26. 子供達の成長と新居
「昔は子供がたくさんいて、成長したら家が手狭になるって聞いたことがあるけど、本当だったんだ。すぐにもっと広い家に引っ越さないともうだめだね、ハチ」
「はい、ネオ東京内で現在借りることのできるアパートから、これらの植物を置くことのできる広さのものをリストアップしてございます。ご覧になりますか?」
「うん。お願い」
ハチが次々とアパートのホロイメージを眼前にスクロールしてくれるが、どれも豪華すぎて学生の自分には分不相応に思えてならない。とはいうもののネオ東京である程度の大きさのアパートを借りようとしたら、毎月中級職業人の年収程度かかるのは常識だ。多分今の自分には払えるのだろうけれど、何だかそんな贅沢をするのが後ろめたい。望が決められないままイメージを眺めていると、豪華な部屋が消えてプリンスのイメージが現れた。
「望、今いいですか?」
「勿論。どうかしたの?」
「私の木のことで相談したいことがあるのですが、そちらに今から行っても良いですか?」
勿論、と返事をしそうになって、部屋の中を見渡す。どう見ても人が入れる余地がない。
「都合が悪いようなら明日でも構いませんよ」すぐに答えない望を見てプリンスが言った。
「そうじゃないんだけど、ちょっとみてよ」望は慌ててそう言って、自分の後ろを指さす。そこはどこかの温室のようで、全く足の踏み場もない。
「なるほど、では家に来ませんか?今迎えをやります。15分ほどで着くと思います」
「ごめんね。じゃそうさせてもらおうかな。あと、ミチルが一緒でも構わない?」一人では外出させてもらえそうにないし。
「当然ミチルさんも一緒に来ていただくつもりです。せっかくですから、リーも来るか聞いてみましょう」
思いがけず久しぶりにプリンスの家に行くことになった望は、一寸考えてカリの鉢を抱えた。
「カリ、一寸一緒に来てくれる?」
『お出かけ?』
「そう」
『カリの兄弟も?』
「ごめんね。カリだけなんだ。僕そんなに持てないから」
『わかった。いい子でお留守番するように言っておく』
いい子でお留守番?いつの間にそんな言葉覚えたんだろう...そういえば出かける時にカリにいい子でお留守番していてね、といってたような。子供の前での言動には気を付けよう、と思った。
迎えの車がちょうど15分後にアパートの前に到着し、望、ミチル、リーの3人がそれぞれ鉢をかかえて乗り込んだ。