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「うおおおおおおおおおおおおお!!」
「でりゃあああああああああ!!」
反応できない私たちと違って、真っ先に反応したのはこの二人。オウラさんとテッケンさんだ。オウラさんはその身一つで。テッケンさんは装備したナックルで落ちてくる象みたいな足を殴ってる。
なんでオウラさんは武器を使わないのか。なんにも装備してない拳一つでテッケンさんと同じようなエフェクト出てるけどね!? ほんとうあの人存在がおかしい。
「オウラさん! テッケンさん!」
「出来る事なら強化を! 援護もお願いします!」
オウラさんの言葉にハッとして皆が動き出す。でも流石に強化魔法は間に合いそうにない。そもそもさっきの合唱魔法で後衛の皆さんは疲弊してる。一応パパっとシルクちゃんが掛けてくれたけど……って早!? 今、詠唱した? シルクちゃんって何気に凄いよね。
「皆、彼らに続け! 押し返すんだ!」
そのマイオさんの言葉に騎士達が剣を胸の横くらいで構えて剣から青い光を放ちだす。そして息を合わせて光の線を放った。押されてたオウラさんとテッケンさんがちょっと持ち直す。行けそうだ。レシアの事は気になる。けど今はまだ話せる状態じゃない。
ならまずは話せる状態までしないとだめだろう。だから今は……ごめんレシア。私も剣を構えるよ。
「やああああああああ!!」
私は気合を入れて飛び出す。銃で攻撃してもいいけど、スキルが育ってるのは剣の方だ。銃はあくまでトリッキーな用途であって純粋な攻撃力はまだ剣の方が高い。だから強力なスキルを選んで私は使う。けど、私が届く前に後ろから大きな黄金の柱が追い越していき、それが切っ掛けで完全に押し返した。
「ええ……」
私の覚悟と決意……一撃に込めたこの力をどうしろと……うしろを向くとセラさんが聖典を展開してる。あのチート装備……ほんと反則。まあアレだけ自由自在に動かせるのは彼女だけで、そのハードルが物凄く高いからチートなんて言われることはないんだろうけど、汎用性高すぎだよねあの武器。
象の足を解除したレシアが前かがみになる。お腹でも痛くなった? とか思ったが違った。なんと背中から翼が生えてきた。黒い翼だ。透き通る様な肌のレシアにとても似合う。でもここはダンジョン内の空間だ。広いけど、有限の空間なのは変わりない。
空を飛ぶことは有効だろうけど、背中の羽もとても大きくて、流石にここではちょっと邪魔そう。そう思ってると地上でレシアは羽をはばたかせる。すると凄い風が吹いてくる。私たちは踏ん張って飛ばされない様にする。
「ぐあ!?」
そんな悲鳴が響く。何が? 風は確かに凄いが、攻撃があった様には……そうおもったとき、私の頬に何がかする。僅かな痛み……HPがわずかにへってる。そして次々と悲鳴が上がる。後ろの方からが多い。前衛の人達はちゃんと反応してる?
え? 私だけ何が起こってるかわかってない?
「羽だ! 後衛は固まれ。騎士は後衛の前を固めるんだ!!」
マイオさんのその言葉で騎士たちがじりじりと動いて後ろを守る様に隙間を埋めた。なるほど……羽ね。私もあそこに入れてもらっていいかな? 見えないんだけど? 皆見えてるの? 異常なオウラさんは素手で何かを落としてる。テッケンさんも迎撃してるみたい。セラさんは聖典でシールドを張ってる。もう何でもありかあれは。
シルクちゃんも魔法で防御してるようだ。けどシルクちゃんは私とかなり同じはず。うんうん。でも私は防御出来ないよ!
「いっつ……」
気づくと腕に黒い羽が刺さってる。その痛みで気がそれて踏ん張りがおろそかになった。体が浮く。私は後方に飛ばされた。