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雷撃が進む先が僕には見えてた。雷撃は地面を進んでる筈なのに、僕には見える。けどそれは視界ではないのかもしれない。いうなれば雷撃が進むべき場所が見えるというべきか。僕には目的地だけが光ってる様に見えるから、そこに目指すだけ。
雷の妖精のおかげでかなり制御できるてるから力の減衰は最小限にとどまってる。これが僕だけでこれだけの力を制御しようとなると、無理だっただろう。やはり妖精は祝福と相性がいい。どうにかして他の属性の妖精も手に入らないか本気で考えた方がいいかもしれない。
けど、それもこの精霊巡りが終わらないと……な。じっさいこれで会長がリアルに戻れるのかわからないし……本人が言ってるからやってるが……
(いや、今はそれより!)
目的地に達した瞬間、僕の意識は肉体に戻るかのようにビクッと反応した。
「上手くいった?」
会長がそう聞いてくる。ちゃんと成果があったのかがここからじゃわからないからね。何か大きな音が鳴り響いたりはしてないらしい。
「ちゃんと届いた……と思う」
僕はそういう。不安気な感じなのは、あれでよかったのか正直わからないからだ。なんか変化もないようだし……刺激を与えれば何か起こるとおもったんだけどね。検討違いだったか? とか思ってると、僅かに地面が振動しだした。
それは次第に大きくなり、地面に足をついてる僕たちは立ってられなくなった。そして地面の所々から紫色の煙が湧き出てくる。それは空に拡散していくんじゃなく、紫色の雲をあたり一面に作り始めた。そして視界が紫色になる程に空気が変わっていく。甘ったるい気持ち悪い匂いが充満しだす。
そして植物はもれなくどんどんこの紫色に染められていく。
「きゃ!? スオウ、今はそんな場合じゃないよ。嬉しいけど!」
「なんの事だよ?」
いきなり変な声を出したと思ったら変な事を言い出す会長。心なしかちょっと顔が赤い。
「ちょっとスオウ」
「ん? ぶほっ!?」
今度はセラの奴が近づいて来て僕の顔面を殴った。可愛らしく平手打ちなんて物じゃない。こいつがやったのはグーパンチだ。僕は後ろにのけぞった。
「何すんだ!」
「変な所触られたから」
「僕じゃないだろ!」
あまつさえ会長は近いから可能性はある。やってないけど、会長の近くには僕しかいなかったんだからね。けどセラの奴は手が届く範囲にいなかったじゃん。それで殴られるっておかしい。
「知ってる。けど、他にいないじゃない」
「なにその、僕なら殴っていいとかいう認識。今すぐ改めろ!」
「そんな事より、これって――」
おいおい、誤りもせずに話進めやがったぞ。まあ確かに話し合ってる場合でもないけど……どうやら会長たちにお触りしたのは僕たちの周囲を囲む植物みたいだ。紫色に染まった花々はうねりながら一つにまとまりつつある。
「おいおい……」
周囲の花が集まり、周りの土が姿を現す。本当に一本も花がなくなってしまった。その花々は今や醜悪な化け物へと変わってる。花々が集まった化け物は全長十メートルくらいになってる。頭に不気味な紫の花びらを開き、無数のツタが蠢いてる。
ボフッボフッ――と花から花粉が放たれる。それと同時にツタが襲い掛かってきた。僕たちは各々反撃に転じるよ。