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7. 再会?





 「き、君は……今朝のアップリケくん!」



 

 振り返ると今朝、僕がズボンをお直ししてあげた男の子がいた。



 

 「だぁれがアップリケだ! 俺の名前は金剛だ!」




 「ごめんごめん、金剛くんだったね。どうしたの?」




 こんなところで会うなんて奇遇だ。


 



 「今朝は良くも俺のズボンをこんなにしやがったな。てめぇにはたっぷり礼をしねぇとなと思ってよ」



 「え、わざわざお礼しに来てくれたの? 別に良いのに!」



 「そういう意味じゃねぇ!」




 (じゃあ、どういう意味なんだろう……?)



 

 「金剛さん、やっぱりコイツっすよ。昨日俺たちをやったのは!」


 「やられたのはお前だけだけどな……」




 金剛くんの後ろには、昨日姫路さんに絡んでいた二人の男がいた。



 


 「あ、君たちは昨日の不良くんじゃないか」


 「不良くんじゃねぇ、雷太だ!」


 「風太だ……」




 二人は兄弟なのかな?

 今日も一緒だなんて、仲良しさんで羨ましい。




 「ほー、俺の大事な後輩を可愛がってくれたみたいだな、それにしてもこんな小さいやつにお前らやられたのか」


 「そうなんすよ! 合気道とかナントカで……こいつ卑怯なんすよ!」


 「俺はやられてないけどな……」


 「ってことで、ますますお前を許すわけにはいかなくなっちまったな」



 

 なんだか僕が悪いみたい話が進んでいる。



 

 「僕はただ二人が姫路さんに絡んでて、迷惑そうだったから止めに入っただけだよ。悪いのはそっちだと思うけどな」 


 「なに!? お前ら! よりによって姫路さんに声かけたってのか!」


 「そりゃあんな美人がいたら誰だって声かけるっすよ」


 「俺は声をかけてないけどな……」


 「なんてことしてんだ! 万が一、姫路さんに迷惑をかけたのが俺の後輩だってことがバレて、あの人に嫌われでもしたら……って姫路さん!?!?」




 僕の横にいる姫路さんに気づいたのか、金剛くんはバツが悪そうな顔をする。




 「いつも以上の美しさに、可愛さが増されてて気づくのが遅れたぜ……」


 「お前は昨日の美人じゃねぇか、やっぱり良い女だな」


 「おい雷太、そんな目で姫路さんを見るんじゃねぇ!」


 「イテェ!」


 「ど、どうも、姫路さん。こ、こんにちは」




 金剛くんは、ごんと不良の頭にゲンコツを入れる。

 さっきの態度とは打って変わって低姿勢になる。



 

 「姫路さん、金剛くんと友達だったの?」


 「ううん、ちがうと思う」


 「え! 姫路さん、俺ですよ! 同じクラスメイトの金剛です!」


 「うー……ん?」



 首をかしげ記憶を探っている姫路さん。

 むむむ、と眉間にシワを寄せている姿もかわいいなぁ、おい!



 (これは本当にわかっていなさそうだ……)



「ごめんね、金剛くん。今日は姫路さんと遊んでるから邪魔しないでくれると助かるな」


「そうだね、私たちはこれから限定の苺ドーナツを食べに行かなくちゃいけないんだもんね」


「えぇ!? さっきクレープ食べたのにまだ食べるの!? ほんとに姫路さん甘いもの好きだねぇ」



 「うん、私の体は甘いもので出来ている!」



 ふんすと、姫路さんは胸をそらして誇らしげだ。


 かわいいなぁ、もう。

 甘いものどんどんあげたくなっちゃうね。

 よーしよし。


 

 「ひ、姫路さんが普通に話している。見た目も声も全部かわええ……最強じゃん」




 金剛くんは姫路さんに見惚れている。


 わかるよ、その気持ち。



 

 「ということだから、また学校でね」



 「ちょいちょいちょい! 待ちやがれ! お前みたいなチビで地味な奴が姫路さんと話し出来るからって、調子に乗ってんじゃねぇぞ。姫路さんもそんな男より俺とどこか行きましょうよ」




 「逆瀬川くんを馬鹿にしちゃだめ! それにあなたとどこかに行くのなんかヤダ。今は逆瀬川くんとデート中なんだから」



 ね? と微笑みかける姫路さんの笑顔が眩しい。




 ええええええ、というかやっぱりデートだったの!?!?!?



  

 「くっ、そんな笑顔向けられやがって……許せねぇ。こうなったら姫路さんの前だからとか関係ねぇ。逆瀬川、お前には痛い目を見てもらわねぇと俺の気がすまねぇ! オラ!」




 叫びながら金剛くんが殴りかかってくる。


 僕はとっさに頭を切り替えてその拳を掴む。




 「金剛さん気をつけてください! そいつワケわかんない技を使いますよ!」


 「大丈夫だ、合気道だろ? あんな素人騙しの武術、空手黒帯の俺の体幹じゃ効かねぇよ。」



 「素人騙しだって?」




 僕は向かい合ったまま金剛くんを見上げる。

 僕と金剛くんの身長差はゆうに20cmもある。



 

 「あぁそうだ、テレビ用の演武だろあんなの。実践じゃあ使えねぇってもっぱらの噂だぜ、それにこんなチビにどうににかされる俺じゃねぇよ」



 「それはどうかな?」




 相手の拳を掴んだまま相手の側面の入り込み、腕を振り上げた後、肘を極めて振り下ろす。

 どんっと大きな音を立てて金剛くんが倒れこんだ。




 「痛ってええええ!」 



 「片手取り四方投げだよ、小さくても大きな人を相手出来ることだってあるんだよ」



 「す、すごいよ! 逆瀬川くん! やっぱりかっこいい」




 不良二人が金剛くんに駆け寄る。

 



 「大丈夫っすか、金剛さん……!」



 「な、何が起こったんた……一瞬で見えなかった……。こんなの師範代より強いんじゃねぇのか……くそ」



 「これに懲りたら、もう悪さはしないようにね」




 僕は金剛くんを見下ろしながら忠告をする。



 

 「ここまでの力の差を見せつけられたら、何も言えねぇよ。姫路さんにカッコ悪い姿を見せちまったし散々だぜ……不良になってモテたかっただけなのになぁ」



 「ほんとっすね……でもモテないっすね、不良って流行んないんすかね……」



 「え、みんなモテたくて不良になったの?」



 僕はつい、思った疑問を口走る。




 すると金剛くんは項垂れたままで語り始めた。




 「あぁ、俺は体も顔もゴツくて見た目だから、モテるためには不良にでもなんねぇといけねぇと思ってよ。そしたら余計にみんな離れていってよぉ……」


 「俺は顔が薄くて一重だから睨んでるって逃げられるし」


 「俺は髪も長くて、血色も悪いから怖いって言われて……」



 それぞれに悩みがあって不良になったんだ。

 漫画とかで不良ってモテるけど、現実は厳しいものがあるのかな……。



 

 「見た目が変わればみんなは不良やめる?」




 姫路さんが優しく問いかける。



 

 「ひ、姫路さんが話し掛けてくれた!?」 




 「ん、どうなのかな?」





 「変われるんだったら不良なんてしませんよ」

 「そうっすよ……」

 「うす……」



 

 みんな、諦めた様子でいじけている。



 


 「姫路さん? 急にどうしたの?」



 「逆瀬川くん、みんなにメイクしてあげてくれないかな……?」



 「ん? ……あぁ、そうだね!」



 

 姫路さんの意を汲み取って僕は同意した。




 「男の俺たちにメイク?」 



 「金剛くん、今は性別関係なくメイクする時代だよ?」




 金剛くんの疑問に僕は答える。



 

 「そんなことしたってなんも変わんねーよ……」



 「大丈夫、逆瀬川くんはすーごいんだよ? みんなもやってみようよ、感動するよ!?」



 みんなが渋っている様子を見て、姫路さんが熱のこもった後押した。



 (そんなにハードル上げられると少し困るな……)

 


 「姫路さんにそう言われちゃあやるしかねぇな、良いぜ、逆瀬川。一思いにやってくれ!」


 「お願いするっす」


 「うす……!」


 「じゃあ、行くよ!」




 ○ ●




 「すげぇ!」「これが!」「俺たち……っ!?」




 そこには三人のイケメンが立っていた。




 「金剛くんは濃くて迫力のある顔を活かしつつ、優しく頼りがいがある感じに。雷太くんは一重で悩んでたからアイシャドーで切長でミステリアスな雰囲気に。風太くんは血色を良くするためにファンデーションを使ってヘアアレンジもして中性的に仕上げたよ。」



 「すごいすごい! みんなの良さを殺さずにちゃんと活かしてるんだね!」


 「ありがとう逆瀬川。いいや、ありがとうございます!!」



 「あざっす!」


 「……うす!」




 実はさっきのコスメショップで色々なサンプルを貰ってたんだ。

 早速、活用することになるとは。

 それに、みんな気に入ってくれたみたいだな。



 

 「見た目はこうして変えることが出来るけど、まずは自分を好きになってあげて。気に入ってるところは伸ばして、嫌だなって思うところも自分だから認めた上で諦めずにどうするか考えていこうよ。そうすることで見た目と同時に心も少しずつ成長していくはずだから。そしたらモテる男になるんじゃないかな? ってまぁ僕が言っても説得力ないか……はは」




 自分でも思った以上に語ってしまった……恥ずかしい。



 

 「こ、心までイケメンだぁ……お、俺たち、真の男になれるように心も磨いていくぜ!」


 「不良やめるっす!」


 「良いことする……!」




 「逆瀬川くん……かっこいい」



 「うん、それが良いよ。みんなかっこいいんだからこれから絶対にモテるようになるよ」



 みんなの胸に響いてくれて良かった。

 でも、なぜか姫路さんも感動してるんだけど!?



 


 「お二人ともお騒がせしてすみませんした! 今日から心を入れ替えて頑張ります! お前らもほら謝れ!」



 「昨日はすいやせんでした」



 「……ごめんなさい」



 金剛くんを含めた三人が僕らに頭を下げる。



 「昨日はちょっと怖かったけど、そのおかげで良い出会いもあったし……みんなのこと許すよ!」



 「姫路さんが許すなら僕からは言うことないね! あ、そうだ! また次に会ったときはメイク教えてあげるよ!」



 「え、いいんですか!! 嬉しいっす! 逆瀬川さんレベルまでとは言わずとも、俺たちにできるメイクをご教授願います!! 今日はほんとありがとうございました!!!」




 「「ありがとうございました!!!」」




 感謝の言葉とともにもう一度深くお辞儀をして去って行った。

 


 

 「ふぅ、三人が不良じゃなくなってよかった。あれ、もう日が暮れてる! 僕たちも今日はもう帰ろうか?」




 辺りを見渡すと夕日が差しており、街が紅に包まれていた。




 「……え、苺ドーナツ食べたかったなぁ」 



 「また2人でゆっくり遊びに行こうね、苺ドーナツはその機会にしよ!」



 「……うぅ! 約束だよ!」


 


 そう約束して僕らはそれぞれ帰り道についた。






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