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第5話 変化するボール

 あの日から十二年の時が流れてた。


 シェリーとアメリアは、今や全米で有名な絵本作家になった。それが、日本やその他海外にも知られるようになった。

 

 その絵本のタイトルは「変化するボール」だ。シェリーが文を書き、アメリアが絵を描いた。

 子供から大人まで読める内容で、道徳の授業にもいいんじゃないかと言われている。

 

 それは動物の世界のお話で書かれていた。

 いつも仲良しな「うさぎちゃんと」と「ネコちゃん」と「リスさん」がいました。

 うさぎちゃんは、いつも可愛いと言われてる「リスさん」のことを嫌に思うようになりました。

 その気持ちがトゲトゲボールになりました。

 ある日、うさぎちゃんはみんなにリスさんが酷いことをしたと言って、そのボールを渡しました。

 

 仲良しなネコちゃんまでもリスさんのことを悪く思うようになってしまいました。

 他の動物たちもリスさんのことを悪くようになり嫌なことをするようになりました。

 みんな、トゲトゲしたボールをぶつけたのです。


 リスさんは、「やめてよ」や「何も悪いことをしてない」と何度も言いました。

 それでも、みんなはリスさんの言葉に耳を傾けません。

 リスさんは、仲の良いみんなが怖い動物に見えました。


 でも、みんなの中にはうさぎちゃんからもらったトゲトゲボールを自分に投げられたくない子もいました。自分を守るために、リスさんにトゲトゲボールを投げるんです。

 リスさんが家から出て来なくなるまで、みんなはトゲトゲボールを投げました。

 

 ある日、旅行をしていたクマさんが帰ってきました。

 

「リスさんに、お土産を渡しに行ったらね。引っ越しをしてたみたいなんだ。旅行から帰って、リスさんのお家にいなくてびっくりしたよ」 

 

 その言葉に、ネコちゃんやみんなは驚きました。

 

「ねぇ、みんな。なにかしらないの? 」 

 

 トリさんがクマさんの肩に乗って、今までのことを話しました。

 

「うんうん。そうか」

 

 クマさんは頷いて、辛そうな顔をしました。

 

「クマさんも、リスさんが悪いと思う? 」 

 

 トリさんは、小さい声で聞きました。

 

「僕はね、その事をした心当たりがあるんだ」 

 

「やっぱり、リスさんは悪いことをしたんだね!」

 

 黙っていたうさぎちゃんは、自信満々に言いました。うさぎちゃんは、トゲトゲボールを抱きしめてました。

 

「うさぎちゃんがしたことが、ほとんどだよね」 

 

「えっ? 」 

 

 少しずつ後ろに下がっていたうさぎちゃんは、ギクッとしました。

 長い間、旅行をしていたクマさんでも、話しを聞いただけで何でこんな事になったのか分かったのです。

 

「みんなは、心当たりないのかな。うさぎちゃんが怖いからって、リスさんにひどいことをしたんだよね」

 

 クマさんは、怖い顔をして言いました。クマさんの言葉はトゲトゲボールにはなりません。まるいボールをみんなに投げています。

 

「ごめんなさい」  

 

 うさぎちゃん以外の動物さんたちが言いました。

 

「僕に言っても、意味がないよ」 

 

 クマさんは、みんなの後ろにいるうさぎちゃんを見ました。

 うさぎちゃんは、下を向いて何かブツブツと言ってました。うさぎちゃんのボールは、トゲトゲでいびつでした。

 

「リスさんに、謝っても終わりってことじゃないよ」 

 

 みんなは、ポロポロと泣いてます。少しずつみんなが持っていたトゲトゲボールのトゲがなくなり、まるいボールになりました。

 

「リスさんの心は、みんなよりも傷ついてるよ。それは治すのが難しいよ」 

 

 みんなは、クマさんの言葉を素直に受け止めます。

 

「みんなは、そのうちリスさんしたことを忘れる。でも、リスさんはずっと覚えていて苦しむだよ」 

 

 悪いことをした方は、過去のことだと忘れてしまう。でも、つらくて悲しくなった方は、過去に縛られてしまう。


「あたしは、リスさんにしたことを忘れないよ」 

 

 ネコさんは、涙を流しながら言いました。

 

 その日からみんなは、うさぎちゃんには必要最低限のことしか話さなくなりました。

 みんな、うさぎちゃんのことを信じなくなったのです。

 リスさんにしたように手を突き放すのでなく、手をつなぐ自分たちになろうと生活をしています。

 これからは、トゲトゲボールじゃなくて、相手を傷つけないまるいボールを投げようとしていくのでしょう。

 

 しばらくしてからクマさんの家に、リスさんから手紙が届いたのはまた別の話。

読んでいただき、ありがとうございます。

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