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34. 再び望の子育て講座

 プリンスがウィルソン氏に桃の木と、もう一本マンゴーの木が、この海の見える丘の上に植えられることを条件に、ここに引っ越すことを了承したと伝えると、大変感激された。


「素晴らしい。本当に木と意思の疎通ができるとは。私も時々、自分の育てている植物の気持ちがわかるような気がするのですが、気のせいかと思ってました。それが、そこまで考えていることがわかるなんて。是非、私にも教えてください」 どうやら喜んでいるのは木が手に入るのとは別の事らしい。


「木の育て方は望が教えてくれたので、自分の木の気持ちは多少わかりますが、はっきりした意思の疎通は、私では無理です」 プリンスがそう言って望を見た。 ウィルソン氏が期待に満ちた目を望にむけた。


「でしたら是非、私達にも望様の木の育て方を教えて下さい。 この木がわずか2ヶ月足らずで種からここまで育つことは、現在の植物学では考えられません」


「いいですよ。そんなに難しいことではありませんし」 この人なら、植物が大好きみたいだし、多分大丈夫だろう。なるべく多くの人が植物と交流するようになればいいな、と望は気軽に引き受けた。


 その後、研究所に戻ったウィルソン氏が希望者を募ると、ほとんど全員が参加を希望し、思ったより大人数になってしまった。 100人近くいる。この静かだと思った研究所のどこにこんなに人がいたのだろう。

 それぞれ植物の種を持って来てもらい、プリンス達に教えたように説明し、実行してもらった。

 さすがに植物研究の専門家だけあり、持ってきた種も珍しい植物のものが多いようだ。

 15分程、自分の力で種との交流をがんぱって貰ったが、やはり難しいらしく、成功者はいなかった。それでも望が一人づつに手を添えて、少し力を押してやるとほとんど全員が発芽させることに成功した。東洋系の人には「気」と説明するとわかりやすいようだ。 望の中では、気もエネルギーも同じものだ。目には見えないが、「流れ」として確かに感じることのできる。


「どうして私だけ?」 絶望的な表情で種を見つめるのは一人だけ発芽していないウィルソン氏だ。


「望、なんとかならないの?」 気の毒そうにウィルソン氏を見て、こっそりとミチルが訊いた。


「う~ん、あの実、なんの実なの?僕にはまったくわからないんだけど」 望も首を捻る。 なにしろ成長した姿の想像がつかないこともあって、うまくイメージが流せない。


「これはランブータンと言って東南アジアから取り寄せたのですが、大変美味しい果物ですよ」


「これが果物なのか?どうみても怪しい海の生物だぜ」 リーが呟いたが、それも無理はない。毒々しい赤の丸い実を触手のようなトゲトゲが覆っている。 望も触れてみたが、今ひとつ反応が感じられない。


「あの、とりあえず何か他の種で試して見られたらどうですか?」反応の悪い植物も結構多い。果物は比較的通じやすいのだが、その中でも気難しい種はある。


「そうですか。私はこの実が好きでして、これを簡単に大量栽培できるようになれば誰もが喜ぶと思ったのですが、しかたありません」 望とリーはこの怪しい実が大量に生っているところを想像して、ちょっと引いた。


 その後、一般的な植物、といってウィルソン氏がもってきたドリアンを、無事に発芽させて感謝され、今後育てるための注意点を説明し、又来ることを約束して、疲れきった3人(と護衛達)は帰途についた。

 

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