1058
風帝武装アウラで駆ける。それは文字通り風になったかの様な速度でだ。この速度でも僕の視界は良好だ。まあなかなかに見晴らしはいいしね。山の中腹にいたし、ちょっと空に飛んであたりを見回して、このアホみたいな目で対象を見つけて、そいつらの良く末にを見て玉があったら追い越して奪う。
そんな感じで行ってる。流石にまだ十分くらいしか経ってないから、向こうも態勢が整ってない。奪うのは案外簡単だった。既に僕は三つの玉をインベントに入れるて。どのくらい奪ってこちらの玉にこれを入れるか……それがもんだいだよね。
(とりあえず奪われた同数は確保したいけど……)
でも流石にそんなに簡単に行くわけないのは覚悟してる。なにせ僕はなるべく近くの玉を狙ってる。近くに固まってる玉がどんどんと奪われていったら、多分会長は気づくだろう。いや、もしかしたら既に……けど流石に三つじゃ足りない。向こうは既に九つは取ってる。流石に対策くらいしろよ――とおもうが、多分テア・レス・テレスの方が上手くやってるんだろう。
こっちは僕が盗った三つだけ。まだまだ序盤だし、焦ってはないのかもしれないが、流れってのはある。このままテア・レス・テレスを勢いづかせるのは危険だ。僕だけでは流れを止めるってのは難しいかもしれない。けど、追いすがるくらいはしないと、取り返しつかないことになる。
(玉の数が少なくなれば、逆に守りやすくはなる。それを期待しよう)
玉が多ければ、それだけ戦力を分散させないといけない。けど玉が減ってくれば自然と一つの玉に集中する戦力は多くなる。自分たちの玉は自分たちでは動かせないのだから、その場で守る事になるし、玉を奪われた所にいた奴らは近くの玉の場所に多分配置換えしてる筈だ。
(けど、テア・レス・テレスの玉の奪取地点が気になる)
僕は移動しながらそう考える。テア・レス・テレスはこの十分でとても広範囲に渡って玉を取ってる。ちゃんと組織として機能してるからこんな連携が取れてるんだろうと思える広範囲さだ。そしてこれは上手く守りの薄い場所を狙ってるんじゃないかと思える。
僕の傍に透明になって隠れてたプレイヤーがいた。ああやって情報収集を担当する奴らが見てるんじゃないだろうか? そうなるとまずはそいつらを潰した方がいい。そうしないとこっちの動きが筒抜けになる。もしかしたらこっちはある程度の玉は捨ててるかもしれないが……どうなんだろうか? マップを見ると、いくつかの玉が赤く光ってるのがみえる。その光ってる個所は二十の玉だ。
他のは光ってない。つまり、この二十個は確実に守る奴だろう。だからこちらのプレイヤー達はその光ってる所に重点的にあつまってるみたい。それで勝てるという算段なのか、この日は捨ててある程度の玉を守って最終日につなげる作戦なのかは知らないが、会長はそんな甘い奴じゃないぞ。
実際は会長が一日目から出てるなんて思ってもないんだろうから、早く知らせた方がいいんだけど……向こうの動きが速すぎてまだ味方と合流できないよ。
「うお!! 貴様は!!」
目の前に敵が現れたが、僕は分かってたんですれ違いざまに攻撃して吹き飛ばしておく。流石にこの程度じゃ死なないが、足を止めなければ追いつかれる心配はない。そのままさっきの奴らが目指して玉を狙う。けどどうやら別のパーティーが既に玉を守ってるみたいだ。しかもご丁寧に障壁を作るアイテムで玉の周りを囲ってる。あれは僕、対策か? 対応が速い事で……けどとまらないよ。さらに僕は加速してまずはインベントから炎を出すアイテムを出してそれを使って更に祝福で増加して敵をけん制する。
魔法と違って一瞬での行使だ。相手は驚いてる。この隙に僕はフラングランで障壁に突撃する。けど阻まれる。どうやらかなりいいアイテムを持参してるみたいだ。流石は現ナンバーワンチームだ。けど! 僕はもう一方のフラングランを腰に戻し、手を伸ばす。剣と拮抗してる障壁に手を触れて、そのコードを読み取る。そして――
「砕けろ!」
――破壊した。僕はコードに日鞠ほど精通してないが、それでもこの日の為に色々とコードを読み取ってきた。具体的には戦闘とかで使われそうなアイテムや魔法を想定して、ローレと一緒に研究したんだ。だからこういう障壁のコードは見慣れてる。アイテムなら、ほぼコードは同じ。こんな事造作もない! 僕は玉を奪ってインベントにしまうと一気に離脱した。まさに風のごとくの早業だ。