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「多いな」
僕はローレと共に、一つのエリアへと降り立ってそういった。ここは真っ白な空間だ。そしてその真っ白な空間に数百人はいる。デカいチームは百人以上はいるし、これでも結構厳選したのかのもしれない。一応今回は総力戦的な事になってるけど、こっちはデカいチームが集まってるから、一応制限はあるんだよね。それに中心的な人が有望な奴らにも声をかけてるみたいで、どのくらいのチームの混合なのか、実際よくわかってない。
「前々から思ってたんだけどさ……」
「ん?」
瞼をこする年相応に見えるローレがこっちを向く。いつもこんな風に隙を見せてたらちょっとは可愛気があるのになこいつ。そんなローレに僕は気になってた事を聞くよ。
「こっちが勝ったら全員がトップって事になるのか? だって結構な数のチームが参加してるんだろ?」
そこだよね。こういう合同チームって大抵報酬でもめるよね。それこそ後から決めるとかだと勝った後に血を巡る争いが……とかになりかねない。まあそこら辺を話し合ってない訳ないけどね。僕は何も聞いてないけど。
「私たちは助っ人……というか協力者的な立場だからこっち側が勝ってもトップになれる訳じゃないわよ。それに今日は向こうのチームに一時的に入る事になるって言ったでしょ」
「それは聞いたけど」
僕たちはローレのチームとして参加する訳じゃないんだよね。細かく見ると沢山のチームが参加してるわけだが、その殆どは大きなどこかのチームに編入して参加してる筈だ。きっとあれだね。実力が確かな奴らを引き抜いてこのバトルに誘ったんだろう。そしてエリアバトルにも参加できるチームの上限があるから、こういう事をしてる。
流石に数百人もいれば、役割的に戦闘に適してないプレイヤーだっているだろうからな。そんな奴らを今回は外して外部から強力なプレイヤーを招いてるって事か。
「一応こっちが勝ったらデカい所のどれかがトップに立つことになってるわね」
「どれかってなんだよ」
何かあるでしょ条件が。
「確か会長を倒したチームだったかな?」
「そんなんなの?」
まあ確かにトップをとった奴が次のトップってのは普通の事か……この戦いはたくさんの人が見てるし、会長とぶつかるときなんてきっと終盤だ。なら沢山の目の中で不正も出来ないのかな? でも懸念もあるよね……だってもしもだよ、大きなチームのどれかが会長までたどり着き、バトルに入ったとしよう。
そして追いついてきた後のチームが援護をしようとしたとする。それを先に来たチームは許すだろうか? 最後はなんか醜い戦いがそこで起きる気がするな。いや、寧ろ会長ならそれを狙うかもしれない。十分あり得るぞ。仲間だった奴らが栄冠を前に分裂なんてよくある話だ。
しかも今回の栄冠はこのLROのトップという栄冠だ。欲しい人はそれこそ何がなんでも欲しいだろう。これだけ大きなチームを作って運営してる奴らとかは特に……ね。
「それでこっちの報酬は何なんだ? お前が中途半端な報酬で動くわけないよな?」
「それは言えないわね。ただ、とてもいい物よ。寧ろ毒を仕込むみたいな?」
そういってとても悪い顔をするローレ。うん、やっぱりこいつはこんな奴だ。絶対ここにいる奴らも全部蹴落として自分が頂点に立つことを考えてるな。今回はその仕込みの為か……こいつは基本自分で動く事をあんまりしないからな。精霊とかチームメイトを色々と動かして自分は高みの見物決め込む奴だ。
けどここにはそれ相応の実力がないと参加できない。だから動いたって所だろう。そんな事を思ってると、この白い空間でひと際高い所にむさそうなおっさんが立った。なんか見た事あるかもしれない……そのおっさんがでかい声で演説を始めた。