プロローグ
過去や現代と時の流れがコロコロと変わっていきます。
私には、小学校からの友達が二人いた。オシャレ好きな来光夏と野球が好きな修と高校生になっても、いつも一緒で登校も下校もしていた。
「シェリー!大変、修が事故にあったって! 」
来光夏からのこの電話が、今までの私たちの関係を壊すきっかけになると思わなかった。
修は、車にはねられた。身体中にゲガをして、包帯で巻かれていた。
その後ニヶ月間目を覚ますことはなく、私一人だけが毎日通って手を握って、目を覚まして欲しいと願った。
来光夏は、修の姿にショックを受けて、事故にあった日以外見舞いにこなかった。
しかし、ニヶ月に修が目を覚ましたときに、彼女だけが見舞いに来て手を握っていた。
修が事故にあってから三ヶ月後に、彼は高校に通学することになった。その前に久しぶりに三人で会った。私と来光夏は学校帰りだった。
「俺、来光夏が毎日お見舞いに通ってくれてさ。目を覚ましてって願ってくれたおかげで、目を覚ましたんだ」
「えっ? 」
「修、恥ずかしいから言わないでって言ったじゃん!もう〜」
「ハハッ、悪かったって。ほとんど、こなかったシェリーの前で言ってほしくなかったよな」
何をコイツは言ってるのか分からない。私だけは、毎日お見舞いに行っていた。
「でも、キレイな花もたくさん持ってきてくれたの嬉しかったんだ! 」
「喜んでくれてよかった! 」
「俺、花言葉知らないんだけど。あれって、なんていう花言葉? 」
「何だっけ?それよりも修が目を覚ましてくれて、付き合ってくれて嬉しい! 」
「えっ? 」
私の目の前で、何が行われてるのか分からなかった。親友だと思っていた彼らが、何を言ってるのか分からない。私の知らない人たちしか見えなかった。
「あれ?シェリー、私たちが付き合ってるって言ってなかったっけ? 」
この時の来光夏の目は、今まで見たことないくらいに恐ろしかった。
「うん。聞いてなかったよ」
「いや、なんか友達だったのに、こうなったらなかなか言い出せないだろ。でも、俺たちは今まで通りだろ」
「そうなんだね。ごめん、お母さんからおつかい頼まれたの忘れてた。晩御飯に使うものだから、暗くなる前に早く行ってこないと」
「そうか。またな〜」
私は、必死に感情を隠して、手を振って別れ道を走った。
私は、ハンバーガー屋さんに入ってお母さんに連絡した。
「シェリー、おまたせ。何か食べた? 」
お母さんは、連絡してから十分後に来てくれた。ここからお母さんの仕事場が近くてちょうど定時だった。
それでも、急いできてくれたのだろうか、汗をかいていた。
「うん」
壁に面したカウンターテーブルには、食べかけのポテトがあった。
お母さんは、もしかしたら奥まったこの席にいる私のことを察してくれたのか、普段と変わらずに話してくれる。
私は、今のこの顔を誰にも見てほしくなかった。
「お母さん、ちょっと小腹空いたからもらってもいい?あとで、何か奢ってあげるから」
「うん」
お母さんは、ポテトを摘んで食べておしぼりで手を拭いて、私の背中を黙って擦ってくれた。私は黙って涙をポタポタと降らした。
どれぐらい時間が経ったのか、ポテトが冷たくなっていた。
そして、隣にはトレーに私とお母さんが好きなハンバーガーがあった。
「今日は、少し早めの晩ごはんを食べたくなってね。さっき、スマホで頼んだの。出来たてよ! 」
お母さんは、私に何も聞かずに出来たてのハンバーガーを手に持って嬉しそうにしていた。
「冷める前に出来たてのハンバーガーを食べて、ウキウキでお家に帰ろう。そして、これからの話しをたくさんしよう。はい、いただきます」
「うん。いただきます」
お母さんと食べたハンバーガーは、冷えた私の心に温もりを与えた。
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