狂気の宴
堕ちて行く……暗い暗い闇の底へ。私はどうして何も出来ないの? どうして何も守れないのかな? 許せないよ。あの親衛隊が……そして何より、何も出来ない私自身が許せない。
力が有ればと願った。ううん掴んだんだ。無理やり私は、闇の底への扉を空けてその力を。正しくない使い道で、私はアルテミナスを搾り取る。
闇夜に蠢く何かが見えてた。いいえ違う……その何かは闇夜に蠢いてるんじゃない。私の中にそれは居る。私の眼球の中を闇へと染め上げていってるんだ。
光を……映せない闇へと、私はきっと落ちてる。行かなくちゃ行けなかったのに、どうしてこんな事になっちゃんたんだろう。
私はただ、この世界がみんなにとって楽しくて楽しくて仕方ない場所であることを望むのに、どうして悲しみはどこまでも付いて来るんだろう。
何かを間違えたのかな。それともやっぱり最初から間違ってたのかな。グラウドを倒して横から奪った力……だけど次第に私も亡くしていったんだ。
始まりはアギトで、次第に周りのみんながどんどん離れて行く気がしてた。そして今度は私をずっと支えてくれてた筈のガイエンが行っちゃった。
傍には居たけど、もうずっと前からきっと心は離れてたんだ。
だけど私は誰も責められない。私のせいだもん。私がダメだったから、私が何も出来なかったから……離れてくんだ。そして今も……何も出来ないままの私のせいで彼が狂気にやられてしまった。
(こんなのは……もうイヤなのに……何で、大切な時に私はいつだって無力何だろう)
アギトが私の前から居なくなった時もそうだった。何も出来ない私だった。彼を止めることも出来ない私だった。離れていく誰かを、繋ぎ止めて置くことが出来ない私。
でも……今度こそはって思ったのに。
目に映るクリスタルに突き刺さった黒い影。暗くてシルエットしか分からないけど、それはノウイ君何です。私がまた無力だった証は最悪の形で私の心を叩き出した。
痛くて苦しくて辛くて……何がアルテミナスを統べる者ですか!! 何が姫やら王女ですか!! 誰一人……助けられないじゃないですか!!
大切な人も……守りたかった人々も私は救えない!! 幾ら覚悟を決めたって、どれほどの力を手にしてたって、必要な時に無いんじゃそんなの役に何てたたない!!
だから私はノウイ君の刺さったクリスタルを見つめて言ったんです。もっと直接的な力が欲しいと。この虫酸が走る笑い声を今すぐ止める力が欲しいと。
でもそれはカーテナへじゃ無い。だってカーテナは結局物でしかないもの。だから私はこの地に叫び願った。
(力を……力を寄越しなさいよアルテミナス!!)
その瞬間、元から私を浸食してた影の上からもう一つの影が私には見えてた。そしてその更に濃い影は私を瞬く間に包み込む。
私も抵抗なんてしない。心は不思議な位に満ち満ちていくのを感じてた。そして私の眼前は完全に闇に染まる。
「あは、ははははははっはは!! 流石LRO! まさかぶっささるとはな!!」
不愉快な声……虫酸が走り耳が腐るよう。こめかみの辺りがズキズキして一刻も早くコイツを消し去りたい。だけどあれ……何だかふらついちゃうよ。
上手く立てない。いろんな方向から圧迫されてるみたいで……何だろコレ……もうパンパンに成っちゃって――
「うげぇ!? がっは!! ……ぶげぇええ!!」
「アイリ様!?」
――ブチャ、ベチャっとお腹をせり上がって来た物を私は吐き出した。こんな事、LROで初めての経験。吐くだ何て……何だろこれ?
「どうしましたかアイリ様? ちょっと貴女には刺激が強過ぎましたかね? でも大丈夫ですよ。貴女にはあそこまではしませんから!!」
「くっ……」
頭に浸食するようなそんな言葉が忌々しい。テッケンさんが私を庇うように前に出てくれるけど、彼の背中じゃ私を覆う事も出来ないよ。
それにもう……私は手に入れてるから良いんだ。そんな事されなくても。
「はは……ふふふ……げぇっ! ぼへっ……あはははは!!」
口を開く度にこみ上げる嘔吐感。だけど私は気にしない。何だか吐く度に面白くなって行く感覚で、口の周りの酸っぱい臭いが頭を程良くフラットにさせてるよ。
「はは、壊れたのか? なあ、スクラップはどうしたら良いんだ? 用済みか?」
「あの方はカーテナの力を使う為の鍵だ。その存在があるだけで良いんだから、倒しはする――」
「――うるさい……」
さっきから人を散々物呼ばわりしまくって……
「アイリ様、ここは下がってるんだ! どうにか僕が――」
「――うるさい……」
「!?」
テッケンさんも、小さな形でチョロチョロと目の端で動き回られるとイライラしちゃうな。それに邪魔しないで欲しいよ。
私がやらなきゃ何だ。私が出来なきゃ行けないのに……これ以上目の端で動き回られちゃ、つい攻撃しちゃいそうだよ。
「この状況で何言ってるのか分かってるのかなアイリ様。しかも唯一の味方にまで。マジでおかしくなってんじゃねーのか?
そのモブリ、さっきの目が点野郎よりも頼れるだろ。あんな逃げるしか出来ないクズなんかよりな。あんただって思ってただろ?
あんなクズがエルフだなんて、恥みたいなもんだってなあ!!」
「うるさああい!!!」
その瞬間、私の中に溜まってた闇やら影が一気に放出された。自分がどうなっているのか分からないけど、これはもうただ肌が黒くなって、目が赤くなる次元じゃない。
でも不思議……全然怖くなんか無いんだよ。
「ごちゃごちゃごちゃごちゃ、借りれた力のひけらかしがそんなにご自慢? うげっ……あはは、アンタのその哀れな言葉……もうお腹一杯なのよ。あはははは!」
グシッと私は無造作に汚れた口元を拭おうとした。だけどあれ? 自分の腕が口元に当たらなかった。ううん、正確には当たってはいた。影の様な物体の腕が。
でもそれには皮膚の感触は無くて、脈もない。温もりも勿論有るわけ無くて、触れると影が拡散するだけ。もしかすると全身がこの状態?
じゃあまさか顔も影の様になってるのかな? 私は腕を顔に近づけていく。だけどその時、親衛隊の声がそれを邪魔した。
「ははは……まさかアンタの口からそんな言葉が聞けるとはな。随分印象変わってるぞ。借りれた力か、だけどお前はその自分の力で壊されたんだろ!
負け惜しみにしか聞こえんなあ!!」
奴の蛇の様な剣がうねりを上げてこちらに向かってくる。だけどその時、小さなモブリが飛び出した。けれどそんな彼をあざ笑うかの様に切っ先は向きを変えてテッケンさんをかわして向かってくる。
「くっそ……逃げるんだアイリ様!」
「あっはっははは、逃げる? そんなこと」
その瞬間、蛇が私の頭を貫いた。そこは丁度私が触ろうとしてた場所。でもやっぱり、どうやら全身が影に成ってるみたいだ。
だって、全然痛くないもん。視界が一つ減って、頭に直接ジャラジャラという音が聞こえて不快だけど、全然これっぽっちも痛くない。
「おいおい、殺してしまったか?」
「やりすぎだ。頭を狙うなんて……」
途中で途切れたもう一人の親衛隊の言葉。どうやら彼は気付いたのかも知れません。でも普通は気付くよね。攻撃が決まって有頂天にでも成ってない限り……私の顔はきっと見えてるもの。
どうなってるかは知らないけど、きっとそれは笑ってるよ。そう笑ってる。
「アイリ……様? なのか? 君は本当に……」
一番近くに居るテッケンさんが足下で何か言ってるけど、そんなのどうでもいい。だって今はそんな事を気にする場合じゃ無いほど嬉しいんだもん。
力が……力が私にある。せり上がってくる力を感じてる。いっぱい吐く度に力がこみ上げて来るんだよ。
「くふふふふ……ねえ、誰を殺したって?」
「「――っつ!?」」
二人の親衛隊の目が見開かれたのが見える。面白い、面白いよ。今日初めてあいつ等にあんな顔させた。思ってたよりも、暗闇の底も悪いものじゃない。
これで奴らを倒せるのなら……奴らを痛めつけれるのなら、この位どうって事ないよ!!
「ねえ! 教えなさいよ! 誰を殺せたって!? 誰が恥さらしだって!? ……うるさいんだよアンタは!!」
私は蛇が頭に風穴を開けてる状態のまま腕を振り上げました。それは決して私の腕が届く距離じゃない。だけどその瞬間、蛇を操る一番ムカつくアイツが吹き飛びます。
そしてそこには、私の体から溢れ出てる黒い影が有りました。
「がはっ!? 何だ……これは?」
空中に浮いてる時にもう一発浴びせてそいつを後方へとばし、それと同時に顔を貫通してた蛇も抜けて行く。だけどやっぱり頭を這いずり回られてる様でイヤな感じ。
けどそれ以上にアイツ等を叩くのは面白い。
「ふふふ、あはははははは!! 何って力でしょ? アンタが愉快気に話してた力って奴!! どう? 見直してくれたかな? かなぁ!? あははははは!!」
「力……だと? カーテナも無いアンタに、こんな力有るわけ……ない!!」
そう言って再び蛇が私に迫ってくる。そしてもう一人の奴も向かってきてる。そして蛇と剣の連続攻撃が私に迫る。だけど避けるのもめんどいし、まだ信じて無いようだから見せて上げよう。
それに力を使わなくちゃ、お腹のこみあげる物が酷くなる。
私は拳を前に突き出して、その前方に黒い影を集中させる。闇よりも暗い黒い影。地面から湧き出る黒い影。そして攻撃が届く寸前でそれを解放させた。
まず先に小さな線が走ったかと思うと、一気に私の背のよりも大きな黒い閃光が向かって来てた親衛隊と蛇の間に放たれた。
「ぐうおおおおおおおお!?」
そんな声と共に生まれ出た風圧に弾き返される親衛隊。そして蛇もウネりながら使い手の元へと弾かれた。黒い閃光が通った後は完全にそこが消滅したように成っている。
だけど不思議と爆発とかはしなかった。元がアルテミナスの力だから放たれた後、しばらく進んだら地に帰ったのかも知れない。
それか闇に溶けたとか……それはそれで面白いよね。
「どう? わざと外したんだからちゃんと見てたよね? 焼き付けた? じゃあ想像しなさい。自分達にあれが突き立てられる瞬間を」
そんな言葉を浴びせた瞬間の奴らの表情は最高だった。見えだした恐怖の色。それが私の暗い心を満たしていく様。もっともっとそれが欲しくなるよ。
だけどまだまだ、奴らの気持ちは折れない。ナイト・オブ・ウォーカーと加護が有るからなかなか絶望してくれない。
「ふざけるなよ! 今更何だよ!!」
「ああ! そうなったアンタをあの人に見せる訳にも行かない!!」
「あはっはははは!! いいよ、もっともっと苦しめてあげる! 私がそうだったように、ノウイ君がそうだったようにね!!」
そう、こいつらが嘆くまでやってやる。それでいいんだ!!
親衛隊二人の攻撃が同時に迫る。逃げ場なんて無いように、蛇が私の周りを覆った。そして一気にその幅を縮めてくる。
でもこんなの今の私には……そう思っていたら蛇の連結部分が光りだした。これは何かの技の前触れ? そして私の体に食い込んできた蛇は、その瞬間大爆発を起こす。
視界が一瞬で奪われて、耳もキンキンする。体の半分は消し飛んだかも知れない……だけど。
(アルテミナス!!)
そう思うだけで、地中から湧き出る黒い何かが私を力強くしてくれる。そしてボフッと爆煙を抜けると待ちかまえてた様に、もう一人の親衛隊が待ちかまえてた。
「今のアンタに容赦は不要だろ!!」
そう言って加護で底上げされたパワーと剣に纏わせてたスキルで私を一刀両断する。するとその剣線が通った場所から今度は無数の土のトゲが私の内側を襲って来た。
これもまた実際ならやっかいなスキル……けれど私はその時、闇に溶けるように消えていく。そして消えた私の居た場所の半歩後ろから身を乗り出して親衛隊の一人の首を掴んだ。
「がっは!?」
「あはは残念。容赦も遠慮も不要だよ勿論。だけど……それは私もだからね!!」
「がっ……影……の、分身だったのか……」
力を込めて握ってる筈なのにいびつに歪む声が聞こえる。腕力はあんまり上がってない? ポキッとこいつを逝かせる気だったのに……だけど驚愕と恐怖に染まる顔色も悪くないかもしれない。
面白いもん。
「それは違うな~。あれも力その物。ぶべぇ! ……ふふふ、常に溢れだして来てるんだもん。こういう感じで」
何だかもう、自分が何を吐いてるのかも分からないな。そもそもLRO内でお腹から何が出てきてるって言うんだろう。
私は言葉の終わりと共に、首を絞めてた奴を地面に投げた。そう私が吐いた物の上にね。そしてその上で、無様に息を必死に吸ってる姿が愉快。
ばっちい物のせいでそいつも吐き気がこみ上げてきたのか口を押さえて、でも空気が欲しい感じも相まって板挟み状態。
「あはっははははは。加護程度で直接アルテミナスから力を取ってる私に勝てるとでも思った!?」
「うっ……ぶはぁ……何だ――っづ!?」
私は唐突に顔を上げた親衛隊の頭を踏みつけてやる。何だか丁度良い場所にあって、丁度良い踏み心地してるよ。グリグリと私の汚物に擦りつけてあげる。
それを表現してるだけって感じだけど、屈辱じゃないかな? 親衛隊はエリート意識高いから。汚物に頭を擦りつけられる。それは本当に悔しい事の筈。
だから私には出来ちゃうよ。
「ふふ、だから私にはね。アルテミナスがついてるの。分け与えられた程度の力じゃ勝てないよ。さあもっともっと、悔しがってよ! 怯えなさい!!
私の千倍、百倍……後悔なさい!! あははははは!」
ガツッガツっとヒールの部分で頭を蹴りまくる。するとその時、私の体を何かが貫いた。だけどそれだけじゃ終わらない。
切っ先は軌道を変えて更に私を切りつける。胴体部分もうねりをあげて、いろんな所を切りつけて来た。
「うおおおおおお!! それ以上は許さんぞ、化け物!! 貴様は完全に落ちてる! 人でもない!!」
奴はもう一人の親衛隊。ナイト・オブ・ウォーカーをもってノウイ君にあんな事をした奴。だから私は思った。
(ああ、アイツの方が許せないや……)
そして周りをジャラジャラ言わせながら飛び回ってる蛇がウザいから、取ってみようとした。けど触れた瞬間に私の手は無くなっちゃった。
影に……闇に成ってる私の体は攻撃を受けない代わりに脆いみたい。しょうがないから遠距離でフルボッコにしてやろう。
そう思って私を視点を奴に合わせて腕を振るう。それに併せてこの闇が奴を攻撃してくれる筈。見えるカーテナの力みたいにね。
だけどそれは起きなかった。
(何で?)
腕を見るとそこには何も無い。代わりに蛇がその刃を響かせてる。
「やらせるかよ! 脆い体ってのは不便だな化け物!」
どうやら奴は私が振りきる前に腕をピンポイントで消滅させたみたいだ。そしてその勢いのまま、もう片方の腕、左足、右足と逝かされた。
「はっははっははは!! 何が力だ! 結局アンタはその程度何だよ!」
後方へ倒れていく私に浴びせられるそんな言葉。そして再びスキルを帯びた蛇がとどめと言わんばかりに向かってくる。
だけど……
「なら教えてあげる。その体にたっぷりと、アンタ達が欲しがったカーテナ、それ以上の力を……」
その時私は、五体満足で蛇が伸びてる真横に居る。もれなくその正面に奴。蛇の突き進む余波で影が揺れるけど問題ない。
私であって、私でない物でも倒してればいいよ。
「なっ!?」
「今の私に躊躇って言う優しさは無いからね!!」
その瞬間奴は一気に後方へ吹き飛ぶ。そして上へ上がって滅多打ちだ。私は髪を振り回して笑いまくった。
「あははっははっはははっははははははははははは!!」
死ね死ね死ね死ね死ね死ね。そんな感情が爆発してる。だって許せないの、どうしたって。笑ってるのに何だか目が熱かった。
その時、更に大きな物が中からこみ上げてきて私は動きを止めて膝を付く。
「うげぇ! がほ……がはっがは……ぐえぇ!!」
何だろうこれ……体が重い。吐いても吐いても押さえられない物がこみ上げてくる。
「アイリ様!」
それはきっとテッケンさんだろう。だけど私はそれでもまだ息の根がある奴を見てた。だって一緒にしなきゃ許せないよ。ノウイ君と同じ結末を与えてやる! それだけが頭で巡ってた。
鼻を突くような臭いの中で、私は必死に腕を伸ばして闇を操る。簡単だよ。上へ上げて落とせば良いんだから。実質あげればいいだけ。
(後少しだよノウイ君……)
そして腕を振ろうと思ったその時、私と奴の間に小さな影が割り込んだ。
「邪魔……なのよ……それじゃ視界に奴を入れれないじゃながっは……はぁはぁ」
カーテナと同様、視界に入れるだけで攻撃出来る代わりに見えてなかったら何も出来ない。何で……今更なのテッケンさん。
「ダメだ! それ以上、力を使っちゃいけない!! カーテナは武器だから耐えられてたんだ。君の体じゃアルテミナスその物の力を受け入れ続けるなんて出来ない!!
そもそもそんな事が起こり得た事が奇跡何だよ。でも……これ以上はいけない!」
「貴方に……数日前に会ったばかりの貴方に何が分かる!? 私の絶望の何が分かる!? 私の苦しみも痛みも分からない貴方に……この制裁を止める権利なんて無い!」
這い蹲って目の前にモブリに私は凄む。だけど彼は引かない。悲しい顔に強い瞳を宿して言います。
「あるさ!! 僕にはある! 僕は頼まれてるんだ。君を必ずアギトの所まで連れていって欲しいと。仲間とすれ違っても、それでも友を想う彼に託されてここに来た。
でも……連れて行かなきゃいけない君は、そんな君じゃない。だから僕は止めなければいけないんだ! 君が戻れなくなる前に!!」
「は……はははははは!! べほっかは・・何が戻れなくなる前なのか分からない。それって……守るべき人たちに守られて……あまつさえ見殺しにしか出来ない私?
そんな自分に! 戻る気何かない!!」
喋る度に吐き出す物は多くなってる。見た目は全然変わってない感じだけど、今にも破裂しそうな風船の感じなのが分かる。早く力を出さなきゃいけない。
取り合えず目に付く物に視点を会わせて僅かに腕を振るう。すると小さくクリスタルの一つが欠けた。全然ダメだこんなんじゃ。
もういっそ、邪魔な奴から打っ叩いて行こうかな。だってさっきからウザいもんこの人。
「本当に……そんなに前は悪かったのかい? そんな筈無い!! 君はノウイ君から聞いたじゃないか! 聞かされたじゃないか! その言葉を忘れたなんて言わせない!」
「ノウイ君の……言葉……」
そうだ、彼は私に感謝してるって言ってくれた、みんながそうだと伝えてくれた。だから少しだけ良かったと思えた……だけど、その後に起こったのはあんな事。
「幾ら感謝されたって……私は自分が許せない! 弱い自分。何も出来ない自分。そして願ったこんな力だよ。
今更遅いじゃない……幾ら取り繕ったってもう戻れない。生まれた黒いこの感情は本物だもの。みんなの為に、こんな私がやれる事はもうこれだけよ!!」
そう言って私は腕を振る。その瞬間ドン!! っと言う音が耳に届いた。そして消え去ったテッケンさんの姿。これで邪魔者はいなくなった。
大丈夫、後一発なら打てる。これで終わるんだ。やっとで私にも何かが出来る。でも何だろう……ずっと何かが引っかかってる。
違う……悲しいんだ。もう戻れないから、あの輝いてた日々に。それが自分で分かる。でも……この黒い感情は抑えられないの!
「うあああああああああああああああああああああ!!」
第百四話です。
え~とまずはごめんなさい。これで終わると思ってたけど終われませんでした。次回絵h続くで。だけど次には絶対に追われます! どういう風に成るのかはお楽しみで。
てか聞いてください。さっきまで次に上げる分を半分位書いてたんですけど……消えちゃった(泣) 全部!! もう死にたい。まあだけど間に合わせるのでご心配なく。
てな訳で次回は日曜日に上げます。それではまた~!




