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「あの領主様……」
「領主様はやめてくれ。マイオとでも呼んでくれ」
「マイオ?」
「なんかそうなったんだよな。選択の権利がなくてさ」
「そうなんですか」
なんだか街から出ると領主様の態度が変わった。今までとは違う軽い感じだ。マイオ状態って事? そもそも選択の権利って何? よくわからない。
「あれ? もしかしてわかってない? てまあ、それもそうか。自分はプレイヤーだよ」
「は? ええええ!?」
私は驚いた。だって領主だよね? 領主とかプレイヤーでも成れるの? いや、確かアイリとかは国持ってたし、おかしくないか。そう考えると地方領主とかにはなれても全然おかしくない気がする。
「あっさりバラしましたけど、言ってよかったんですかそれ?」
今までは別にそんな事言わなかったじゃん。私に教えたのは理由があるのかな?
「いや、別に隠してる訳じゃないんだ。ただ、不用意に口に出せないだけで」
「どういう事?」
「わからん」
そういって顎の所を触って困り顔をするマイオ。領主にしてはまあ若い見た目してるとは思ったけどね……二十代くらいにしか見えないからね。領主と言えば、もうちょっと歳行っててもおかしくないのが普通のイメージあるし。
「あっ因みにこの格好も勝手になってるからな。これは自分が作った見た目じゃない」
「へえーそんな事あるんですね」
「でも君もそうだろう? そしてあのスオウ君も」
私はちょっと警戒するよ。スオウの事とか、恨んでる人は少なからずいるからね。この人もそうかもしれない。だってつまりは前のキャラはなくなり、もう一度始めようとしたら、こんな選択権もないわけわからない状態で始まったって事でしょ?
スオウが恨まれる要素ありありだ。
「まさか、私たちに復讐する為に連れ出したんですか?」
武器を手に取り私はそういうよ。
「くっくくくくくく」
すると彼、マイオさんはそんな声をだして笑い出す。そして顔を片手で覆って、表情を隠す。まさか……本当に?
「なーんてね。ははっビビったかな?」
「は?」
ちょっとカチンときた。何この人、私嫌いかもしれない。
「いや、ごめんごめん。ちょっと悪ノリしただけさ。確かにこの状況は謎だし、LROなのになかなか自由がないわけだが、楽しんでるよ。だから君たちのせいだとはおもってない。ただ……」
「ただ?」
そういってマイオさんは遠くをみていった。
「友人に再び会えたらって思ってる」
友人……この人ボッチなのかな? それならまあ……ゆるさなくもないかもしれない。ちょっと親近感わくし。今の私は全然ボッチじゃないけど、一人の悲しさはしってるよ。
「これもその一環なんですか?」
「いや、これは必要な事だ」
そういって彼は剣を抜く。周りを見ると狼型のモンスターが取り囲んでる。領主様も大変だね。私もとりあえず切っ先をモンスターたちへと向ける。この程度の敵なら、私だって!