11.望の(?)作戦会議
24階の見学の後、リーの強い希望により、25階の格納庫の見学と、その他の階を見て回ることにした。案内は執事のハチである。
「流石に疲れたね」望が大きなため息をついて、椅子に座った。目の前のテーブルには美味しそうなステーキ、色とりどりの野菜、果物、良い匂いのするパンが並んでいる。
スペースプレーンを見て大興奮のリーをなんとか引きずって射撃訓練室に行ったが、訓練室という名のフットボールフィールドより広いような部屋には、射撃だけではなく、古代の弓からマーシャルアーツ用のロボットまで備えられ、リーだけでなく、ミチルまで夢中になってしまった。遠慮なくロボットを痛めつけるミチルを見て、ちょっと慄えたのは望だけではないだろう。
プリンスも昔の武器を興味深く眺めて、弓を撃ってみたりしていた。
ただ一人、武器に興味の持てない望はすっかり疲れてしまった。他の階も見て回りたかったが、時間も遅くなってしまい、ハチから夕食の準備が整ったと言われたのを機に、なんとか皆を説得してダイニングルームにやってきたのだ。
「望はもっと体を鍛えるべきよ。あの訓練室に丁度いい設備があったわ」やぶ蛇である。
「そんなことより、美味しそうだね」 慌ててミチルの注意をテーブルに向けようとする望。
「おっ。あのステーキだ」マックと食べた美味しいステーキの味を忘れられなかったリーが嬉しそうに叫んで望の隣に腰を下ろした。
「これは何かしら?」ベジタリアンのミチルの前には、白くて分厚いステーキ状のものが乗っている。ちょっと疑わしそうにそれを見て、ミチルが聞いた。
「白ナスのステーキでございます」ハチが答えた。
「これが茄子なの?大きいわねえ」 茄子と聞いて安心したようにミチルが言った。
「本当に大きいね」望が分厚いステーキ状の茄子をみて感心している。
「勿論自然栽培で、栄養価も味も一流という評価を得ております」
「望様もナスのステーキになさいますか?」ハチが聞いた。
「いいえ、僕はこのステーキをいただきます」望は慌てて自分の前のステーキにナイフをあてた。巨大ナスに興味はあるけど、このステーキは絶対食べる。
さすがにお腹が空いていた皆は、食事を楽しんだ。この家の食事は割とシンプルなメニューが多いのにどんな高級レストランより美味しい。素材が違うのかなと望は思う。
「さて、では作戦会議を開きましょうか」食後のコーヒーを飲みながら、プリンスが言った。
「作戦会議?」望が首を傾げた。
「そうだな。どうするか決めなくちゃならないことがたくさんあるだろ?」リーが頷いた。
「それはそうだけど、マックは持っている事業の運営は人を雇ってさせていただろ? だから僕は、とりあえず現状維持をして、学校に行きながら事業の内容を勉強していこうと思ってるんだけど、だめかな?」
「それでも良いと思いますが、幾つか、できれば早いうちに現状を把握して、危険の無いように対策しなくてはいけない事業がありますからね」プリンスが真剣な顔で言った。
「そうね。望にまかせておいたら何時になるかわからないし、とりあえず私達で優先順位を決めたほうが良いわね」
「え~っと、危険な事業?」どれだろう。