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「流石だねスオウ。まさか勝つとはちょっとは思ってたけど、予想外だよ」
「会長、もう最終決戦か?」
僕はそういいつつフラングランを向ける。けど会長の奴に気負った様子はない。岩の隙間から出てきたわけだが……こいついつからそこにいた? 出てきたところは案外近かった。戦闘中で気を張ってた中でこんな近くに居たら流石に気づかないなんてない……とおもいたい。
(けどこいつだからな)
僕なんかよりも全然コードに精通してるこいつは僕が四苦八苦してる間にもコードを書くことで色々な事が出来てそうだからな……なにせこいつは武器の代わりにペンを持ってるような奴だ。祝福を集めることで得た力とは抜群に相性がいい。
僕は警戒しながら風帝武装の風の一部を周囲にながすよ。こうする事で不意打ちとかにも素早く対処できる。今の僕は全方位隙はない。けどこれでも足りない気がするからこいつは恐ろしい。
「まさか、私はただこの戦いはスオウの勝ちだよって伝えに来ただけ」
「本当にそれだけか?」
それだけの為にこいつがそんな危険を……いや、危険じゃないからか?
「それだけだよ。だってここで止めといた方がいいってスオウだってわかってるでしょ?」
「…………」
それはまあ……会長の言う通りだ。こいつまでいて更に凍ってる奴らを入れたら、どうあっても勝ち目なんてない。だからここで終わり。こいつは僕がこれ以上戦うわけないとわかってるから出てきたのか。
「でもそっかーこれで私がスオウに負ける確率がちょっと増えたね。流石だよ」
「なんか嬉しそうだな?」
「そうでもないけど、やっぱりスオウだからね。そうでないとって思う」
こいつはまた……だからあんまり僕に期待しないでほしい。
「ねえスオウ、本気だよ」
「あ?」
「本気でやろうって事」
何を今更そんな事を……と思ったけど、会長はまっすぐに僕を見てる。そこにはからかいとかおちょくりとかはみえない。
「メッセージでも聞いたが?」
「うん、私の最後のピースだからね。リアルに戻る」
「本気が?」
どういうことだそれ? けど会長は首を横に振る。
「死ぬことがだよ。倒されるとこの肉体は一度消えるよね? その時に仕込んでるんだよ。私今まで一度もやられた事ないんだよ?」
「いや、リアルにそれで戻れるのならそこらのモンスターにでも倒されろよ」
本当にそう思う。けどこいつも変な所にこだわりあるからな……それがでてるんだろう。
「それはダメ。私の初めてだよ。だから……スオウが受け取って……ってなんかこの言い方は変か。私を殺してねスオウ」
「本気のお前を……か?」
「そうだよ。本気の私を倒してね」
僕たちは互いに数秒無言で見つめ合った。死が必要なら、それを僕にやらせたいのなら、少しは手加減をしろといいたい。けどこうなったこいつは梃子でも動かないからな。そういう奴だって知ってる。だって僕たちはずっと一緒に生きて来たんだから。
「わかったよ。てか、最初からそのつもりだ。お前は僕が倒す」
「うん、頑張って」
何故か倒される側が倒す宣言をしてる奴に頑張ってという変な光景になってた。それから会長は何やらコードを書いて周囲の結界を解く。いやまて、まさかこれ、こいつだけで張ってたのか? 嘘だろ……沢山の後衛を集めて合唱魔法で維持してるとおもってたぞ。
「じゃあね、またあとでスオウ」
そういって凍った奴らを連れて消えていく会長の恐ろしさを僕は改めて実感してた。