスオウ」
その言葉と共に次の瞬間、フラングランが会長の手の中におさまった。会長ではとらえられない程の速度だった筈だ。この戦闘の間に、自分の視力を対応できる程に修正していったのかも……本当になんでも出来る奴。
「私はスオウならこの程度の結界、突破できるって思ってたもん。時間くらいじゃ、止まらないよね」
簡単にそういう会長だが、この手のスキルとか魔法とか普通一人じゃどうする事も出来ないからな。僕も会長もコードや祝福があるからやりようがあるだけだ。本当に遠い……遠い所にいる奴。
「どうするのスオウ? 武器無くなっちゃったよ?」
「そうだな、けどそれはお前もだよ」
僕のフラングランが会長に渡ってしまったが、こうなる事は予想してた。あいつは破られた時の対策だって当然立ててるだろうなって。けどだからこそチャンスなんだ。今、会長はフラングランに触れている。そう触ってるだ。
「行くぞ!!」
僕は自身の風帝武装そして、風の塊の一つの風を丸ごとフラングランへと流す。風を流したりするのは簡単だ。それが自身や愛用の武器なら普段からしてる事。僕とフラングランは繋がってる。いきなり強大な力がフラングランに宿った事を感じたんだろう。会長はフラングランを手放そうとする。けどその手からフラングランは離れない。
(させないよ!)(うん……離さない)
二つの声は会長には届かないだろう。けど僕には聞こえてる。フラングランに宿る精が力を操ってその腕に巻き付いてる。
「はーーーふーーーー」
取り乱すかと思ったが、会長は大きく深呼吸をした。
「スオウ――」
そういってにこりと笑う会長。僕はそれに惑わされずにフラングランにから力を解放する。とてつもない風が巻き起こり、僕自身も吹き飛ばされた。完全なゼロ距離での攻撃。そしてこれ以上ない力の本流だった。