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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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事実を知る事

 放たれた狂気は自分ではどうしようも出来ない物。だけどそれも、確かな自身の望みなのです。最悪のシナリオへと続く奈落の道。

 私はその扉を開けて、そして戻れないように閉じようとしてます。もしかしたら復習と言うのもただの名目なのかも……ただはっきり言えるのは、私は目の前の親衛隊が憎くて、だけどそれ以上に自分が嫌いだって事。

 ここでバイバイしていいなら、いろんな物を置き去りに……それも良いかも。だけどそれを許してくれない人が居る。小さくて……でも強く真っ直ぐな瞳をした彼の仲間が私の閉じかけた扉をこじ開ける。


 真っ暗な……真っ暗な場所で私は泣き叫んだ。私の声は夜空を突いて轟いて……だけどその時、私は心でもっと別なことも叫んでた。

 訳が分からなくなった不安定な心で、闇に飲まれた深淵で、空しい叫びをあげてたの。


(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい)


 至らない私のせい……無力な私のせい……そして何よりこんな風になっちゃって、私は私の心の闇に負けて……ごめんなさい。

 テッケンさんに言われて分かってた。私が今、やろうとしてること……それはきっと誰も彼も望んで何か居ないんだって。

 だけどごめんなさい。止められない。憎しみが、怒りが、憎悪が……そして自分に対する憤りが、どこからともなく沸いてきて、力と共に増幅されていくんだ。


 まるでアルテミナスの力を直接取り込む事と同時に、そんな感情まで付いてくる感じ。とても一人じゃ押さえきれない憎しみの渦の様な激情が体を支配していくの。

 もうどれが私の本当の感情なのか分からなかった。もしかしたらこれ全部が私の感情かも知れないし、もっと別の誰かの感情がゴチャゴチャに混ざりあってる気もしてた。

 でも結局それらは全部言い訳です。こうなったのは全て私の無力のせいで、今振り上げようとしてる腕は紛れもない私の腕。


 誰かに押しつける事は出来ない私自身……もう私にはこれがゲームだからって軽い気持ちでは居られない。だって……ずっと感じてきた想いにリアルも仮想も無いんだもん。

 それを知ってるから、目の前が霞む。本当は止めたいの? それともやっぱりこの目の前の奴を殺したいの? 答えが出せないまま、私の叫びは頂点へと達します。引き裂かれんばかりに口を開けて、闇と同化してる肉体を振るわせて私は腕を――


「させないさ! まだ間に合う! 戻ってこいアイリ君!!」


 ――私の腕を押さえ込む小さな姿。それは先ほど、激情に任せて吹き飛ばした筈のテッケンさん。どうして? 確かに彼には攻撃が直撃した筈です。

 そして吹っ飛んで、そこからここまでこの瞬間に間に合う分けない。でも彼はここにいます。ここにいて、私を真っ直ぐに見つめて言葉を投げかけてきます。


「君はもうわかってるんだろう! 感情を押さえられなく成ってるだけだ!! 僕は思うよ。君が今まで頑張ってきた道の先はこんなんじゃないと!

 諦めないでくれアイリ君!!」

(あき……らめない……)


 それはいつかの自分が良く言っていた言葉の気がします。光輝いてた時、あの頃全てが楽しかった時。大変だったけど、今の様に暗い事はそんな言葉で乗り越えれた。

 でも今は……私に何があるんだろうって思う。諦めない事のやり方を忘れてる。アギトが去って、あの頃から私はいろんな事を諦めすぎたから今更……分からないよ。


「何を……諦めないの? 何を諦めてるのか……それすらも分からない」

「そんなの簡単だ!」


 そう言ってテッケンさんは胸を張りました。かわいらしくエッヘンてな感じで決めて、言葉を紡ぎます。


「君の大切な全ての事。何一つ諦めちゃ駄目なことだよ!! アギトの事やノウイ君。アルテミナスと言う国。エルフの民全て。そしてガイエン君さえもだろ?

 君がいれば、きっと全てが上手く回る。君が回せるんだ! 今この時、この戦いで最も重要な鍵は君なんだからね。

 だから君が諦めちゃいけない。重圧とか立場とか、そんなんじゃなく、君もこの国を愛する一人のエルフなんだろ? 今はそんなみんなが同じように頑張ってる時だ。

 感じてみて……今の君にはそれが出来るんじゃないかい?」


 そう言われて私は自身の堕ちた体に目をやった。黒く醜悪な、すでにエルフじゃないかも知れないその姿。こみ上げる吐き気に、弾け飛びそうな存在の私。

 でも……今の私がアルテミナスの力に犯されてるのなら、確かにそれが出来るかも知れない。この地で今も戦ってる人たちの声が聞こえるのか、私は耳を澄ます。

 すると真っ暗な闇の中のどこからともなく声が聞こえ出します。


「隊長!! 第二防衛ライン突破されます!!」

「ええい! 早すぎるぞ! まだまだ時間稼いでろ! アルテミナスにこれ以上近づけさせるな! 我ら軍の力をみせてやれ!!」

「カーテナは……加護は無いんですか? あれさえあれば!」


 そんな言葉が出た瞬間に私は暗闇の中で思わず耳をふさごうとします。だけどそれより早く、直ぐにさっきの隊長さんの声が入ってきました。


「甘ったるい事いってるんじゃねー!! 俺達がどれだけあの人に助けられたと思ってるんだ!! あの人はなあ、今大変何だよ!

 この軍勢を止める為に動いてる! これ以上俺達が負担を掛けてどうする! 何の為に俺達がいる!? アルテミナスを、あの人を守る為だ!!

 恩返ししなきゃいけねえ……それが今だと思え!! あの人が作ったアルテミナスを守り抜く事! そしたらきっと笑ってくれる!!」

「……そうですね!! 俺達じゃ役不足かも知れないけど、アイリ様が笑ってくれたら最高です!! やってやりますよおおお!!」

「「「うおおおおおお!!」」」


 何だか肌にまで響く様な大絶叫が聞こえました。思わず顔を上げると、まだまだ響くそんな声が聞こえます。


「きっとアギト様がやってくれる!! それまで私たちはやられない!!」

「そうだねセラちゃん! 私も信じてる……だから頑張ろう。全部を取り戻す。そしたらきっとみんなが幸せになれる筈だもの!」


 セラ……そして新たなアギトの仲間の声。後者の人は余り分からないけど、セラはずっと私の側にいてくれた一番の友達。

 もしも私の今の姿を知ったら、ご自慢の聖典で消し飛ばされるかも知れません。そこら辺セラは厳しいから。でもそんなセラは離れて行ったアギトやガイエンの変わりにいつも私を気に掛けてくれた。

 初めてカーテナを手にした後で、立場とかを飛び越えて私に接触してくれた子です。その自由で、でも一本通った芯に凛とした姿を現すセラが格好良いと思った。

 本人はその評価には不満みたいだけど、でも初めて会ったときから友達に成れるって確信してたんだ。面倒な立場を気にしない関係。


 それは今日まで、私を支えた確かな物の一つ。でもこのままじゃもしかしたらそんな友達も無くすのかな? きっとピンチなのが言葉から伝わってきた。

 でもセラも頑張ってるんだね。ううん、今この瞬間、この国で逃げてるのは私だけなのかも知れない。私はいろんな責任を投げ出して、みんなの戦いから一人だけ逃げようとしてる。

 ノウイ君の敵討ち? ……違う、私はこれ以上見たくなくて、耐えられなかっただけだ。私はみんなのこんな気持ちの一パーセントも分かってなかったんだじゃないのかな。


 ノウイ君はそれを必死に私に伝えようとしてたのに……私は目の前で起こった悲惨な光景ばかりを焼き付ける。それでもの想いを汲み取れて無かった。

 それはまるで、人生の中で必ず幸福もあった筈なのに不幸だけを数えて悲観的な考えに捕らわれる様なもの。目の前まで伸ばされてる筈の手が幾らでもあったのに、一度もそれに気づけない愚かな私。


 誰も強制なんてしなかったのに、勝手に重圧を感じたバカな自分。私は私が選んだ道で勝手に潰されかかってたのに、そんな私にみんなは優しい手をずっと伸ばしていてくれてたんだ。

 でも、引っ張り上げるまでは誰もしてくれなかった。みんなそれを私が誰に望んでるか、きっと知ってたからです。だから後一歩は私の役目だったんだと思う。

 私がもっと求めれば良かったんだよ。伸ばされた腕を掴む……それが出来てればきっとこんな事にはならなかったんだ。

 それだけで、私の周りはもっと随分と変わったのかも知れない。ずっと俯いてたから気付かなかった。そんな頼りなく、役に立たない私に向けられていた手のひらの数々。


 私は真っ暗な闇の中で右腕を宙に伸ばしてた。だって見えるんだもん。まだそこにある伸ばされた手が。誰かの声が聞こえる度に一つずつ増えて行ってます。

 その中の一番近くの一つ……それに触れる直前で私は動きが止まります。それは私の悪い癖に成ってるのかも知れません。


(今更、この手を取っていいのかな?)


 そんな考えが心をよぎってしまいます。だって散々待たせたよ。私は実はみんなを信じて無かったって事に成るし、今の私を許してくれるでしょうか。

 それに何より、まだ本当に間に合うのかな? こんな化け物じみちゃってても良いのかな? いつの間にか私は誰かの信じ方を忘れてる。そして自分の信じ方も。

 また去られるのが怖くて、踏み出せないでいるんです。だけどその時、予想外な声が聞こえてきました。


「くくっ……ははは……アギト、やっぱり遅いんだよお前は。捨てたもの全部を取り戻そうなんて、はなから無茶な事だろ。

 それにやはり貴様にむざむざ返す気はないしな。やっとで手に入れられるんだ。願った物も、願った人もな。だから貴様との勝負もこれまで・・安心しろよ、これからはもっとアイツを大切にするさ」


 え? あっ……これってガイエンの声だよね。どういう事なんだろう。願った物? 願った人? 物は分かるよ。それはきっとアルテミナスを指してるって。だけど人って誰?

 あのガイエンが大切にするってまで言う人の存在を私は知らない。だってガイエンはLROでの出会いや繋がりをそんなに大切だと思って無かったような……あれ? でもよく考えると一つの考えにたどり着ける様な気がする。

 まずポイントはアギトにそれを言ってること。それはアギトもその人を取り返そうとしてるって事で、二人に共通してるその人は……私とか?


(ガイ……エン!?)


 いやいやいや、待ってよそれ。飛躍しすぎ。そんな筈無い。ガイエンに限ってそんな事……あるわけ無い……よね? 

 だってそれなら、いつからか分からないけど酷いことを私は言ってる。気持ちを知らなかったからって、何も知らなかったからって不用意な事言ってた。


(わわわ、私はどうしたらいいの!?)


 何だか別の問題が持ち上がっちゃったよ。これこそ逃げたい気分。体は弾ける寸前で苦しいのに、これ以上詰め込みきらないよ。

 だけどその時あることに気付きました。


(勝負がこれまで?)


 その言葉の意味です。会ったときからずっと二人は事あるごとにぶつかってきました。あれが二人の勝負なら、それがこれまでって決着が付いたって事。

 そして二人は今まさに戦ってた筈です。だけど聞こえたのはガイエンの声だけ。同じ場所に居て今も戦ってるならアギトの声も聞こえて良いはずなのにおかしい事です。

 それってつまり……


(二人の戦いは終わってて、アギトは……)


 そう考えた瞬間に私の瞳から、苦しさから来る涙とは違う滴が落ちました。止めたくてももっと奥から、こみ上げて来るこの涙は止め方が分かりません。

 でも不思議と、泣いてる場合じゃないと思えてきます。泣きっぱなしで思うのも不思議だけど、そうなんです。


(行かなきゃ……行かなきゃ……行かなきゃ……)


 沸き立つこんな気持ちに、心底私はワガママだと思いました。私を信じて優しい手を差し伸べてくれる人達が数え切れない程居ます。

 だけどそこで躊躇う私なのに、彼の事は直ぐに心が決めるんです。頭じゃ無くて心が私を動かすの。でも今回は今の状況を一人で乗り切れそうもない。

 乱れきった心の整理をつけて、彼に会える姿に戻りたい! その為に私はワガママを言って良いのかな?


「ねえ……テッケンさん。私は行かなきゃ……こんな所で追われない! でもね、それは彼の為で、私はこんな個人的な感情なの。

 貴方が言うほど私は立派じゃない。みんなの優しい気持ちに気付けたのに、その声が聞こえたのに、その時躊躇った私を動かすのは国でも同胞でも無くてね・・たった一人の彼なの。

 そんな私でも……みんなは許してくれるかな?」


 瞳を涙に濡らして目を開けた。そこには目を閉じる前と変わらない光景がありました。当然です。だけど陰で覆われてた様な感情は今はどこかに消えていて、もっと違う見方が出来る気がします。

 ノウイ君のクリスタルに刺さった姿も、あれは私に進んで欲しかったから。逃げれない事を悟っても、それでも立ち向かってくれた勇気の姿。

 私は嘆くよりも前に進む事をしなくちゃいけなかったんだ。あの状態で何でずっとノウイ君があそこに居るのか。それはきっと心配してるから何です。


 こんな風に成っちゃった私を彼はずっと見てる。戦闘不能でも見続ける事は出来るから……だからノウイ君は消えないんだ。

 そんな彼にこれ以上、あの状態でいて欲しくない。早く解放して上げたい。すると私の言葉を聞いたテッケンさんが優しく言ってくれました。


「みんなの事は僕には分からないけど……ノウイ君の言葉でこれだけは言えるよ。きっとこの国の誰もが、君の幸せを願ってるってね」


 その言葉を聞いたとき、私の視界は完全に晴れました。実はずっとさっきの私の目が長い間続いてたのかの知れない。お姫様のに、私は何を見ていたんだろう。それか本当に何も見てなかったのかも。

 スゴく反省……反省の極みに至りたい。何だかさっきよりも体が圧迫されてる感じが小さくなった? 体を覆う影が少し色を持っている様な・・これって何なのかな?

 分からないけど、きっとこれまでの様な悪い物じゃない気がします。


「ありがとうございます。テッケンさん」


 私はそう言うと再び瞳を閉じました。そしてもう一度、差し出される手のひらの前に立ちます。真っ暗な闇の中で、私の方に差し出されてる無数の腕。

 淡く光ってるそれはさっきよりも多く成ってます。本当に、みんな優しい。優しすぎです。こんな私なんかに。


(これは私のワガママ。だけど応援してください。今度こそ捕まえるから。大丈夫、私には分かります。まだアギトは生きてるって。

 だからそしたら、ちゃんとみんなともう一度頑張ります。諦めたり何かもうしません。逃げたりなんかもうしません。だって今のこの道は私が自分で選んだ道。

 それに私はこんなに恵まれてる。約束します。必ずこの国を落とさせないって……私、アイリ・アルテミナスの名に賭けて!)


 私は一番近くの腕に自身の手を重ねます。するとその瞬間、一瞬だけど、その腕の一人一人と繋がれた様な気がしました。私が一方的に見てる幻覚なんじゃ無いのかな?

 気のせいかも知れない……でも、確かに沢山の腕に私は言いました。

「ごめなさい」と「ありがとう」を。そして瞳を開けて、この地に手をつき、優しく撫でながら言います。


「アルテミナスもありがとう。でも、もういいの。返すねこの力」


 すると私の体から溢れ出てた影が、地面に染みて行くように消えていきます。体に貯まってた黒い力もこの大地に吸い取られる様に私の体を解放しました。

 そしてそれと同時に影化していた私の体に実体としての重さが戻ってきました。肌も白くて、髪もちゃんとストロベリーブロンド。

 今、私は私を取り戻しました。アイリと言う存在をです。すると私の足下に吸収された影が一面に広がって行きます。


 アルテミナスに戻ると思ってた力……だけどそうじゃないのかな? でもその時、力が目指してる物に気付きました。それはクリスタルです。

 ここに突き出す黒く淀んだクリスタルに、私から出された力は吸われて行きます。そしてついにはより黒く成ったクルスタルから次々に割れて行くんです。


「これは一体……」


「クリスタルはアルテミナスの象徴です。そしてエネルギーの供給もクリスタルはしてくれます。そんなクリスタル達が、私の淀んだ心に感応した力を引き取ってくれたんだと思います。

 この地に実は返す事なんか出来なかったんです」

 だって本当はきっとアルテミナスの力は、こんな淀んだ物じゃ無いんです。もっと真っ白な筈……だから白に淀んだ色を混ぜて全部を淀ませる事は出来ないから、クリスタル達がその役目を負った。

 私はそんなクリスタル達に頭を下げます。


「ごめんなさい」

 

 

 そしてそんな中ついにはノウイ君が突き刺さってたクリスタルも砕けます。私は思わず駆け寄ろうとします。だけどその時、テッケンさんの激しい声がそれを制止ました。


「待つんだアイリ君!! まだここの戦いは終わっちゃない!」

「え? きゃっ!?」


 ドッガアアンどクリスタルの破片が盛大に夜空へと昇りました。キラキラ光る欠片の雨が私達の頭上に降り注ぎます。

 そして発信源には何かが渦を巻いてる? あれは蛇の様に動く剣……と言うことはあそこに居るのは間違いなく親衛隊。


「はは……あーはっはっははは!! やっぱりアイリ様! 貴女はバカですよ! どうして我らを倒さずに力を手放すんですか? 折角の奇跡が台無しですよ!!」


 渦を巻いてた蛇が解かれて姿を現す親衛隊二人。どうやらこの時を待ってたみたいです。そしてそんな二人を見て、苦い顔をテッケンさんがします。


「くっ……確かにアイツ等を倒すなと言ったのは僕だが、この状況の打開策はこれで消えたのは真実か。だけど君だけでも必ずここを切り抜けさせてみせる!」


 そう言ってテッケンさんはウインドウから何かを取り出します。ここで出すものと言ったら切り札……多分それしか無いでしょう。あれは巻物かな? 

 だけど私はそこまで追いつめられてるテッケンさんに言います。


「大丈夫です。私に任せてください。テッケンさんには仕上げをお願い出来ますか?」

「ん?」


 ニコニコ笑顔で言う私を見て巻物を落としそうになるテッケンさん。意味が分からないのも無理無いけど、今は説明してる暇はありません。

 だからおもむろに私は前へ進みます。


「随分な自信じゃないですかアイリ様? 力も無くして、無力な自分に戻った事を理解してないんですか? それは傑作だ」

「そんなことより、あのモブリの切り札見たかったんだが、邪魔しないでくれますかアイリ様」


 二人してイヤな目を向けて来る親衛隊。私は大きく息を吸ってそんな二人に言ってやります。


「貴方達、誰に向かってそんな口の効き方してるんですか? 私は正真正銘、この国の王族に連なる姫ですよ! 頭が高い! 下品な口を閉じて頭を下げなさい!!」


 するとその瞬間この場がポカーンと成った。そして沸き起こる大爆笑。今まで余り笑わなかったもう一人の方まで笑ってます。

 だけどそんな笑いも不意に止まって歪んだ顔が現れました。


「はぁ? 姫ってなんだそれ? そんなお飾り、何の意味もねーよ!! 目覚ましてやるからちょっと死んでみろよおおおお!!」


 迫る蛇と一緒に親衛隊二人も私に向かってきます。確実に獰猛な蛇の刃は私を捉えてる。だけど私は一歩も動きません。

 そんな私の様子に後ろのテッケンさんが郷を煮やして動こうとするけど、それを私は横目で制止ます。アイコンタクトって奴です。伝わるかは分からなかったけど、私の目にはきっと確信と信頼があったはずです。

 だから彼はグッと堪えてくれました。そして再び前を向き、凛と睨んで腕を振る動作を加えて叫びます。


「私、アイリ・アルテミナスは、この国の王族に連なる姫として宣言します! 王族である私に剣を向けるその者達を私は……騎士とは認めない!! 

 過ぎたる力は去りなさい!!」


 それが私の勝機……だって私は、アルテミナスのお姫様。それは飾りなんかじゃ無かったもの。暗闇の中で見つけた一つの真実。

 第百六話です。

 え~と、またまた終わんなかったね! はい、ゴメンナサイ!! いや~もう、自分の構成力の無さに愕然ですよ! まあだけど、何とか勝機を見せれる事が出来たからよかったよかった。

 あそこまで行かなかったらどうしようって事でしたよ。まあでも次でマジにアイリ編は追われます。今度こそ本当。うん絶対と宣言しても良いくらいだよ。

 てな訳で次回は木曜日に上げます。ではまた!

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