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4. インヒビター

望達の世代はインヒビターによって性衝動を抑制されています。それによって良い事も多いのですが、マックの意見は違うようです。


 

「君が3年前にロスコフのために作成したラストドリームの世界を、私のためにもう一度作って欲しい。」


 望はぎょっとして彼の顔をみた。

ラストドリームの内容は本人の許可がない限り、遺族にも内容を知らせることはない。 クライアントのプライバシーを守るため、セキュリティには細心の注意を払っている。 

 ハピーデス社のセキュリティは連邦国家と大して変わらないほどだ。

 もしマックがクライアントのプログラムにアクセスしたとしたら大問題である。

 帰ったら早速セキュリティの見直しをお爺さまに言わなくちゃ。


「あのプログラムをご覧になったんですか?どうやって?」


「最近、たまたま君が6年前にホログラムアートに出した作品を見た。身震いがしたよ。そしたら君があれをベースにしたラストドリームを作ったと聞いて、どうしても見たかった」


知りたいのはそこじゃない。


「ひとつひとつのドリームは個人のプライバシーです。どうやってアクセスしたんですか?」


「君はあそこを夢に見るのじゃないかな。」


 望の驚きと怒りには頓着せずに彼は続けた。それはさらに望を驚かせた。


「どうしてそれを?」


 彼は「夢に見る」と言った。「夢に見た」ではなく。そのとおりだ。 望はあの夢を年に数回は見る。


「私もあそこを夢に見るんだ。残念な事に、君ほどはっきりした夢ではないようだ。君のホログラムを見たとき、初めてあそこを現実の世界として捉えることができた。その後、私は殆ど毎日のように同じ夢を見る。時々、あの夢が本当の世界で、ここにこうしているのが、夢を見ているように感じる。私はあそこへ行きたい。あそこで生まれなおし、生きて、死にたい。君にしかできないことだ」


 望は彼を見つめた。同じ夢を、本当に見るのだろうか。目的のためには手段を選ばない男だという。本当とは限らない。しかし、何のためにそんな嘘を望のような子供につく必要があるのか。


「君はあそこをどこだと思う?」

「どこって、自分の夢の世界だと」

「君の想像の世界だと?それなら何故私が同じ夢を見ると思う?」

「あなたが同じような夢を見る、というのが本当だと仮定しても、ただ似たような夢、かもしれませんし、」

「私は、あれと全く同じ色の空を見た。そしてあの虹色の大樹。違うものではありえない。」


 ためらう望を見て、マックは立ち上がると、手を伸ばして望を立たせた。

 体をかがめるようにして、目の周りを覆っていたアイシェードをはずした。


 現れた彼の目を見て、望は息を呑んだ。

 それは、輝きを失っていない黄金色だった。


 望と同じ色だ。虹彩の色などファッションで簡単に変えられるので誰もが望の目の色をファッションだと思っているが、望のは自前だ。

 一般に金色と言われる黄色っぽい色ではない、磨き上げた純金のように煌めき、よくどこでやって貰ったのかと聞かれる。これが彼本来の色である事を知っているのは家族と仲間達だけだ。


 天宮の一族に時々現れると言われていて、これまで他人の目に同じ色を見た事はなかった。

 自分と同じ色の目が、真正面から望の瞳を覗き込んだ。


「私の母方の祖先は5代前に日本から来たそうだ。名前は希、旧姓が天宮だ。君の13代前の祖先の、双子の姉にあたる」


「天宮のぞみ?」


「ああ、私の調べによると、弟が君と同じ名前の天宮望のぞむ、君の13代前のおじいさんだ」


「それは知っています。うちは男が生まれない家系で、僕の前に最後に男の子がうまれたのが1996年の 天宮望で、僕の名前はそこからついたと聞いています。でも双子の姉がいたなんて聞いていません」


 祖先の天宮望は、写真を見ると金色の瞳を含めて望に良く似ているが背が高くて大人っぽいので、望も自分の将来に期待しているのだ。


「昔のことだからね。日本人の祖先がいる事は知っていたが詳しいことは聞いたことがなかったし、イメージも残っていない。君のホロイメージを見てから、もしかしたらと思って調べてみてわかったことだ」


「というわけで、私たちはいとこのようなものかな。改めてよろしく」


「いとこ?」


 いたずらっぽく笑ったマックがまだ呆然としている望の手を握って、深く瞳を覗き込んだ。

 瞬間、望の体のどこかで何かが弾ける音がした。そして、どんな音楽とも違うのに、何故か懐かしく感じられる音色が頭の中に響き渡った。

 

 マックの見開いた目には、同じように驚愕した自分の顔が映っていた。


 どの位の時間が経ったのか。


 望が我に返った時、マックはまだ望の手を掴んだまま石像のようになっていた。


「マック、大丈夫ですか?」


 意識がない様子のマックをみて望は慌てた。


「マック、今誰か呼びますから、しっかりしてください」


「誰も呼ばなくていいよ。こんなに気分が良いのは生まれて初めてだ」


 気を失っているように見えた男は、楽しそうに笑いながら言った。

 笑っている彼の目からは涙が流れている。

 それを見て、望は自分の頬も濡れている事に気がついた。

 悲しみの涙ではない。ただ、懐かしかった。


「なんて音色なんだ!私に音楽の才能があったら再生できるのに」あの一瞬に聞こえた音色はなんだったのだろう。


「あの、僕には音楽の才能はないんですが、再生することならできると思います。ブレインインターフェイスが必要ですが」


 望の脳内にはまだはっきりとあの音色が残っていた。


「本当か?」


 マックは椅子から起き上がると急いで壁に近寄った。


 白木と見えた壁が消え机が現れた。机の一部が開いて、マックは中から小さな猫耳のような突起がついたヘッドギアを取り出した。


「これを使ってみてくれ、子供の遊び用に開発したんだ。ホロイメージプログラムとプロジェクターを一体化してある。まだプロトタイプだが、イメージと同時に音も創造できるようになっている」


「これがインターフェイスなんですか?」


 それにしてもこの形は何だ、マックの趣味なのか、と思いながら白い猫耳を着けた。


 望は目を瞑ってさっき聞いたメロディと、同時に頭に浮かんだ景色を描いていった。


 マックのため息を聞いて目を開けた。


 目の前に7色の葉をつけた大きな樹があった。メロディに合わせて、葉が歌うように揺れた。それとも、葉が揺れてメロディを紡いでいるのだろうか。


「私の夢のとおりだ。私達の祖先は、この木のある世界から来たのだと、私は思う」


 深く椅子にかけなおしてからしばらくしてマックが言った。

 この樹を描いた作品がホログラムアートで優勝した。

 それを見て数人が望にコンタクトを取ってきた。


 何人かが「何故か懐かしい。もっと他に作品はないのか」と言った。


 その中でノエル ロスコフがラストドリームを依頼してきたのだ。

 まだ10歳になっていなかった望には無理だとして祖父が断ったが、ロスコフは諦めずに3年間待った。そして望の始めてのクライアントとなったのだ。

 そうだ、どこかで聴いたことがあると思ったが、あの音色はロスコフに贈られた彼の最後の曲と似ている。あれを聴いたときも不思議なメロディだと思ったのだ。

 あれは本当に祖先の記憶なのだろうか? ロスコフもまた、同類だったのだろうか? 他にも同じ記憶を持った仲間がいるのだろうか?


「僕たちは異世界人の子孫だとおっしゃるんですか?」

 とても信じられない。しかしこの不思議なメロディを聞きながら自分の作り出した七色の葉をつける巨木をみているとまるで本当のことのようにも思える。

「わからない。地球のように思えるが、この地球ではないのか、それとも消え去った過去なのか。私はただ、そこに帰って死にたい。例えそれがプログラムの作る幻想であっても、私にとっての現実であれば構わない」

 望はマックの希望を叶えてあげたいと思った。

 何よりも、自分がもっとこの世界を見てみたい。マックと一緒にであれば、この世界がもっと明確になると信じられた。


「もしお引き受けするとしたら、どの位の期間が必要ですか?」


 プログラムのなかとはいえ、後何年生きるつもりだろう。250年生きればもう十分ではないのだろうか。

「100年で結構だ」


「100年?」


 望はあきれてマックを見つめた。 さっきもう死が待ち遠しいと言ったような気がしたが。


「私は、あそこで子供を持って、家族と暮らし、死にたい。それには100年は必要だろう」


 欲が深いと言ったのは本当の事らしい。

 望は興味を引かれた。望自身の中にあそこに行きたい、という気持ちがないわけではない。

 マックのようにあそこで死にたい、とまでは考えられないが。

 しかし、100年分のプログラムを作るには普通1年はかかるだろう。やはりスケジュール的に現在は無理だ。


「5年ほど待っていただくわけにはいきませんか。」


「残念だが、私の寿命はもう尽きる。」 


 寿命とは又古い言葉だ。

まだ体は元気そうに見えるが、命とは肉体だけではない事はこの仕事をする者は誰もが知っている。

これまでこれほどの年齢の人にあったことはないが、彼がそういうのなら、多分本当にそうなのだろうと思えた。


「君の学校は、夏季休暇と言うのを実行していると聞いている。君はその期間中何の仕事も入れていないはずだ。その2か月間を、私にくれないか。君の友人も一緒に来てもらって構わない。ライセンスの取得をしばらく伸ばしてくれれば、最新型の車が買えるよ。君の友達もカナダなどより余程楽しめるだろう。」


 何から何まで望の予定を知っている。

 確かにTSNTは、伝統に従って1年に一度2ヶ月の夏季休暇制度を守っている。天候がコントロールされていて年中快適な気候のネオ東京で、夏季休暇も必要ないのに、と思うのだが、休暇制度に反対する生徒はいない。

 望は来月16歳になるので、この夏季休暇を利用して、すでに16歳になっているリーと、やはり7月に 16歳になるミチルと一緒に、カナダで個人用車のライセンスを取る予定で、2ヶ月間仕事もその他の計画も入れていない。プリンスは12月にならないと16歳にはならないし、ライセンス取得の許可がでるかどうかは怪しいところだが、カナダには一緒に行くと楽しみにしている。

望のプライベートの予定までどうやって調べたのか、とまた不快な気分になったが、会社の機密プログラムを見られているのだから、個人システムに侵入されていても、驚く事じゃないか、と気を静めた。プリンスやミチルがこんなことを聞いたら激怒するのは間違いないが。


「2ヶ月で100年分ものプログラムができるかどうかは、お約束できません。」 


「ベースはすでにあるし、君の他のプログラムのように何から何まで創造するのではない。私の夢も、君のプログラムを見てからかなりはっきりしてきている。もし私の満足のいくプログラムを完成させてくれたら、規定の料金の他に君個人にも同額を支払う。他にも何か希望があれば遠慮なく言って欲しい。」


 100年分のオリジナルプログラム料金は天文学的な数字である。それを2倍支払うというのだ。

 報酬は勿論魅力的だが、それ以上にこのプログラムを作りたかった。

 マックと自分が同じ異世界から来たのかどうかはさておき、この機会を逃したら、2度と同じ夢を見る人と会うことはないかもしれない。

 彼の見る夢を自分の夢と比べてみたかった。

 それでも、連邦で描かれたマックのイメージが頭から離れない。もし、彼が本当にそんな人間だとしたら、例え親戚であっても深く関わり合うことはしたくない。

 

「あの、ミスター ウォルター、プログラムに関係のない事を聞いてもいいですか?」


「マックと呼んでくれ。私に答えられることなら、何でも聞いてくれ」


「何故、地球連邦に反対したんですか?ブランソン大統領とは親友だったと聞きましたが」


 マックはちょっと驚いた様子で望を見た。


「その質問をされたのは200年ぶりだよ。確かに彼とは友人だった。素晴しい奴だった。優秀で、理想が高い男だった。しかし、理想、とは難しいものだよ。誰もが同じ理想を持っているわけじゃない。そんな時、どれが正しい、と決めるのは誰だろう。彼のように優秀で強固な意志の持ち主が自分の理想を押し付けようとする時、違う観点から意見を述べるのが友人の努めだ、と私は思ったんだがね」


「ブランソン大統領が自分の理想を他人に押し付けたとおっしゃるんですか?」


 望が些か気色ばんで尋ねた。

 最後のアメリカ大統領、そして初代連邦大統領ラリー ブランソンは、貧困、内乱、犯罪に喘いでいた国々を統一し、そのカリスマで、多くの画期的な政策を実行して連邦に平和と繁栄をもたらした。

 血族保存法、性インヒビターの強制、刑務所の廃止等、大きな議論を巻き起こしたが、いずれも大きな成果をあげ、彼の退陣後も受け継がれている。

 大統領は連邦の多くの市民にとって人類を救ったヒーローである。


「君はインヒビターをどう思う?」


 マックは望の質問には答えず、問いを返した。


「性インヒビターですか?犯罪率を一挙に減らした原因だと思います」


 インヒビターは、人間の本能的な活動を、それを司る脳の部分に干渉することによって、その活動を制御する技術である。

 殊に性衝動インヒビターは、犯罪の減少に旧アメリカで高い成功率を上げ、連邦成立後、全世界強制となった。

 青少年犯罪の多くは性衝動からくるとの理論をもとに、5歳の時と、10歳時にもう一度、視床下部に制御をかけ、性衝動を感じないようにする。

 この制御は永久的なものではなく、処置を繰り返さない限り、次第に効果を失い、20歳過ぎには消える。後遺症もないという。

 研究や仕事の妨げになるとして、20歳を過ぎても自発的にこれを続ける者も多い。

 望たちもこの処置を受けているので無駄な性衝動に悩まされる事はなかった。

 その後、幼児期のうちに冷静で論理的な頭脳を育てるためとして、強制ではないが、幼児用のインヒビターが一般に使われるようになった。

 これは、過剰な興奮をすると痛みを感じて興奮を抑える習慣をつけ、子供の躾が楽になるという。

 望の両親はこれには反対だったようで、望は幼児用インヒビターのお世話にはなっていない。

 ロジックの出来が悪いのはそのせいかもと、望は思っているが、ミチルもプリンスも使われなかったのに トップクラスだから、それとは関係ないのかもしれない。


「君は恋をしたことがあるかい?」


「いえ、まだ学生ですから」望が当たり前のように答えると、少し憐れむようにマックが微笑んだ。


「私が一番激しい恋をしたのは15歳の時だった。世界が一瞬で変わったあの感覚は今でも思い出せる。あんな思いを経験できるのは10代の青少年だけだろうな。君はそんな経験をしてみたくないのか?」


「インヒビターがそれを抑えるのだとしたら、その恋は、性衝動から生まれたものでしょう?本物じゃないということですよね」


「恋はすべて性衝動から生まれるのさ。性衝動の伴わない恋こそ本物じゃない」


「僕は、性衝動に左右されない、精神的な感情こそ本物だと教わりました」


「それが正しいと思うのかい?人間の本来備わっている本能を抑える事は危険だと考えた事はない?」


「抑えないほうが危険だと考えたことはありませんか?サクタロオ ハギワラ(萩原朔太郎)という詩人は自分の若かった頃を指して-何よりも苦しいことは、性慾ばかりが旺盛になって、明けても暮れても、セクスの観念以外に何物も考えられないほど、烈しい情火に反転悶々することだった-と書いています。 僕はそれを読んだ時空恐ろしくて、今の僕らは本当にラッキーだと思いましたよ」


「ラッキーか。そうかもしれないが、君はその人の書いていることを本当に理解することはできないわけだ。本当なら誰もが理解できるはずの感情が、全く理解できない。だから恐ろしいと感じる。今しか味わえない、燃えるような喜びと苦しみ、その経験を奪われている事すらわからない」


「そういった経験が暴力や犯罪に繋がって、人類の未来を危うくしてもですか?」


「何事にも疑問を持ちたがる若者の心こそ、人類の進歩を築いたと、私は信じている。若者の心には刺激が必要だ。例え人類全体の平和のためであっても、それを奪ってしまって良いのだろうか。確かに連邦はすばらしい成果を見せた。それでも、失ったものは大きい。少なくとも、ここに若者が自由に感じ、考えられる世界を残しておきたかったと言ったら、世迷いごと、と思うかい?」


 「いいえ」ためらいがちに望は答えた。


 望にはマックの言おうとしていることの意味が理解できたとは思えなかった。

 しかしマックが連邦で教えられているような、私利私欲に走ったアンダーの影の支配者ではない、と思えた。

 尤も、これこそいつもロジックの教授に説教されている、「感情的な」判断だ、という自覚はあったが。


「もうひとつ伺ってもいいですか」


「勿論」


「連邦では、犯人のわからない事件を貴方のせいにすることが多いようで、僕だってすべて信じているわけではありません。しかしこれだけは確認しておきたいのですが、いまだに各地でテロを続発している『自主的に人間を減らす運動』に貴方が関係しているという噂には根拠があるのでしょうか」


 プリンスの両親はこのグループのテロの犠牲になった。もしいかなる形でもマックがこれに関係しているとしたら許せない。

 マックは謎めいた表情をして望をみた。


「私は全く関係がない。ああいうことは私のスタイルじゃない。誰のスタイルかわからないわけじゃないが」


「誰がやっているかわかっているとおっしゃるんですか?」


「証拠があるわけじゃないがね」


「誰がやっていると思っていらっしゃるんですか?」


「言わせてもらえれば、あれは連邦内の人間がやっていることだ。犠牲者のリストを細かくたどれば誰にでもわかるはずだ 。あくまで私の推測だからね。君は知らないほうがいいだろう。ただ、私が関係ないことだけは信じて貰えればうれしいよ」


「わかりました」


「おや、いいのかな、そんなに簡単に私を信じて」


「自分の直感を信じることにします」


 望の直感はまず外れた事がない。


「君はドリームタイムという言葉を聴いたことがあるかな?」


「ドリームタイム?」


「君たちは世界の言葉を研究するクラブだそうだね」


「と言っても実は世界中を旅行するための口実のようなものです」


 ちょっと恥ずかしそうに望が答えた。毎年どこを旅行したいかによって研究する言葉を選んでいるのである。


「そういえばオーストラリアは世界一先住民の多い地域で、言語も多く残っていますね」


「ああ、彼らは北半球のアボリジニより運が良かったよ。後から来た連中に滅ぼされることなく、独自の文化を継承した。今では9割以上が他のオーストラリア人と同じように暮らしているが、中央の砂漠地域ではまだ昔の様式を守って暮らしている。かなりの言葉や歴史は受け継がれている」


「素晴らしいですね」


「オーストラリアの先住民は世界の創成期のことをドリームタイムというんだ。

ドリームタイムの中では、時間が意味をなさない。過去、現在、未来が一緒になっている。そして世界創造の話をドリームストーリーとして言い伝えてきた」


「彼らにとっては、生きることがドリーミングで、その足跡を語り伝えたのがドリームストーリーだ。夢ではなくて、現実の歴史伝承ということだ」


「これは私のドリーミングだ。夢ではなく、実際に新しい人生を生きるのだと思っている」


 マックは照れたように笑いながら言ったが、その瞳は真剣だった。

 望は意を固めた。


「僕はお引き受けしたいと思います。ただ、僕はプログラム作成だけですので、システムは会社のものです。使用には祖父の許可が必要ですし、実行の際のドリームカプセルも、これまで契約を交わしている病院、施設以外に持ち出したことはありません。訓練を受けた医師が立ち会わなくてはなりませんし最終的な回答は祖父と話してからということで宜しいでしょうか」


「その心配はない。医師も含めて必要なものはすべて揃っている。もし他に必要なものがあれば言ってくれれば用意する」


以外と簡単に引き受けてしまいそうです。やっぱり美味しいスコーンのせいか?

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