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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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違いの始まり

 俺達はカーテナを手にして色んな事をした。そう色んな事をだ! まあそれは本編を読んで頂けば分かると思う。

 そしてそんな色んな事でまだまだドタバタやってる時だった。あの日までのカウントダウンが静かに始まったのは。


 新たな光の昇りと共に、ここから今のアルテミナスは始まったと言っても過言じゃない。だけど大抵のエルフの人々はその意味を理解せずに見つめていた人ばかり。

 そして連敗続きの侵略戦でやる気なんて殆ど失われてた筈だ。そんな彼らに再び火を灯らせるのは簡単じゃなかった。

 アイリの事なんて誰も知らないし、まだこの時は誰もカーテナの性能を知る由もなかった。流れてたのは噂ばかりだからな。

 それにアイリがカーテナを手にしたってのも噂に陥るみたいな状況にも成り掛けた。まあそれだけ信じられない事だった訳だけど。

 俺達三人もまだまだカーテナに付いては謎だらけだったし、示すには力が一番早かった。エルフってのは力って言葉に弱いんだ。だから中にはあんな力に溺れる奴が出て来たりするんだよな。


 でもカーテナを手にした次の侵略戦は酷かった。多少なりともグラウドの名前は人集めに役立ってたらしいことを痛感した瞬間だ。

 だけどここらの連敗も広がってるだろうから、やっぱり結局はこんなもんかと思えもする。カーテナをアイリに奪われて以来、姿を消したグラウドとレイアードの面々。

 今にして思うと、二十人くらいでも常に集まってくれるだけ助かってた。だってこの時に侵略戦に集まった人数は過去最低。確か二十人にも達してなかったと思う。

 だけどそれでも必死に集めた人数だった。カーテナの力を示す初舞台、どうせなら勝利で飾らなくちゃだろ。まああの人数差で勝負を諦めてなかったのは俺達だけだったんだけどな。

 けれどそれも当然。何の希望も無く頑張れと言う方が酷だ。だからアイリは見せる気だったんだ。始まるその時まで、みんなに声を掛けてた。


 そして始まった侵略戦。ここで負けたらもう後がない程重要な戦い。それなのに集まった人数はたかが知れずで、相手は余裕をかましてた。

 今までの俺達の戦績とこの人数じゃ、策さえも必要無いって感じだ。まあそう思われても全然文句も言えない状況だが。そこでアイリ一人が前へ進み出て行く。

 ここで重要なのは力を示すことだ。それもみんなが奮い立てる様な憧れる程の力……エルフが追い求める力の最終形とでも言いたい位の力。

 だからアイリは一人で進み出る。


「行ってきます」


 そんな言葉を残してただ前へ。誰もがそんな事無茶だと思ってた。俺とガイエンも実際はそれが出来るかは確証なんて持てない。

 けれどアイリは決めた。


「まずは私が示します」


 それだけの決意を秘めてたった一本の小さな剣を携えて大軍に向かう様は、実際かなり格好良かった。そしてこの侵略戦で起こった事はLRO中の話題となる。

 相手が油断してたからこそ格好の宣伝へと成ったが、それだけじゃない。これはアイリの勇気の結果。大軍を固まらせてた相手はきっとアイリが何をやってるのかすら分からなかっただろう。

 ゆっくりとカーテナを掲げて振り下ろす。その瞬間、相手の全員が地面ごと潰れた。そして再びカーテナを鋭く上へ。すると今度は地中からの攻撃で全員が空へと綺麗に放り出された。

 そして何が何だか分からない内に滅多打ちだ。空中で左右上下斜めまで加えてのフルボッコ。反撃何て出来る間も無く、HPが低い奴らから退場していく。


 一見するとそれをアイリがやってる様に見えないのも凄いこと。だってアイリは相手を見つめてカーテナを振っているだけだからな。

 そこに派手さ何て無い。でもその静けさがまさに圧倒的って奴を感じるんだ。こちら側の連中は息を飲んでた。そして全員を戦闘不能にして息一つ切らさずにアイリはこう言った。


「どうでしょう? これがカーテナの力です。もう一度、私と共に戦ってくれませんか? アルテミナスの為、そして私達エルフの為に」


 アイリのこの言葉にこの時、あの戦闘を見た人達の中でそれを拒む人なんて居なかった。そして上がるのは勝利の雄叫び。

 それは格別な物。何てたって国としての初勝利を俺達は飾ったんだからな。



 そしてそれからも侵略戦は続いた。まあ結局、ある程度の力を手にしたからって国という大きな侵略意識は、そうそう消えないらしい。

 それにどうやらどこもかしこも裏で同盟とかを結んでるらしく、必然的にアルテミナスは都合のいい国に成ってる。完全にいろんな事を出遅れたから、このLROでほぼ孤立状態みたいに成ってた。

 他の国と違ってアルテミナスはみんなの意見を纏めて伝えれる様な国家元首みたいな立場の奴が一人も居なかったからな。しょうがないと言えばしょうがないが、そのせいでのこの窮地だ。


 相手にするのは常に二国以上という厳しい侵略戦。あれからカーテナの存在はLRO中に知れ渡ったし、その力も良いようにも悪い様にも伝わった。

 だから相手も警戒してる。もう最初の様には行かなくなった。それを予期しての最初のアレだった訳だけどな。それに元々、アイリは一人でやる気なんか無かったんだ。


「みんなの場所だもん、みんなで守らなきゃ」


 そんな事を言ってた。そしてそんなアイリの思いは少しずつだけど確実に伝わってる。侵略戦を重ねる毎に俺達と共に戦ってくれる人達は増えていったんだ。

 そしてそんな侵略戦の合間を縫って、俺達はカーテナと共に新たに発生してた王家クエスト第二段へと挑んでそこでようやくカーテナの鞘を手に入れる。これでカーテナの暴発を押さえられる様になった。

 てか完成形として鞘がないといけなかったらしい。どうりで偶に振ってもいないのにカーテナが暴発して建物をぶっ壊してた訳だ。


 どうやらカーテナ自身はアルテミナスから無尽蔵に力を供給されていて、だけどあの小ささだからかそんなに蓄えて居られないらしい。

 だから偶に貯まったエネルギーを放出してた。そしてそれがアルテミナスを壊すんだから本末転倒だ。そこで供給される力を効率よくアルテミナスに再び戻して循環させる役目を負うのがカーテナの鞘な訳だ。

 それによって使い手のアイリが傷つく事も無いわけで、放出され続けた力は光明の塔が輝く一つになって国を巡る。


 そしてもう一つの問題だった『騎士』の事。それは王女様が伝えくれていたカーテナが持つ権限。ずっと考えてくれたいたらしいそれは、騎士を求めたガイエンじゃなくアイリは俺にその力を与えてくれた。

 それは慌ただしい中の一コマの様な抜けた時間。もう一度だけ二人でアルテミナスを離れた時の事だ。俺はアイリに渡す物があって・・アイリもその時には決めてくれていた事らしい。

 だから俺達は受け合って誓い合った。そしてあの時、俺達は変わらぬ騎士の誓いを立てたんだ。




 それから何回かの侵略戦を経て、アイリの言葉はアルテミナス中に届くように成っていた。今や光はカーテナじゃなく、アイリ自身とでも言える位だ。

 アイリを中心にこの国は大きく纏まってきてる。それを感じれる。そして大きく成って行くにつれて国軍なんて呼ばれる様になったり。

 いつの間にか侵略戦の度に集まる人数が前の比じゃ無くなってる。二十人……え? 何それ? そんな時代あったっけ? てな位だ。

 でもそれだけ大きくなったら指令系統が必要に成ってくる訳で、自然と組織みたいな事に成っていく。そしてそれを率先してやったのがガイエンだ。

 てか何だか手慣れてた。他人をバカにしてる様な毛があるのに使う側は好きなようだ。そして名も無き俺達の組織は侵略を防いでいく。


 それが続くとまた志同じにする仲間が増えていく。ここまで来ると、一回の侵略戦で協力してくれる人達には事欠かない。

 ガイエンの奴が色々と調整してくれてるらしいからな。

 だけどそろそろ守るだけでは行けなくなってきてる。本当の勝利は守るだけでは得られない。アイリが願う元のアルテミナスの形は既に失われてるんだからな。

 だからここからは反撃開始。取り戻さなきゃ行けない。アルテミナスの土地を。そしてそれはこれまでの戦いとは違った。


 アルテミナスでは圧倒的な力を震えたカーテナも、他国の土地に成った場所では、どうやらその力を完全には振るえないらしい。

 まあそもそもかなりカーテナ対策をして来る様になった相手国にカーテナ一辺倒で勝てる訳も無くなってた訳だが、それでもその力は大切な物だった。

 こちら側には安心感を与えてくれるし、敵にはそれでも脅威を与え続けることは大切だ。カーテナは視界に入りさえすれば、相手がどれだけ離れてても攻撃を加える事が出来る様だから、相手はもう玉砕覚悟か逃げ回ってシンボルを先を見つけるしかないわけだからな。

 だけどこれからは戦闘でもそこまで圧倒する事は出来ない。これからはもっともっと一人一人の頑張りが必要になって、これまで以上のまとまりが鍵になる。


 だけど今度は前と違う繋がりが出来てる様だ。みんなの意識が前とは違う。苦戦をして、そして結果的に勝てない事があっても組織に集まる人は途絶えなかった。

 それどころか


『絶対に取り戻す!!』


 って意志が強く成るみたいな。それはアイリが願った、みんながこの国を大切にするって事だろう。それは今、こうやって形に成りつつある。

 でも次第に大きく成る組織の中で、一人の意志ってのはなかなか言いにくく成るものだ。自由な行動も今のアイリにはほぼ無いし……アイリは優しいから、誰の言葉も聞こうとする。

 まあそんなアイリだから大人気な訳だけど。俺達のアイリだったのに、そこにみんなが付くと指に光指輪を見ても、あんまり良い気はしないんだよな。


 身勝手な独占欲だけど、不安だろ。アイリの自由は無くなって、それで大丈夫なのか。誰だってここには、LROには誰しもがリアルでは得られない自由とかを求めてた筈だ。

 まあ野望を持って来てる奴もそこそこ居るが、アイリはそういう奴じゃない。それに集まった人の分だけ、アイリに掛かる責任は大きく成りそうだった。

 それも覚悟してた事だが、それは周りで俺達が支えていくことが前提だ。でも膨れ上がった組織の中では俺も自由に出来ない事がある。

 最初の騎士として、いつの間にかアイリだけじゃなく、俺達二人にもそれぞれの立場って物が出来てた。俺はいつだって侵略戦の時は最前線に立ってたし、ガイエンは参謀として作戦総指揮をとる立場。



 侵略戦が領土奪還に移行してからは更にその立場が強くなった気がする。カーテナに頼らない集団戦闘戦に成ってきてるから『ナイト・オブ・ウォーカー』と作戦は守るときより重要だ。

 でもプレイヤーも人で、激しさを増していく侵略戦の中、予想外の事は良く起こる。それは向こうもきっと必死だから当然何だろうけど、作戦だけに頼ってばっかも居られない。

 俺には力があったから、そんな時は無茶の連続だ。そしてそう言う時は必ずガイエンの野郎と言い合いだ。あの頃はゴタゴタしてたから、命令を聞かない俺はきっと厄介だったんだろう。


 でも前線ではそこに居なければ感じ得ない事がある。その時守れるのは自分だけで、その力が有るのならやらない訳には行かない。

 だから俺とガイエンは何度も何度もぶつかる。でも二人にも立場が有るとそれがただの言い合いじゃ収まらない時があって、それに正論じみた事はガイエンの方が得意なんだよな。

 だからこの頃から、俺は既に少しづつ孤立してたのかも知れない。



 奪還戦は実際、そうそう上手く行かなかった。カーテナはやっぱり思っていた以上にこちらの戦力に成ってたし、前ほどの威力が無いと相手側に知れると向こうは勢い付いてきたからな。

 それに向こうは国同士の連合軍。カーテナの力が十分に発揮されずに戦うのは正直厳しかった。それでも良くやっていると言えばやってたわけだけど、でもまだ一つも取り戻せてない。


 押し戻されず、攻めきれず……みたいな。そんな折りに持ち上がったのが第三の王家クエストの達成だ。現状打破の為に更なるカーテナの機能覚醒がもう必須条件みたいな。そんな感じに成ってた。

 そしてこの王家クエスト達成で得られたのが正式な称号と言うか……アイリにとっての立場を決定づけたもの。今まではやっぱり一組織の頂点でしかなかった訳だが、この第三の王家クエストで得られた物は入城の権利だった。

 それは完全にアイリが王家に連なった事を意味していて、強制イベントでアルテミナス中がお祭り騒ぎに成った程だ。


 そしてアイリの王族化に伴って俺達もアルテミナス城へと入城出来た。これに寄ってバラバラな寄せ集めだった俺達には『軍』という、この国を背負う者達の名で呼ばれる様になる。

 まあそれぞれ全員がこの国を盾であり矛になった。それは騎士と同義だ。だからかな? 俺達が入城出来たことでカーテナの新たな機能が解放されたのはさ。

 それはもしかしたら前から有ったのかも知れない。だけどどうやらそれを受けてたのは俺だけで、他はカーテナには騎士と認められて無かったのかも。

 でも軍になって、それを示すシステムが作られると、みんなが騎士と認証された。だからその力は名を持ってカーテナのスキルの一つに加わったんだろう。


 それが騎士一人一人に能力強化とブーストを付加するスキル『カーテナの加護』だ。そしてこれは条件を満たせばアルテミナスの領土外でも有効な事がわかった。

 カーテナの加護に寄って俺達は次第に侵略戦で押し始める。その条件を満たす為に、アイリは直接戦場に来れなく成ったけど、カーテナの不足を数で補えるほどに加護は凄い能力強化を与えてくれた。

 どれだけの人数でも余すことなく加護は行き渡るし、戦闘中に切れることはない。それに普通は魔法とかアイテムでの僅かな防御力・攻撃力上昇とか命中率アップとかたかが知れてる付加が当たり前だが、加護はどこか違うんだ。


 多分全部が上昇してる。動き一つとってもそれは雲泥の差だ。加護を受けてるときはLROと深く繋がってる気がして、そしてアイリを感じれる。

 そんな気がしてるのは俺だけかも知れないが、おかげで取り戻せたいくつかの領土。それに寄って光明の塔の輝きは少し力強さを増していく。

 もう今の俺達は以前のエルフとは違ってた。完全にさ。きっと他の国でもその評価を改めたのもこの時期だろう。もうエルフを自己中だなんて言わせない。

 その自信がみんなにあった。

 だけどこの頃か……しばらく消えていた不審な影がアルテミナスで目撃されるように成ったのはさ。それもガイエンと共に入るところをだ。




「はあ? グラウド? 奴がどうしたって?」


 久々に出たその名前に、俺は少し動揺して報告に来た兵に聞き返す。するとそいつは周りをキョロキョロ確認して、耳元を手で隠すようにしながらもう一度言う。


「だからですね。ガイエン様が多分、そのグラウドって人と会ってたらしいんですよ」

「本当なのかそれ?」


 俺はいぶかしんで聞き返す。すると首をひねって曖昧な言い方に切り替える。


「う~ん確証はないですけど、でもほら、グラウドって有名だったじゃないっすか。まあ今のお三方には及びませんが。

 でもアルテミナスだけならそれなりだったでしょう? だからこの事を伝えた奴も見間違えるとかは無いと思うんですよ」

「まあ……確かにな」


 俺たちの前は確かにグラウドだったし、アイツはアイツでかなり目立ってた。だからエルフなら見間違うはずはない……か。でも今更どうして。何が目的だ?

 それにガイエンと会ってた? そっちも見間違える筈がない無いことだ。何であの二人が……ガイエンはグラウドの事嫌ってた印象しか無いけどな。

 それなのに二人で会うなんて、ガイエンの奴も何考えてんだ。既に自由な俺たちの城と化してるアルテミナス城の専用部屋でそんな内緒話中。


 俺たち三人にはそれぞれの部屋がちゃんと与えられた。俺は別にいらないって言ったけど、ガイエン的には立場場それはダメらしい。

 そこら辺は組織になったから上に必要な威厳とかなのか。俺には過ぎた事だけど、与えられた物はしょうがない。

 流石城だけに一室一室が豪華な作り。装飾品も実際、今まで止まったどの宿屋より華美だ。そして今そばにいるこいつは、俺の部隊の一人。

 俺はいつも前にいるから、突撃部隊とか強襲部隊とか名付けられてガイエンに作らされたんだ。


「貴様も部下を持って責任感でも養え」


 とか言われてな。まあ大きく成ってた軍だし、いつか来るかもしれないと思ってた事だ。だけどやっぱりなんか合わないよな。

 それとも慣れないとでも言うべきなのか? 俺は他の誰かを部下だ何て思えない。後輩とかならまだ分かるけどさ、社会経験が無い俺には部下とか言う感覚がまだ養われてない。

 それはきっとアイリも一緒だと思う。アイツはアイツの下に集ってくれた誰一人も部下だなんて思ってない筈だ。俺たちは仲間じゃいけないのかよガイエン。

 そんな事を思っていると、木製の扉が二回叩かれて声がした。それは思いを巡らせてたガイエンだ。


「おいアギト、次の奪還エリアが決まった。作戦を立てるから貴様も来い」


 ここでガチャっと扉を開けずに歩き去ろうとするんだからガイエンは質が悪い。だから俺は慌てて扉に駆け寄る。


「おい、その話他言するなよ」

「了解です」


 そう念を押して扉を開けると、もう既にガイエンの野郎は廊下の先に行ってやがる。たく、一人で来させたいなら、場所を言え! 場所を! 


「待てよガイエン!!」


 急いで駆け寄るとガイエンは俺を一瞥して歩調を変えずに言葉を出す。


「貴様にしては珍しいな。いや、ようやく部下の使い方を知ってきたと言うことか」

「はあ?」


 何だこいつ。実は部屋の前で俺たちの会話を聞いてたのか? だってガイエンは扉を開けなかった。それは中をみてないって事で、それなのに部屋にはもう一人居た事を知っている。

 それってそういう事だろ。たく、何やってんだよこいつ。合わない性格なのに、そこに人を使うから余計俺たちの溝は深まるばかり何だよ。


「お前さ、一体最近何やってんだよ。お前が言う部下ばっかり走らせてるよな? その間にお前……何やってるんだ?」


 俺は横から鋭い視線をガイエンに送ってみる。まあちょっとした探りだ。やっぱりグラウドと会ってたてのは気になるしな。

 だけどこんな事で動揺するようなガイエンじゃない。


「アルテミナスの為に、エルフの為に私は自分に出来る事をやっている。敵を倒す事しか出来ない貴様とはやるべき事の多さも、考える事も圧倒的に多いんだよ」

「ふ~ん、でも倒さなきゃ勝てないだろ?」

「敵なんてウジャウジャと、それこそ絶え間無く沸いてくる物だ。だから考える事が必要なんだよ」


 むむむ……相変わらず正論を吐きやがる。確かに目の前の敵を倒すだけじゃ勝てないのが侵略戦だ。くそ、なかなか悔しいじゃないか。

 どうにかこいつを揺さぶってみたい。そしてあわよくば何か情報が欲しい。今の軍の情報は一手にガイエンに流れてるから、実際コイツが何しようとなかなか気づけないからな。

 ここまで一緒にやってきた……一応……仲間……だし。信じて無いわけじゃ無いが、本能が言うんだ。コイツには気を付けろってさ。


「なあガイエン。知ってるか? 最近グラウドが居るらしいってさ」

「グラウド? ああ、あの負け犬か。それがどうした。私達は今や官軍だ。国家権力。レイアードなど、目にも入らぬ小さな虫と同じだろう」


 そう言ってガイエンはグラウドの事を笑い飛ばして終わらせた。だけど俺には、やっぱり言いしれぬ感覚が胸中で靄の様に広がって行く気がしてた。

 第百一話です。

 この話はまあ随分省略させてもらいました。だって出ないともう十分長いのに更に長くなりそうなんで。しかしいよいよ引っ張った部分にきました。さあ三人に一体何が!?

 てな訳で次回は月曜日に更新します。ではでは~。

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