表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/295

64. 反撃の必要がなくなったかもしれませんね

「こんな部屋があったんだね」 プリンスに促されて地下にある”会議室”に移動した。 ここに住んでしばらくになるが、広いのでまだ全部の部屋を見たことはない。この部屋も始めてだ。

 会議室というよりはエンターテイメントルームのようで、座り心地の良さそうな椅子がおいてあり、腰を下ろすと飲み物の好みを椅子に訊かれた。望はコーヒーを頼んだ。椅子の横に小さなテーブルが出て、既に湯気の立ったコーヒーが乗っていた。


「地下の方がセキュリティが良いですからね」プリンスは、そう言うとLCにこれまで接触のあった個人、企業の情報を流すように命じた。


 ゆっくりと流れるリストには望の知っている企業や個人もあったが、ほとんどは知らない名前だった。


「リー、ここに入っていない名前があったら教えてください」 プリンスがリーを見てそう言ったが、りーは首を振った。


「さすがだな。全部入っているよ。まあ、あと個人の情報屋が2~3人いるが、これはただの様子見だろうな」


「それでも、一応名前をお願いします」


「ああ、ヨタ、ブラクにこちらのリストを送ってくれ」 リーが自分のLCに言った。


「わしの方のリストも大体同じようだな。一応そちらに送っておこう」 亜望もそう言って自分のLCに情報の共有を命じた。


「纏めますと、最もしつこいのが、A&Aの政府機関と、連邦情報局、後はミラクル、ナチュラル、といった食品産業系の企業、最近になってプロビデンスから全員のところに侵入があった、ということですね」


「プロビデンス?」 聞いたことがないな、と望が首を傾げる。


「プロビデンスは一流の調査機関です。どこかのクライアントのために動いているのは間違いないので、現在クライアントを調査中ですが、あそこは一流だけに難しいかもしれませんね」とプリンス。


「ちょっといいかな?」 黙って聞いていた亜望が口をはさんだ。プリンスが勿論、と促した。


「その件は、望のLCに任せればすぐわかると思うがね」


「ハチに?」 望が一番驚いている。他のメンバーは、成程、という顔だ。


「それがありましたね。望、ハチに頼めるかな?」


「うん、勿論構わないけれど、どうしてハチならできると思うの?プリンスのところで難しいのに」


「それはまあ、なんだ、最初にちょっとハチを貸してもらった時にだな、少し話をしてな」 亜望が言い淀んでいる。


「フーンそうなんだ。ハチ、お願いできるかな?」 なんだか深く追求しない方が良いような気がした望はそれ以上訊くのを止めてハチを呼んで、調べて欲しい件を頼んだ。


「はい、かしこまりました。プロビデンスの今回のクライアントはブレイブ ニュー ワールドのギリアン ジョーンズです」 執事姿で現れたハチが時間をおかずにすぐに返答した。


「ジョーンズ氏には現在、望様が5歳の頃からラストドリームの制作に携わっていること、現在のHappy Death Coのラストドリームのテンプレートの多くを望様が作成されたこと、望様がウォルター様のラストドリームの付き添いをしたこと、その際にしばらくラストドリームに巻き込まれたらしいこと、更にグリーンフーズのハワイ島の研究所で、あり得ない速さで種から芽を出させたこと、一部では植物と話せるとの噂があること、が報告されております。こちらがプロビデンスからジョーンズ氏への報告の内容です。ジョーンズ氏は継続しての調査を依頼しており、現在もこの邸宅に24時間の監視がついております」

 その報告書にはハチが説明したことのほかに、望の家族、友人、飼い猫のことまですべて網羅されていた。


「これは凄いな。俺のところの奴らより優秀かもな。今度使ってみるかな」 リーが感心している。


「それより、ハチの方が優秀ということですよ」 とプリンスが切り捨てる。


「そうだよね。ハチは凄いね」 自分の過去と生活が丸裸にされているのをみて、沈んだ気分を引き立てるように望が再び執事姿で現れたハチを見て言った。


「有難うございます。 もしご希望でしたら、先方のこれまでの調査記録をすべて消しましょうか?」


「そんなことできるの?違法じゃないのかな?」 どうしようか、とプリンスを見る。


「記録を消しても手遅れでしょうけれど、警告にはなるでしょうね。ハチなら痕跡を残すこともないでしょうし、お願いしましょうか」そう言ってから、プリンスが目を細めた。


「ところで、プロビデンスに侵入できるということは、A&A、連邦政府の調査機関、ミラクルなどのこちらに手を出してきたところにもできるということですね?」 


「はい、リストにあるすべての機関のデータソースから望様に関する記録を消去致しますか?」


「頼みます」 プリンスが同意したので、望が頷いた。



「天宮望様とフューチュア プランニング、望様の御家族、御友人、御友人のご家族に関する記録をすべて消去し、これまでの記録はコピー致しました」 数分後にハチがそう報告した。


「おい、友人の家族って、グリーンフーズの記録も全部消したのか?」 リーが少し慌てたように言った。


「はい。グリーンフーズ関係は多岐に亘っておりましたので、少し時間がかかりました」ハチが澄まし顔で言った。


「うち関係が全部、ですか。もう反撃の必要がなくなったかもしれませんね」 プリンスが少し呆れたように言った。


「だよな。これ以上手を出したら、こちらはすべての記録を白紙にできるとわかっただろうから、十分以上の警告だしな」 リーが満足そうに言った。


「リストの機関と個人のデータソースをすべて消去致しますか?」 ハチが訊いた。何故か少し乗り気な感じがする。


「ハチ、そんなことはしなくていいからね」 望が慌てて止めた。両政府がリストにあるのにそんなことをしたら世界がどうなるか見当もつかない。


「ハチを敵に回さないようにということだな」 以前にハチに脅された経験がある亜望が疲れたように言った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ