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私たちは再びこの場所に戻ってきた。それは天井に張り付いた気持ち悪い卵みたいな物がある場所。前領主の忘れ形見の様なものがある場所だ。あんな物残しておくなよ……と心のそこから思うが、残ってるのはしょうがない。
私たちは万全の態勢を整えて、あの卵の駆除にきてる。
「うわぁ……」
「あれが……」
テッケンさんがそう呻き、シルクちゃんがゴクリと唾を飲み込んでる。オウラさんとブシさんは何やら精神統一? 的なことをやってるのか、二人とも軽く目を閉じてる。やっぱり強い人は精神が大事なのかな? まあブシさんの実力はまた聞きでしかしらないけど。
でもオウラさんの強さは本物だ。リアルなら敵なしだろう。けどここはLROだからね。単純にオウラさんもそこまでキャラを育ててる訳じゃないから、最強かと言われるとうーんと言わざるえない。
けど、オウラさんは足りない分の差はリアルでの戦闘経験で補う事が出来る程に強い。心配はないだろう。セラさんはというと、結構後方に控えてた。反応もそれほどない。私実はセラさんって苦手なんだよね。厳しい目つきしてるし、ちょっと怖いというか……ね。
「どうするんですか?」
「まずは合唱魔法を叩き込むよ。色々と調べた結果、燃やすのが一番安全だと結論が出てね」
「なるほど」
初手からデカい魔法で決めにかかるって訳だね。初手必殺は悪い選択じゃない。確かに折角来てくれた皆には悪いかもだけど、楽が出来るのなら、それに越した事はないよね。騎士団の後方にいる魔法部隊の人達が同じ魔法を唱えてる。
「結局あれが何なのか分かったんですか?」
合唱魔法は準備に少し時間が掛かる。まあその分強力だけどね。とりあえず初手の合唱魔法でどうなるかだから、私はその間にマイオさんに話しかける。
「まあ、何となくは……ここには別にも部屋があってね。そこでここの研究の資料とかをいくつか見つけたよ」
「どんなの……だったんですか?」
私は興味本位でそう聞いた。けどどうやら、その研究とやらはかなり……そのヤバイものだったみたい。だってマイオさんが凄く真剣な顔して聞きたいかい? と言ってきた。その目が絶対に聞かない方がいいと語ってるみたいだったよ。
「いえ、まあアレを倒す事には変わりないし……べつにいいかな?」
「そうした方がいい」
どんな資料だったのか、実際興味はある。結局ここはゲームの中だ……割り切れれば……ってわたしには無理か。だって私は人一倍このLROという世界には執着がある。ここに生きる人たちをただのゲームのNPCだからとみる事なんて、無理だ。
そんな事ができるのなら、そもそも孤児院を助けてなんかないしね。
「あの卵の様なものが何なのかは分かったのですか?」
資料とかには触れずに、ただ倒すべき敵の情報を得ようとオウラさんはそういうよ。流石だねオウラさんは。
「あれは……そうだね。元は前領主の奥さんだった者みたいだ」
「奥さんですか?」
「ああ、調べによると、あの前領主は仲睦まじい夫婦だったそうだよ。だが、彼は奥さんが死んでしまって変わったらしい。彼が不死を求めたのは、自分の愛する伴侶を復活させるためだったんだろう」
「それで、自分が化け物になったら意味ないですね。そもそも、あのスカルロードドラゴンは自ら力を求めた様に感じましたが?」
オウラさんが戦闘で感じた素直な感想を述べる。それには一緒に戦ったシルクちゃん達も同意なのか、コクコクしてる。
「あれだけの力なんだ。得た瞬間に、何が歪んでしまったのかもしれない」
「皮肉ですね。当初の目的を忘れてしまうなんて……」
私たちは悲し気に不気味な卵を見つめる。そして合唱魔法の準備が整ったようだ。ローブをきた人達がその杖を高くかざす。杖から出る火の玉が集まり、巨大な炎となり、赤から青へと色が変わる。悲しい……あの卵の中にいるんだろう前領主の奥さんにはなんの恨みもないけど……これを放置していいとはやっぱりおもえない。
せめてあの世で会えることを私は祈って手を合わせる。まあ無理なんだけど……青い炎が放たれて卵へとあたり、あたりに嫌な臭いが広がった。