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破壊神

初ブックマークありがとうございます!

久しぶりの静かな朝──。


きっとバリアの外では、また鳩の群れの騒音が起こっているだろう。


心地良い眠りの余韻に引かれ、穏やかな朝の空気がながれる。


よし、今日こそ二度寝しよう。



今日は休息日にして、一日中引き篭もっていよう。


美しい景色を眺めるのもいいが、たまには前世のように引きこもって過ごす休日があってもいい。


ぼんやりとしながら、布団の心地良さを味わっていると、自然とまぶたが───。




「────ッ!」


物凄い轟音と地震に目を覚ますと、空が見えた。



……?空が見える。



でも俺は、先程まで布団で眠っていたはずだ。空が見えるはずがない。


それにちゃんと今だって布団に入っている。


きっと寝ぼけているのだろう。


そのまままぶたを閉じようとしたとき、視界の端に人影が見えた気がした。



よく目を凝らすと、上空遙か百メートルに、豆粒のような人影が見えた。


なんか視線があった気がする……。




嫌な予感に任せ、咄嗟に布団から転がり落ちると、爆風とともにベッドが爆ぜた。



「・・・へ?」



何が起こっているのか、全く理解が追いつかない。


が、ここは危険だと全身が警報を鳴らす。



咄嗟に身を起こして後ろへ走り、タンスの裏に手を伸ばしてスイッチを押す。


スイッチを押すと、床の一部が跳ね上がり、地下へ続く階段が現れるので、ダッシュで駆け下りる。



万が一ノアにバリアを壊されても逃げ込めるように、地下シェルターを作っておいたのだ。


自動で床が降りてくる仕組みにしておいたので、あとはひたすら見つからないように祈りながら階段を駆け下りる。


後ろでさらなる爆破音が聞こえてくるが、この隠し扉には気付いていないらしい。



──このまま気付かないように祈りながら、階段を降りた先の分厚い金属の扉を開き、頑丈な鍵をかける。




・・・・・ふう。これで追って来れないだろう。


今フラグを建てた気がするが、気のせいだ。




 まずは状況を整理しよう。


 朝起きて、二度寝して、爆音で目が覚めたら、天井が無くなっていて、知らない誰かと目があって、布団から転がり落ちたら二度目の爆音でベッドが爆ぜた。



うん、分からん。

大切に作り上げたマイホームが一瞬で吹き飛んだということは分かったが、一体俺が何をしたっていうのか。



そもそもあの見知らぬ爆発魔の、動機が分からない。


少なくとも、俺はあの見知らぬ人物の恨みを買った心当たりが全く無い。



そうなると、恨みを買ったというよりも、あの爆発魔が誰かの命令によって始末しにきたと考える方が自然だ。




──そういえば、手紙。


最近は頻繁に来ていたが、全部読まないで燃やした。


ただ、最初に来た手紙だけはちょっと目を通した。


確か仕事の催促と、そういえば、それなりの処罰があると書いてあった。


それなりの処罰?


俺はただ二ヶ月ほど仕事をしていないだけだ。


しかも仕事はノアに任せてある。


もし仕事が停滞していたとしても、それは使いのノアのせいだ。主は関係ない。



──まさかノアがガチギレして、始末するよう頼んだのか?


いやでも、どうあっても俺はノアの主人だ。


そもそも、身分の低い使いの者であるノアが、主人を始末するように誰かに命令できるはずがない。


それに、ノアがそこまでの暴挙に出るとは考えづらい。


彼女なら、もっと穏便に済ませようとするだろう。



──だとしたら、ノアはこうなることを知っていて、それを伝えるために手紙を寄越していた?



「コツッ…コツッ…コツッ…」



ああ、もう少しで答えが出るところだったのに。


残念ながら、俺の隠し扉がバレる方が先だったようだ。



コンクリートの階段を降りる音が、だんだん近付いてくる。



──俺が目を覚ました一発目の攻撃で、外側のバリア、家、そして生活空間に張っていたバリアが消し飛んだ。


二発目も、あの破壊力からして、一発目と同等の威力があるだろう。


俺と目があって1秒後。


ノアが使ってきた規模の攻撃魔法ですら、ちょっとした気配を感じ取る余裕があった。


しかし相手は明らかに次元が違うレベルの攻撃を、一秒で飛ばしてくる。


どうやって勝てというのか。



 遂に足音が無くなり、扉の向こうに気配が現れた。


──勝てないのならば、方法はひとつ。



「これは違うんだ!勘違いなんだ!ひとまず話を聞いてくれないか!」



 俺が扉の向こうに聞こえるように大声で叫ぶと、気配がぴたっと止まった。


どうやら、ちゃんと理性はあるようだ。


「話が通じるなら早い。とにかく俺の話を──」


立ち上がり、扉を開こうと動き出した瞬間、扉が猛スピードで吹き飛んできた。


──前言撤回。理性もクソもないじゃないか。


咄嗟に躱せたが、もし当たっていたらどうなっていたか。

考えただけでも恐ろしい。



扉の外れた向こうには、この攻撃をした本人が立っていた。



白髪に紅い瞳をした少年。歳は俺と同じかそれよりも下に見える。


一瞬女性と見間違えるほど華奢だが、沼のように深く陰った目からは、生気が感じられない。


例えるならば、殺戮兵器の様な、冷酷な目をしている。



「…話、あるなら…拷問して…聞き出す、だけ…」


途切れ途切れの言葉に、恐ろしい単語が聞こえた。


まったく、どうしてこうなるんだ。


おぞましい気配に体が震えそうになるのを堪える。



──相手は、一歩一歩ゆっくり近づいて来る。



有無を言わさずに殺されるか、あるいはじっくり痛めつけて殺されるか。


どちらが良かったかは分からないが、とにかくこの状況から打開しなければ。



「待て、待ってくれ!どうして俺を殺そうとするんだ⁉」


「…命令、だから」


「じゃあどうしてそんな命令が出されたんだ⁉」


俺には殺されるほどのことをした心当たりがない。


「…知らない。…自分が、一番…分かってるんじゃ、ない…?」


「その心当たりが無いから聞いているんだ!きっと何かの間違えだ!」


祈るような思いで叫ぶと、ふと相手の反応がなくなった。


そっと相手の様子を窺っていると、しばらく俺をジーッと見詰めたあと、ゆっくりと首を傾げた。


どうやら、考え込んでいるらしい。



──ようやく俺に主導権が渡ってきたが、次は何と声を掛ければいい?


そもそもこいつは一体何者だ?


なんのために殺しに来た?



「働かない、神…殺す…勘違い…働いてる…?」


相手は辿々しい言葉を呟いているが、聞き逃せない言葉が聞こえた気がする。



「お前は、働かない神を殺しに来たのか?」


相手は俺の質問に、コクリと頷く。


「…働かない、神…必要、無い。…新しい、創造神…必要…」


つまり、創造神として働いていない俺を殺して、新しい創造神を入れるということなのか。



「…それは誤解だ。俺はしっかり働いてるぞ。俺がいた家も、俺が作ったんだ」


「…それが…創造神の…仕事…?」


訝しげな目を向けられると思い、ひやひやしたが、どうやら単純な疑問のようだ。

創造神の具体的な仕事内容については知らないらしい。


「ああ、そうだ。そこら辺も、お茶でもしながらゆっくり話そうではないか」


震えるのを堪えて、満面の笑顔で笑い掛けたが、相手はずっと首を傾げている。


どうしたのだろう。

まさか、やっぱり面倒くさいから殺すとか言わないだろうか。


どきどきしながら相手の様子を窺う。



「…おちゃ?おちゃって、何?」


「え?」


相手の疑問に、思わず拍子抜けした声が出た。


「まさか、お茶を知らないのか?」


コクリと頷くと、こちらをじっと窺ってくる。


とりあえず、テーブルセットを創り出し、そこに緑茶の入ったカップを出す。


相手は俺の創造神の力を、心なしか興味深そうに見ていて、現れた物を時々突いて確かめている。


「とりあえず座ってくれ」


相手は俺の言葉に従っておずおずと椅子に座り、テーブルの上に置かれた緑茶のカップを眺めている。


「…これが…おちゃ?」


「ああ」


俺も椅子に腰を掛けて、お茶を啜る。


相手も俺を真似て、お茶を啜った。


お味はどうだろうか。


「…おいしい」


彼はほんの少し頬を緩めると、今度はごくごくと緑茶を飲み干した。


そして空になったカップを眺める。


「…おかわりいるか?」


コクリと頷いたので、俺は空になったカップにお茶を注いでやる。


彼はおいしそうにお茶を飲んでいるが、とりあえず話をしたい。


「君は一体何者なんだ?」


俺が問うと、彼は夢中になって飲んでいたお茶から口を離し、カップを大切そうに手で包む。



「…破壊神」


ものすごく物騒な存在であることを知ってぎょっとしたが、彼は淡々と続ける。


「絶対神の…命令、従って…粛清、する…。それと…創造神が…創ったもの…壊す…」


「絶対神?」


後半の俺が創ったものを壊すというのは、破壊神のイメージ通りだが、前半の絶対神の命令というのはピンとこない。



「…一番偉い、神…。命令…逆らえない…」


彼は少し俯いて、カップを見つめる。


「俺を始末するように命令したのも、絶対神?」


彼はコクリと頷いた。



「…創造神、殺したら…もう…おちゃ、飲めない…」


俺を殺すことに抵抗がある理由が、ただのお茶というのが心配だが、彼にとっては重要な悩みらしい。



「その、絶対神に逆らったら、どうなるんだ?」


「…殺される」


薄々勘付いてはいたが、それほど絶対神というのは恐ろしい存在なのか。


「破壊神でも勝てないのか?」


「自分が…死ぬまで…他の神、送りつける…勝てない…」


つまり、戦いになる依然に他の神たちが押し寄せて、そもそも絶対神とわたり合えないのか。



うーん、どうしたものか。


どうやったら互いにウィン・ウィンな関係で事を済ませられるのか。


たとえ、破壊神が俺を殺さずに帰ったとしても、俺が働いていない事実がバレればまた殺しに来るだろう。


ましてや、お茶で改心させたなんてバレたら、俺も破壊神もクビだ。


それだけは避けたい。



 それならば、まずはここで足留めをして、帰るのを遅らせながら考えよう。


そうと決まれば──


「…なあ、ゲームって知ってるか?」


「…げーむ?」


俺は悪魔の囁きに、破壊神は純粋に首を傾げた。


こうして俺の足留め作戦は始まった──。


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