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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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 前領主の奥さんという人が今、私たちの前にいる。その形はどこか曖昧で、これで三角頭巾でも頭に載せて気ば確実に幽霊である。服は本当なら色がついてたであろうと思えるドレスっぽい服が白くなってる様に見えるというか、ある様な気がするというか……とにかく、目の前の人はとにかく曖昧――だということだ。


「私としては、さっきも彼女が出てくると思ってたんだけどね」


 そう呟くマイオさん。確かに調べてたマイオさんからしたらいきなりレシアが現れて「誰?」状態だったのかもしれない。でも私からしたらこっちのおばさんの方が誰? だからね。私的にはまだレシアを救える方法があるかもおもったりもしてたんだけど、出てきてたのはレシアではなかった。単純に残念だ。


『……』

「声が、聞こえない?」


 マイオさんがそういうと、口を開いてた前領主の奥さんが喉を抑える。ちょっとショックみたいだね。でも確かに聞こえてはない。多分奥さんは何かを言ったんだろうけど、私たちには届かなかった。霊の声は聞こえないのかな? 今さらな気もするけど……


「何を言いたいんですか?」


 私は意を決してそう伝えてみた。すると姿勢を正して背筋を伸ばす彼女がきれいにお辞儀をしてきた。そして頭をなかなか上げない。それこそ、既に一分は経とうとしてるんじゃないかな?


「えっと……どういうことですか?」


 こんな年上の女性にいつまでもお辞儀されるなんて経験ないからどういう事かわからない。すると私よりは人生経験積んでそうなマイオさんが何かを察した。


「まさか、誤ってるんですか?」


 その言葉にちょっとだけ肩が震えた気がした。どうやら奥さんは『ごめんなさい』をしてたみたいだ。でもこの人に何かされたって気はしないんだよね。さっき戦ってたのもレシアだし、まあ夫婦だから夫の不始末は妻にも責任があると言えばあるのかもしれないけどね。


 私とマイオさんはどうしたらいいのか顔を見合わせる。よく見たら奥さんは口も一緒に動かしてたみたいだ。でも私たちにはその謝罪の言葉も届く事はない。


「貴方の夫は許されない罪を犯しました」

「ちょっ、マイオさん?」


 いきなりそういいだしたマイオさんは領主の顔をしてる。いつもの気さくなお兄さん的な感じじゃない。真面目モードなんだね。私は口を紡ぐよ。きっと考えがあるんだろう。


「その罪を貴方はしっていますか?」


 必要な表情でコクリと頷く奥さん。どうやらどうやってかあの前の領主の行いを知ってるみたいだね。


「そうですか。ですが既に前領主には罪を償ってもらいました。私達が貴方を裁く事はありません。出来うるのなら、そのまま安らかにお眠りください」


 そういう事か。流石だねマイオさん。大人な対応って感じだ。私が感心してると、奥さんはポロポロと涙をこぼしだす。その涙の意味を私たちはしらない。でもこれで……きっと成仏してくれるよね。



(…………んん?)


 あれから五分くらいたった。また私は困惑してる。なぜなら、前領主の奥さんが再びお辞儀して固まってるからだ。どうやら彼女はただ許されるだけでは満足してくれないらしい。どうしろと?

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