1006
「コードは? 会長は手に入れたか?」
僕は焦ってそういうよ。
「ううん、出てこなかったね」
やっぱり会長もコードを手に入れてはないようだ。問題を解決した直後にもらえないということは……僕と会長は春のお姫様を見る。そんな視線に一瞬怯むお姫様。何やら悔しそうな、嫌そうな顔。まさか本当に僕たちがどうにか出来るとは思ってなかっのかもしれない。
「諦めなさい」
「そう、約束でしょう? それを破るなんて――」
「わかってます。わかってますよ」
秋と冬の姫様達の援護射撃もあって春のお姫様も覚悟を決めたようだ。凛とした表情を作り、姫の顔になる。そして一歩前に出た。
「ご苦労様でしたお三方。その功績に報いる為に報酬を差し上げます」
そんな口上を口にする春のお姫様。すると自然と会長とセラは地面に膝をつき、首を垂れる。お前らはそういうのをどこで学んでるの? 現日本にそんな教養を教育してくれる場所ある? あまつさえセラはリアル知らないからお嬢様の可能性がない訳でもない。まあお嬢様というか従者の印象強いが、思えばそっちの方がこういうマナーは知ってそうな気はする。
でも会長はずっと一緒に育ってきた筈だ。僕たちの周りでこんなの教えてくれる教室なんかないだろ。そもそもリアルじゃそうそう必要ないし……流石にここまでへりくだらないしね。まあとりあえず見様見真似しとくけどね。
「光栄です」
会長がそういった。僕たちも感謝を述べた方がいいのかな? チラリとセラを見ると静かに頭を下げてるだけだ。どうやら僕たちはいいらしい。代表者だけでいいって奴かな? それなら僕もただじっとしておこう。
「貴方たちは祭壇への道を所望ということでしたね」
「是非に」
春のお姫様はその手を前に出す。その指には指輪がはまってる。けどそれはお姫様がつけるにはあまりにも質素。だってなんの宝石もついてない。ただの銀色の指輪にみえる。けどお姫様が呪文を唱えると、その指輪の周りに陣が広がる。そして何やら文字列が浮かび上がった。
その時僕は会長の瞳が真剣さを一段階増したのを察した。あれはコードだろう。そして会長はそれを記憶してる。あいつならそのくらい出来る。お姫様は指輪がはまってる指でコードの一つをつまんで差し出してきた。そんな感じなの? てかお姫様の判断でいいの? 秋の時は王様が出てきてたよね? まあこの場でくれるならそれに越した事はないけどね。
「ありがとうございます」
そういってコードを受け取ってる会長だけど、僕には一つ不安がある。それ……ちゃんとぼくの分もあるんだよね? 一つにしか見えないけど、共有できるよね!? 結果的に言えばちゃんと僕もコードを手に入れられた。もともとコードは物質じゃないし、会長に入っていったら、自動的に僕にも追加された。
よかった。ここまでやって僕だけノーム手に入れられないとか、なんか嫌だ。これであとは夏だけだ。