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59. それぞれの思惑

「あの種から芽が出たって?」 プリンスから連絡をうけたグリーンフーズの研究所は大騒ぎになっていた。


「もしかしたら、と思って送ってみたが、大当たりだったな!」ウィルソン所長は興奮して喜びを隠せないでいた。


「あの貴重な永久凍土からの種を送ると聞いた時はどうかしてると思ったけど、所長の勘はさすがだな」種を送ることに反対だった所員も意見を翻している。


「5万年も前の種だぞ。 本当に芽が出たんなら歴史に残るぞ。一挙に2万年も最古記録を塗り替えるし、何より現在はない植物だからな」


「一体どんな植物ですかねえ」


「おい、プリンスにあの種がどこから来たのか言ってないんだろ?」誰かが興奮に水を差すように言った。


「ああ、まさか本当に芽が出るとは思わなかったからなあ。しかし、プリンスだって喜ぶはずだ。いくら大切にしているご友人だからって、別に害を加えたわけじゃないし、寧ろ歴史に名を遺す手助けをしたようなもんだろ」所長は楽観的だ。


「そうかな?そうならいいが」




その頃ネオ東京では ギリアン ジョーンズが報告を受けていた。


「天宮博士がラストドリームの技術を確立してから、幾つかの企業が真似をしようとした。カプセルはパテントをとっているが、違う方法で作れないわけじゃない。だが、どこも失敗している、と」 目の前のスクリーンにはジョーンズがよく使う、業界でも一流の調査会社の調査員がいた。どこか影の薄い男で、年齢も20代から60代位としかわからない。


「はい。ご存知のようにラストドリーム中の使用者の脳のパターンはすべて記録、分析されています。それによって使用者がどういう精神状態であったかは明らかになります。さもなければ、”死人に口なし”となりかねませんからね。Happy Death Coのプログラムは、多幸感を催すドラッグなどの使用は当初から最小限に抑え、脳のパターンは自然で、穏やかな幸福感、興奮、大きな喜び、などを示します。それに比べて後発のものは、ドラッグの使用が多く、脳のパターンは中毒患者の多幸感のようになり、中には明らかに悪夢のパターンを示すものまであり、競争になりませんでした。 それでも、研究を続けている企業もあるのですが、ここ10年で、Happy Death Coのプログラムは更なる進展を遂げ、ドラッグの類は全く使わずに以前よりも自然で、満足感の高いパターンを示すようになっているとのことです。Happy Death Coは認めていませんが、当社の調査によると、このプログラムの躍進にはかなりの確率で、天宮望が関わっているのではないかと推測します。私は現在のプログラムのテンプレートを天宮望が作成したのではないかと考えます。

 彼自身は、まだ学生ということもあり、あまり多くのプログラムの作成には携われないといことで、ユニークプログラムの作成しかしておらず、料金も通常とは桁が違うのですが、予約は数年先まで埋まっていると言われていました。現在はその予約をこなすだけで、新しい仕事は受けていないそうです。現在の彼の資産を考えれば、もう彼にプログラムを依頼できる人間は縁故以外ないでしょう」


「天才か。しかし10年前と言えばまだ5歳だろう?信じられんな。まだ何か秘密がありそうだ。引き続き調査してくれ。どんなことでも構わん」 ジョーンズはそう言って通信を切った。


「あの技術をゲームに使えればこれまでゲームに興味のなかった層まで狙えるのは間違いないんだがな」 そう呟くと、引き寄せられるようにもう一つのスクリーンに目をやった。 そこには天宮望が書き換えたと思われるプログラムの世界が広がっていた。

 



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