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第4話 歪みと決別

 シェリーがアメリカでアメリアと話をしているときの日本での話だ。

 

 夏休みがあけて、シェリーが家の都合で急遽引っ越しをしたと聞いて数日が経っていた。

 (しゅう)は、屋上に来光夏(くみか)を呼び出した。

 

「別れるってどういう意味? 」 

 

 来光夏(くみか)の声は、イライラして辺りに響く。

 

「なぁ、来光夏は俺に嘘ついていただろう」 

 

「なんのこと? 」 

 

 来光夏は、何で修が別れるかや身に覚えがないことを言われて、さらにイラツイていた。

 

「来光夏が、今までしてきたことを知ってるんだからな」 

 

「だから、なんのことをしたと言ってるか、ハッキリ言ってよ! 」 

 

 来光夏からのイラだちや圧力に、修はほとんどダメージがなく言葉を続けた。

 

「シェリーに、何の恨みがあってしたんだ」 

 

「何で、ここでシェリーが出てくるの?今は、修が別れるって言い出してることを話してるんじゃん」 

 

 来光夏は、シェリーが引っ越したしてからも、自分がしたことが何も悪くないと思ってないのだろう。

 いや、何も自分が悪いことをしてなくて、シェリーが勝手に引っ越したんだと思い込んだ。

 自分がシェリーにした罪の意識から逃れようとした。

 修に言われたことは、すべて身に覚えがある。でも、シェリーがいなければ真実と証明が出来ないので、身に覚えがないと思い込んでいた。

  

「俺が事故にあって二か月間、目を覚まさなかった。その時に願いを込めて手を握ったり、花を持ってきてくれたりしたのは、お前じゃなくて、シェリーだったんだ」 

 

「今更、それがなに? 」 

 

 修も、何も分かろうとしない来光夏にイラついた。

 

「お袋やクラスの人たちに、全部聞いた」 

 

「何を」 

 

「なんで、お前は「何を? 」しか言わないんだ」 

 

「あんたが、中身のない話ばかりしてるから! 」 

 

 来光夏は、何か言い逃れが出来ないか考えていたのかもしれない。

 

「シェリーがしたことを、たまたまお前が来た時に俺が目を覚ましたから、横取りをしたんだろ」 

 

「それが悪いの? 」 

 

 来光夏は、舌打ちをした。

 

「悪いだろう。それがバレないように俺の周りに口止めをした。俺がシェリーに悪態をつくように仕向けたり、クラスの奴らにも嫌がらせをしたりしたろ」

 

 修に向ける来光夏の表情は、今まで見たことがない恐ろしいものだった。彼の中では、違うと否定をして欲しいという気持ちが少ならずあった。

 しかし、彼女を見ると違うのだ実感した。

 

「そんなの、アンタたちがしなかったらいいじゃない。私は別に強制はしてない。アンタらが勝手にしただけ」 

 

 来光夏は、確かに強制はしていなかった。周りに圧力をかけて、シェリーに何をしてもいいと仕向けただけで、周りが勝手にしたことだ。

 強制をしなくても、率先して被害者を追い込もうと作戦を立てて、自分が優位になるように周りを巻き込んだ言動は加害者の中では主犯になるだろう。

 それは、加害者である人の心の歪みが起こした犯罪なのは変わらない。

 

「お前と俺は昔からの親友だった。お前の策略にハマり、仮にも付き合っていた。それに、お前はクラスで影響力があるから、クラスメイトは報復が怖くて断りにくい」 

 

 これは全部計算して行われた「シェリーに対するイジメ」の主犯はやはり、来光夏だ。

 修は騙されていても、それの片棒を担ぐことになった。

 

 修は、目を閉じて深呼吸をしてから、まっすぐと来光夏を見た。

 

「俺は、もうお前を信じられない」 

 

「何で? 」

 

「だから、お前はそれ以外言えないのか」  

 

 来光夏は、別に修が好きではなかった。そして、シェリーのことが心底嫌いで貶めたかった。

 事故前の修はいつも二人に平等だったが、来光夏の心の中ではイラついていた。それは、自分にだけに優先して欲しい気持ちがあったからだ。


 今の来光夏は、妙に修に執着をしていた。

 

「アンタだって、同罪だからね。私の話を鵜呑みして、シェリーを追い詰めたじゃん。なのに今更、逃げるの?シェリーにひどいことした同士一緒いようよ。どうせ、私と別れても今の修は誰とも付き合えないよ。 アンタが変わりたいと思っても、変われないと思うよ」 

 

「俺は、シェリーを追い詰めたことに関しては、お前が言ってる通り、同罪だ。シェリーに今まで通りと言っておきながら、お前の言葉を鵜呑みして親友なのに見舞いを全然してくれなかって、ムカついて八つ当たりしたんだ」 

 

 修は遅すぎた己の罪の意識は芽生えていて、この元凶から縁を切ろうとしている。

 しかし、来光夏は修が自分から離れるのを許せなかった。恋人いうよりは、悪いことをするグループで仲間が脱退するのを許せないのと似ている感情だ。

 そして、来光夏だけ知っている修が変わりたくても変わらない根源を()言ったところで意味がないことを。

 

「シェリーに謝りたくても、出来ないんだけどな」 

 

「はぁ? 」 

 

「お前は知らないのか? 」 

 

「具体的に言って」 

 

「俺らが知るシェリーの連絡先は、全部繋がらないしどこに住んでるのかも分からない」 

 

「ハハッ、あいつ逃げたんだ」 

 

 来光夏は、壊れたかのように笑った。彼女を見る修の顔は歪み、幻滅と絶望の感情が襲った。

 

「俺は、お前とは同じクラスだから。最低限のやりとりをしても、もう今までみたいな付き合いはしないからな。俺はお前と別れたっていうから」 

 

「もう、勝手にしたら」 

 

 来光夏は、修の破局よりもシェリーを金輪際見なくて済むのに喜びを感じた。

 

 

 クラスメイトも、もう来光夏とは最低限の会話しなくなった。彼女は、クラスの頂点からあっという間に底辺になっていった。

 修は、日々反省して巻き込んでしまったクラスメイトに謝ったり、シェリーがしていた係を積極的にしたりと本人には見えないが償いの日々を送った。

 

 

 アメリカにいるシェリーは、毎日充実した日々を過ごせないこともあった。

 来光夏や修たちにされたことが、頭によぎってベッドから出れない日々ごあったのだ。

 その度に、アメリアが部屋に来てベッドサイドに座り一人でゲームをしたり本を読んだりした。

 二人は共にいても、会話をほとんどしない日もあった。シェリーは、無理に何かをやろうと言わず、ただ寄り添ってくれるアメリアとの時間が居心地良かった。

 そのかいがあってか、シェリーはアメリアや他の友達とも少しずつ外で遊べるようになり、自然な笑顔を見せれるようにもなってきた。

 彼女の両親や友人たちは、安心をするようになった。

イジメ加害者は、被害者にされたことが嫌だったり気に食わなかったり、優位に立ちたいと言う動機で犯罪を起こす。

人それぞれに歪んだ気持ちで、相手を傷つけたらいけない。今の日本ではイジメという犯罪を根絶せずに、被害を生むだけ。

僕はそう思う。

読んでいただき、ありがとうございます。

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