14.パースへ
翌朝、4人はパースに向かって飛んでいた。本社を見学した後、砂漠の開発地域を視察に行く予定である。
西オーストラリアは砂漠が多く、A&Aの人口が増えてきてからも開発はなかなか進んでいなかった。それをマックが買い取り、様々な開発を行ってきたため、現在では居住可能地域がかなり増えているという。マックの死に伴って、それを狙っての政府の干渉がひどくなるのは間違いないと思われるそうだ。
パースの都市部の外に着陸し、中心地にある本社ビルに着いて車から降りると、正面玄関にシルバーグレーのスーツを着た、褐色の肌に黒髪の女性が待っていた。フューチャープランニング Co.と入口に刻み込まれたビルは向こう側の空が透き通って見えるようなソーラーガラスの建物だった。高さは連邦で高層ビルを見慣れた望達にはそう高くは見えない。50階程だろうか。しかし、複雑に入り組んだデザインはビルというより一つの芸術作品のようだった。
「天宮様、ご友人の皆様、よくいらっしゃいました。私が砂漠開発部門を任されておりますアローラ ワイトです。アローラとお呼びください。宇宙開発部門の責任者は現在こちらにはおりませんが、そちらも含めて、ご案内させていただきます」
「宜しくお願いします。」望は、仲間の3人を紹介した後、そう言って彼女についてビルに入った。
それから3時間後、広い建物の中を案内され、各部門の責任者に紹介された望は、すっかり疲れ切っていた。それに引き換え、プリンスとリーは次々と質問をしながら疲れた様子もなく視察を進めている。ミチルは望のすぐ横にいて、鋭い目つきで近づく人々を観察している。誰かが少しでも怪しい動きをしたらひどい目にあわされそうで、望は誰もミチルに誤解されるような動きをしないように気を使っていた。
僕は本当に体力がないのかな、いやいやこの3人が異常なだけで、自分は普通だ、と自問自答をしている望。
「ねえ、もうそろそろお昼だよ。どこかで休憩して、お昼ご飯にしない?」望がそう言うと、
「もうこんな時間ですわね。社員と同じものになりますが、宜しければ、会長室に食事を運ばせますが、どうなさいますか?」アローラが聞いた。
「会長室?」それはまだ見せてもらっていなかった。
「はい、ミスターウォルターがこちらにいらっしゃるときに使用された部屋で、今は天宮様のお部屋ということになります」
会長室は当然のように最上階にあり、海の景色が素晴らしかった。
「さすがマックですね。A&Aは連邦より遅れていると言われているのが事実ではないとわかりました。システムもセキュリティも最上級です。幾つか確認したいことがありますが、今のところ現状維持で問題ないと私は思います。リーはどう?」プリンスがリーを見た。
「俺も、特に何も問題をみつけることはできなかったな。むしろ参考になることが多かったぜ」
「それでは、望がよければ、昼食後は予定通り砂漠の開発を見に行きましょうか?」プリンスが望を見て訊いた。
「僕は全くの役立たずだったから、お任せするよ」ちょっと肩を落とす望。
「ホントにそうね」そこはしっかり同意するミチルである。