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なだれ込んだ男色艦隊の面々の足元に魔法陣が輝く。やはり罠。どうやら事前に見えていた敵は幻影だったみたいだ。
「全員鎧を起動しろ!!」
団長のその言葉で皆が覚悟を決める。そして怒る大爆発。けどその大爆発の後でも男色艦隊の面々は誰一人として欠けてなかった。その黒光りする鎧は悠然と爆発の中からでてくる。
「残念だったな。俺達に対してはこの程度――」
すぐさま、こちら側に炎の弾がいくつも向かってくる。しかもその大きさ、数、普通では考えられない程だ。慌てる事はないが、驚いてはいる。まさか全ての後衛を投入してるのか? 比率的に後衛よりも前衛が多いのがLROだ。百人を動員できる今回の戦い。理想的には半々でだろうが、実力も兼ね備えて、この戦いに導入できる奴らというのは限られてる。
都合だってあるしな。そうなるとやはり丁度良く前衛と後衛を加えるのは難しい。
「いや、待てよ? 寧ろ逆か?」
「ちょっ、団長来てますよ!」
「わかってる。あの程度の魔法で慌てるな」
あの全ての魔法が俺達に当たる訳じゃない。当たる奴だけ消し飛ばせばいいだけだ。俺は黒い大剣を片手で持ち、まずは真っ先に向かってきた炎の弾に向かって剣を振りぬく。すると黒い斬撃が飛び出てスパッとその炎を切った。
斬られて二つに分裂して勢いを失ったそれが後ろに詰まってた炎に誘爆する。けど全てじゃない。
「いけ!!」
その言葉に従って素早く皆が動く。それなりに距離をとり、弓を持ち、炎の弾を撃墜してく。
「この程度では俺たちを止める事は出来ないぞ!!」
そう叫ぶ。挑発だ。遠距離でこちらを仕留めるのは難しいと挑発してやる。それでも攻撃は止まない。まさか本当に? だが、絶対にありえなくはない。もしかしたら今回のテア・レス・テレスの面子は前衛よりも後衛の方が多いのかもしれない。
前衛の方が全体数は多いが、テア・レス・テレスは第一のチームだ。その人数は五百以上はいるだろう。更にはNPCまでいるから奴らの総数は千は超えてると言われてる。まあエリアバトルにはNPCは関係ないから今回はそこまで余裕もないが、百の内に後衛が多くなることもあり得る事だ。
これだけ魔法主体で攻めるなら前衛不足なのかもしれないと考えるのが普通。まあ流石に近くに全くいないなんて事はないだろうが。そもそもが見える場所に四つの玉があるんだ。俺は歩いてそこに近づいてる。攻撃がやむことはない。
当たり前だ。だが俺的には「こんな物なのか?」だ。聞きしに勝る会長の策略にしては物足りない。確かに普通の奴らなら、この魔法の爆撃にひとたまりもないかもしれない。
向こうの後衛は姿を見せずに魔法だけを撃ちまくってるんだ。普通ならどうする事も出来ずに数を減らしてくだろう。そう考えるととても合理的な策を使ってるんだろう。だが相手が悪い。俺たち男色艦隊はそんな柔な鍛え方はしてない。
既に玉は目の前。本当ならこれはただの餌だったんだろう。これを俺達に見せつけて呼び寄せた所にこの魔法の嵐で屠っていくという。けどこんなのは俺達にはそよ風だ。会長の策がこれだけなら、ありがたく玉はもらっていこう。
そう思って俺は玉に手を伸ばす。既に玉は目の前。だけど何故か俺の手は玉に触れる事はなかった。それどころか玉から離れていってる。玉の位置は変わってない。これは……
「団長! 地面が動いてます!!」
「こざかしい!!」
俺は地面をけり跳んだ。そして一気に玉との距離を縮める。だがそこにいつの間にか人影があった。その姿を俺はしってる。いや、このLROで知らぬものはいないだろう。
「この時を待ってたぞ会長!!」
そうそれはテア・レス・テレスの頂点会長だった。